4日夕方、参議院議員会館にて「発達障害の支援を考える議員連盟総会」が開催。一般社団法人 発達障害ネットワーク(JDDネット)顧問として出席。
公明党から議連の事務局長 三浦信祐参議院議員が司会。原田大二郎事務局次長(参議院議員)。竹谷とし子代表代行(参議院議員)が出席。167名(衆院116名・参院51名)の議連。「発達障害者支援法改正」に向けての3回目の会合です。
野田聖子会長挨拶の後、「乳幼児期、学齢期での早期発見・早期支援 家族への支援、医療との連携」3人の有識者からヒアリング。(下記内容)
【法改正に向けた重要論点】
今回のヒアリングでは、次期「発達障害者支援法」の改正に向け、以下の4点が中核的な課題として浮き彫りになりました。
1.「医学的診断」や「親の申告」を前提としない早期発見・支援への転換(スクリーニングと公的な発見義務の導入)
2.医療・福祉・教育・司法を横断する「アセスメント情報の標準化・ICTによる引き継ぎ」(保護者の説明負担の解消)
3.計画作成や支援実績に連動する「財源・人員配分」と「支援の質の担保」(通常学級の逆インセンティブ解消、福祉事業所の質評価)
4.家族支援の実効性強化と、強度行動障害等に対する「自治体の受け入れ調整責任」の明確化
1.会合の概要
•日時・場所:令和8年11月4日(水)16:00〜17:00/参議院議員会館101会議室
•議題:「乳幼児期、学齢期での早期発見・早期支援、家族への支援、医療との連携」(法改正に向けた第3回ヒアリング)
•出席者:議連所属議員、有識者3名、関係省庁(厚労省、こども家庭庁、文科省、法務省、警察庁、衆院法制局)、JDDネット(市川宏伸名誉理事長、山本博司顧問ほか)
•冒頭挨拶(野田聖子会長)
介護保険導入により高齢者福祉の社会化が進んだ一方、過去30年間、声を上げられない子どもや発達障害児の親への支援は政治的に後回しにされてきた。少子化や小児医療現場の疲弊が進む中、支援の「費用対効果」の視点も踏まえ、抜本的な法整備を進める必要がある。
2.有識者ヒアリングの要約
①渡辺弘司氏(日本医師会常任理事)広島県呉市在住
テーマ:医療現場の実態と切れ目のない地域連携
•対象範囲と診断に依存しない支援:発達障害は特性が連続的であり、グレーゾーンを含め正確な実数把握が難しい。法改正にあたっては診断カテゴリで画一的に区切るのではなく、「診断確定前の段階」や「未診断児」であっても、生活上の困難さに応じて柔軟に支援や合理的配慮を受けられる仕組みを維持・強化すべきである。
•専門医不足とかかりつけ医の活用:「子どものこころ専門医(約1,161人)」や「児童精神科専門医(573人)」など専門医が絶対的に不足しており、初診まで半年待ちといった事態が生じている。小児科医(子どもの心相談医:1,396人)や総合診療医、看護師、心理職等が連携して一次対応・スクリーニングを行い、真に専門医療が必要なケースを専門医へつなぐ体制と研修の充実が不可欠である。
•移行期医療(縦の連携):小児科から成人期の精神科へ移行する際、一般の精神科医が発達障害の診療に不慣れで移行が滞るケースが多いため、受け皿の環境整備が必要である。
②井上雅彦氏(鳥取大学大学院教授)
テーマ:児童期から青年期の課題と家族・地域連携
•早期発達支援の「質」の担保:児童発達支援(約1.2万か所)や放課後等デイサービス(合わせて約3万か所)が急増する一方、支援の質にばらつきがある。人員配置だけでなく、「支援の質の確保・向上」と「客観的な質の評価」を法文上に明記すべきである。また、5歳児健診(R6年度実施率18.8%)の拡大と就学先への確実な情報引き継ぎを一体で整備する必要がある。
•ICTによるアセスメント情報の共有:進学や事業所変更のたびに保護者が一から説明や検査を繰り返す負担(説明疲れによる支援拒否)が深刻である。国が標準指針を示し、同意のもとで医療・福祉・教育がICTで安全にアセスメント情報を蓄積・共有する仕組みを構築すべきである。
•学校と福祉の「非対称性」の解消:保育所等訪問支援など福祉側には訪問の報酬があるが、受け入れる学校側には専任人員や財源がなく負担となっている。学校側の人員手当てと、訪問支援のアウトカム(効果検証)を報酬や制度に組み込む必要がある。
•家族支援の義務化レベルへの引き上げ:ペアレントトレーニング、きょうだい支援、就労・休息のための預かり(レスパイト)、ひとり親・高齢親への支援を明記し、現行の「努力義務」から「実施体制を伴う支援」へと格上げすべきである。
•司法連携と強度行動障害の受け皿責任:児童自立支援施設等でのパニックが傷害事件扱いとなり少年院へ送致される際、それまでの支援経過が家庭裁判所に届いていない。また、強度行動障害のある方が施設や医療から利用拒否・退去となった際、家族が抱え込まざるを得ない現状があるため、自治体に「受け入れ調整の責任主体」としての権限と継続支援を義務付ける必要がある。
③近藤武夫氏(東京大学先端科学技術研究センター教授)(オンライン)
テーマ:通常の学級(特に高校)における合理的配慮と制度上の空白
•通常学級・高校における計画作成の極端な低さ:日本の通常学級で「個別の教育支援計画」を持つ生徒は小中で約1.6%、高校ではわずか約0.2%に留まり、米英の中等教育段階(約7%)と比べ極端に低い。また、読み書き困難(LD等)があっても、本質的な解決になるデジタル教科書や音声読み上げではなく「拡大コピー」の提供に留まるなど、適切な配慮に至っていないケースが多い。
•「親告主義」の限界と「逆インセンティブ構造」:日本は本人・保護者の申し出を起点とするため、教室で静かに困っている生徒が見落とされる。さらに、特別支援学級と異なり、通常学級では「支援の必要性を発見し計画を作っても、それに応じた人員や予算が配分されない」ため、見つけるほど学校現場の負担が増える逆インセンティブが働いている。
•法改正に向けた3つの制度提案:
1.発見と評価の責任(Child Find):本人・親の申告や医学的診断を前提とせず、すべての学びの場で支援ニーズを発見・評価・計画することを学校設置者(自治体・学校)の公的責務とする。
2.個別の必要に連動した資源保障:計画作成に連動して、国の財政措置により専門職(アセスメントを担う心理職等)・人員・ICT機器・教材が配分される仕組みを作る。
3.実施状況の継続的把握:通常学級での計画作成数や配慮の実施状況を国が把握・公表し、高校・大学入試や就労移行までエビデンスとして引き継ぐ。
3.質疑応答の要点(課題解決の具体策)
議員からの「専門医不足への対策」「福祉の質の担保とICT活用」「評価を担う専門職」「制度と現場の乖離を打破するブレイクスルーは何か」という質問に対し、有識者から以下の具体策が提示されました。
•医療のスクリーニング体制(渡辺氏):限られた専門医に診断目的の受診が集中しないよう、地域の小児科医・かかりつけ医が一次相談を担い、「診断がなくても支援は受けられる」という理解を保護者に促す。また、母子保健(乳幼児健診・5歳児健診)のデータが個人情報保護の壁で学校へ引き継がれない現状を、行政の責任で解消すべきである。
•福祉事業所の認定・指導と短時間ICT会議(井上氏):事業所の質を調査・認定する機関と、調査後に指導する仕組みを予算措置とともに作る必要がある。ICTは単なるビデオ会議ではなく、アセスメントデータを時系列で蓄積した上で、多忙な教員や福祉職が「短時間・頻回」にケース会議を行えるプラットフォームとして活用すべきである。また、大学の教員養成課程における特別支援教育の必修コマ数を拡充すべきである。
•低学年からの全数スクリーニングと巡回評価(近藤氏):米国のスクールサイコロジストのように、自治体が公認心理師等を配置して学校を巡回・アセスメントできる体制が望ましい。直ちに実行できるブレイクスルーとしては、小学校低学年から全児童を対象に「読み書き等の簡易スクリーニング検査」を実施することが有効である。診断の有無にかかわらず学習上のつまずきを早期に数値で可視化し、デジタル教材やキーボード入力等の環境調整へ即座につなげるべきである。
4.総括(座長まとめと今後の展望)幼少期からの早期スクリーニング、分野横断の情報連携、そして自治体・設置者の責任明確化は、次期法改正の骨格に関わる極めて重要な論点として確認されました。次回以降の議論に向け、今回深掘りしきれなかった「少年司法・矯正分野との具体的な接続」や「就労・雇用分野への移行アプローチ」も含め、家族全体をケアする法体系の整理を進めていく方針で閉会しました。
終了後、登壇された井上雅彦先生と公明党竹谷としこ代表代行、三浦信祐事務局長(参議院議員)、原田大二郎事務局次長(参議院議員)、NPO法人輝HIKARI金子訓隆代表理事と。渡辺弘司先生と三浦信祐事務局長(参議院議員)、自民党宮路 衆議院議員。JDDネット 三澤一登副理事長(愛媛県松山市)と竹谷としこ代表代行、原田大二郎参議院議員と夫々、写真を撮らせて頂きました。
またJDDネットで出席されていた市川宏伸名誉理事長、日詰正文副理事長・高木美智代顧問・藤堂栄子専門員らと会合を受けて、今後について打ち合わせをしました。
次回4回目のヒアリングは12月4日(水)16時から。貴重な提言、ありがとうございました。










