1日 「第11回 全国手をつなぐ育成会連合会 全国大会 神戸大会」が神戸市で開催。公明党高木美智代前衆議院議員、NPO法人輝HIKARI金子訓隆代表理事と参加。
震災から31年を経過し元気になった神戸から、全国の仲間たちへ感謝の気持ちを込めての全国大会の開催。
本大会では「会員の高齢化」「会員減少」という大きな課題を抱える全国の育成会が今後「担うべき役割」とは一体何なのか。更には育成会創設からの永遠の命題である「親なきあと」に向けて重要となってくる「相談の場」「住まいの場」、また本人の「権利擁護」や「高齢化」について、その現況や課題についての学ぶ機会として開催されています。

【大会スローガン】
「阪神淡路大震災を超えて こころ つなげる みなとまち神戸から」
【大会テーマ】
「親なきあとに向けて~制度・サービスの現況と課題~」

  • 「第11回全国手をつなぐ育成会連合会全国大会 神戸大会」2日目③シンポジウム「親なきあとにむけて 制度・サービスの現況と課題」(神戸市)の様子1
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【シンポジウム】
「親なきあとにむけて 制度・サービスの現況と課題」
*コーディネーター 大平真太郎氏 社会福祉法人 グロー 法人事務局 総務部部長

【シンポジスト】
①住まいの場
社会福祉法人 四つ葉会   グループホームディール管理者  松岡友太氏
②相談・体験の場
社会福祉法人ゆうかり  水流源彦 理事長 
③成年後見制度の現状と課題
一般社団法人 全国手をつなぐ育成会連合会 久保厚子顧問
④高齢化と支援の実際
~本人の変化と親あるうちにやっておくこと~
独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園 古川慎治理事
久保厚子顧問と田中正博理事長(独立行政法人 国立重度知的障害者総合施設 のぞみの園)、大会実行委員長の後藤久美子神戸市手をつなぐ育成会会長と懇談。記念の写真を撮らせていただきました。 
【第11回全国手をつなぐ育成会連合会全国大会神戸大会シンポジウム要約】
シンポジウム名:親なきあとに向けて~制度・サービスの現況と課題~
•大会名:第11回全国手をつなぐ育成会連合会全国大会神戸大会
•会場:神戸市文化ホール
登壇者プロフィール
•大平眞太郎氏(コーディネーター):社会福祉法人グロー法人事務局総務部長、日本相談支援専門員協会代表。社会福祉法人びわこ学園での重度知的障害者・重症心身障害者の支援や相談支援、厚生労働省の相談支援専門官、滋賀県障害福祉専門幹、滋賀県障害者自立支援協議会事務局長などを歴任。
•松岡友太氏(シンポジスト):社会福祉法人四ツ葉会グループホームティール(TEAL)管理者。社会福祉士・精神保健福祉士、中核的人材養成研修修了。岡山県倉敷市にて生活介護・グループホームで重度の知的障害者やASD(自閉スペクトラム症)、強度行動障害のある方の支援を実践。
•水流源彦氏(シンポジスト):社会福祉法人ゆうかり理事長、NPO法人全国地域生活支援ネットワーク理事長。鹿児島市障害者基幹相談支援センター運営協議会会長や内閣府障害者政策委員会委員などを務め、基幹相談支援センターと地域生活支援拠点等の連携、地域移行を推進。
•久保厚子氏(シンポジスト):一般社団法人全国手をつなぐ育成会連合会顧問、社会福祉法人グロー理事長。大津市・滋賀県手をつなぐ育成会、社会福祉法人しが夢翔会理事長、公益財団法人糸賀一雄記念財団副理事長などを歴任し、厚生労働省の成年後見制度利用促進専門家会議委員を務める。
•古川慎治氏(シンポジスト):独立行政法人国立重度知的障害者総合施設のぞみの園理事。旧国立コロニー「のぞみの園」入職後、重度・最重度知的障害者の直接支援や45都道府県・170人余りの地域移行に携わり、現在は強度行動障害支援者養成や知的障害者のターミナルケア等の研究・講演活動に従事。
1.基調整理:親なきあとに向けた4つの課題(大平氏)
「親なきあと」とは親が亡くなった後だけでなく、親の高齢化や急病・入院等によって従来通りの支援が難しくなった段階も含めて捉える必要があります。親に準備の責任を押し付けたり、きょうだいにすべてを引き受けさせることを前提とせず、本人を理解し気にかけてくれる人とのつながりや地域の仕組みをどう整え引き継ぐかが共通のテーマです。
•住まい:強度行動障害など手厚い支援が必要な方を含め、どこで誰と暮らし、生活の質をどう確保するかという課題です。
•相談と地域の支援体制:親の急病時等に頼れる連絡先や、平時から親元を離れる暮らしを相談・体験できる場が地域にあるかという課題です。
•権利擁護:金銭管理や福祉サービスの契約において、本人の希望や「嫌だ」という意思を丁寧に聞き取り暮らしに反映できるかという課題です。
•本人の高齢化:障害のある本人自身の心身の変化への気づきや、医療・介護が必要になった際の切れ目ない支援体制の確保です。
2.シンポジストからの実践・制度報告
①住まい:重度・強度行動障害に特化した支援体制(松岡友太氏)
•特化型事業所の設立背景:岡山県倉敷市の「TEAL(ティール)」では、生活介護2棟と日中サービス支援型グループホーム2棟(平均障害支援区分5.6〜5.7)を運営し、利用者の8割が強度行動障害のある重度知的障害・自閉症の方です。多様な障害特性が混在する従来の環境では本人に我慢を強いる場面が増えたことや、保護者からの強い要望を受け、自閉症に特化した事業所を立ち上げました。
•根拠に基づく支援(ソフト面):アセスメントに基づく「構造化」を軸に、職員の価値観を押し付けない個人主体の支援と、経験差に左右されない統一されたチーム支援を徹底しています。人権・虐待防止の視点を持ちつつ、本人の「やりたい」ことや強みを引き出し自尊心を高める支援を重視しています。
•環境整備と多職種連携(ハード・組織面):手厚い職員配置に加え、全職員への社用スマホ貸与と情報共有アプリ(ICT)の活用により、不規則勤務でもタイムリーな情報共有を実現しています。また、法人内の高齢部門の専門職との連携や、外部専門家によるコンサルテーションを取り入れ、現場だけで抱え込まない体制を作っています。
•家族とのパートナーシップ:定期的な近況報告やいつでも立ち寄れるオープンな運営、防犯カメラの設置に加え、トラブル時も隠さず誠実に伝える姿勢を通じ、「仕方なく」ではなく「ここなら安心して任せられる」と思われる信頼関係の構築を目指しています。
②相談と地域の支援体制:地域移行と拠点の面的整備(水流源彦氏)
•インクルーシブな土壌づくりと地域移行:糸賀一雄氏の思想のもと、医療的ケア児や障害児が共に育つ保育園の運営や、入所施設(現在40名)からグループホーム(現在75名)への地域移行を推進しています。
•市街地での高齢者・重度者向け住まいの展開:鹿児島市の繁華街(天文館近く)にあるサービス付き高齢者向け住宅の空きフロアを借り上げ、グループホームと生活介護を開設しました。入所施設で暮らしていた91歳の最高齢者や認知症・てんかんのある方に対し、事前の体験利用(行ったり来たり)による意思確認と家族への丁寧な説明を重ね、街中での快適な暮らしを実現しています。
•基幹相談支援センターと地域生活支援拠点の連携:鹿児島市では市内104事業所が連携する基幹相談支援センター(市社協が運営)と、35法人が参画する地域生活支援拠点の面的整備を進め、24時間の相談・緊急対応体制を構築しています。
•平時からの緊急時対応の練習:親の急な入院等に備え、緊急時になってから動くのではなく「平時から緊急をイメージして」ショートステイ等の体験利用を重ね、入所施設の風通しを良くしながらグループホームや一人暮らしへつなげることが重要です。
③権利擁護:成年後見制度の改正と地域の支援体制(久保厚子氏)
•家族の不安と現行制度の課題:育成会の調査では家族の86%が親なきあとに不安を抱える一方、43%が「将来必要な資金や制度がわからず何も準備していない」状況にあります。また、現行の成年後見制度は利用率が約2%にとどまり、「一度使うと亡くなるまでやめられない」「後見人を交代できない」「本人の意思が反映されにくい」「障害基礎年金のみの生活では月2万円程度の報酬負担が重すぎる」といった課題が指摘されてきました。
•成年後見制度の抜本的見直し(民法改正):従来の「後見・保佐」をなくして「補助」に一元化し、包括的な権限付与ではなく、本人ができることは本人に任せ、必要な特定の法律行為に限定して代理権や同意権・取消権を個別設定する仕組みへ変わります。遺産相続など必要な局面が終われば裁判所への申立てにより利用を終了(および必要に応じた再開・変更)できるようになり、補助人の交代も可能になるほか、本人の同意・意思確認が原則義務化されます。
•地域の権利擁護支援体制の構築:後見制度を終了した後に「荒野に放り出される」ことがないよう、障害者や認知症高齢者、身寄りのない高齢者を地域で支える体制づくりと、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業の拡大等が議論されています。令和10年(2028年)4月からの地域体制スタート、同年12月頃からの新成年後見制度スタートが見込まれており、親は本人の生育歴や現状を伝える「サポートガイド(本人情報シート等)」を今から書き残すことが不可欠です。
④本人の高齢化:加齢変化・介護保険・意思決定支援(古川慎治氏)
•早期加齢と段階的な重度化への対応:知的障害者の高齢化は前例のない速さで進んでおり(のぞみの園の入所者平均年齢は72歳)、一般より5〜20歳ほど早く加齢が進む傾向があります。40代での生活習慣病予防・検診、50代前半での機能低下への配慮、50代後半〜60代での身体介護技術や住環境整備(トイレや入浴の段差解消等)など、状態の変化に応じた支援の転換が必要です。
•ダウン症の認知症リスクと治療可能な疾患の鑑別:ダウン症(21トリソミー)の方は21番染色体上のアミロイドβ生成遺伝子の影響により、30代からアルツハイマー型認知症を発症しやすいことが分かっています。ただし、正常圧水頭症や慢性硬膜下血腫など手術で回復可能な疾患が認知症と誤認されるケースがあるため、精密検査による見極めが極めて重要です。
•介護保険と障害福祉サービスの併用課題: 65歳以降は原則介護保険優先となりますが、グループホームや就労系サービス等は継続利用でき、限度額を超えるホームヘルプ等も障害福祉サービスとの併用が認められています。しかし市区町村が本人の意向を聞き取らず一律に介護保険へ切り替えさせる不適切な運用が散見されるほか、入所施設等での医療ニーズやターミナルケア(看取り)における介護保険・医療との連携見直しが課題となっています。
•意思決定支援と家族が遺すべきもの:高齢化により意思表示が減退しても、日々の経験から感情表出を汲み取る「意思決定支援」や「人生会議(ACP)」が重要となります。家族には、本人の意思表示のパターンをまとめた「パーソナルデータ(成育記録)」を支援者に託すこと、そしてお金以上に本人の人生の土台となる「家族との愛情と思い出」をたくさん残してほしいと強調されました。
3.パネルディスカッション:支援を引き継ぐための要点
•個人頼みではない「組織・チームの専門性」の確立: 100点を取れる一人のスペシャリストに依存するのではなく、「なぜその支援を行うのか」という根拠を言語化・体系化し、職員全員が60〜70点以上の水準を継続できるチーム支援・標準的支援の定着が虐待防止と家族の安心につながります(松岡氏・水流氏・古川氏・大平氏)。
•法人間の垣根を超えた協力と行政との対話:鹿児島市の拠点整備(10年で7法人から30法人以上へ拡大)では、報酬加算の後押しに加え、他法人の職員同士が宿直を分担する「お互い様」の関係が築かれています。こうした仕組みを広げるには、行政担当者と粘り強く対話を重ね、一人の課題の蓄積を地域のシステムへと昇華させるプロセスが不可欠です(水流氏・大平氏)。
•権利擁護における自治体と相談支援専門員の課題:地域の権利擁護体制には家庭裁判所・専門職・社協・当事者団体(育成会)等の連携が必要であり、基礎自治体(市町村)の推進力と都道府県のバックアップという役割分担の整理が重要です(久保氏・大平氏)。また、相談支援専門員は権利擁護と親和性が高いものの、月30件近くの担当を要する現行の計画相談の報酬構造のまま業務を上乗せすることは困難であり、受け持ち件数の緩和と報酬上の評価が求められます(大平氏)。
•親および育成会(親の会)への提言:当事者や家族にしか出せない熱量で「要望」を上げることが大前提ですが、単なる要望にとどまらず「こういう仕組みがあれば実現できる」という具体的な「提案」の要素を加え、地域の自立支援協議会等に参画して行政へ働きかけていくことが期待されます(大平氏)。