29日午前、都内(江東区)にある日本科学未来館を視察。浅川智恵子館長が元職場である日本アイ・ビー・エム(株)のフェロー。浅川館長、高木副館長と懇談。

浅川さんは14歳のとき、プールの事故で完全に視力を失ったが不屈の闘志で、様々な困難を乗り越え、世界最大のコンピューター企業の研究・技術者の最高職位「フェロー」に抜擢されました。20万人の従業員のうち、フェローは75名しかおらず、日本人の女性では初めて。江崎玲於奈ノーベル賞受賞者もフェローメンバー。

2021年4月に日本科学未来館の館長に就任。(研究職も兼務されます)「絶対にあきらめない。」との言葉が原点という浅川さん。「あきらめなければ、道はひらける」との浅川さんの言葉を成人式の若いメンバーにいつも贈っています。

日本科学未来館は、科学技術の社会に対する役割と未来の可能性を考え、いっしょに語り合うミュージアムです。科学コミュニケータの臼田さんの案内で館内を見学しました。

自分自身で触れ、楽しむことのできる展示をはじめ、実験教室やトークイベントなど多彩なメニューを通し、日々の素朴な疑問から最新テクノロジー、地球環境、宇宙の探求、生命の不思議まで、さまざまなスケールで現在進行形の科学技術を体験出来ます。

5階常設展示「世界を探る」(100億人でサバイバル・ちりも積もれば世界をかえる)

3階常設展示「未来をつくる」ロボットASIMO実演、未来逆思考、アンドロイド

【浅川智恵子氏(あさかわ・ちえこ)】

https://digitalcast.jp/v/23639/

大阪府出身。IBMフェロー。米国T.J.ワトソン研究所所属。カーネギーメロン大学特別功労教授を兼務。これまで30年以上にわたりアクセシビリティ技術の研究開発に携わってきた。

中学生の時に失明。1985年日本IBM入社後、点字のデジタル化システムを開発し、現在のインターネット点字図書館の前身を築いた。1997年に初の実用的な視覚障がい者向け音声ブラウザ「ホームページ・リーダー」を開発し、世界の視覚障がい者の情報アクセス手段を格段に向上させるきっかけとなった。2009年IBMフェロー。13年紫綬褒章受章、19年米発明家殿堂入り。

14年米国赴任。米カーネギーメロン大学特別功労教授を兼務。AIの技術を応用することで視覚障がい者の自由な移動を可能にする「実世界アクセシビリティ技術」の研究開発に取り組んでいる。開発をした視覚障害者のためのナビゲーションシステムは東京のショッピングモールやピッツバーグ国際空港において実用化されている。

現在は「AIスーツケース」と呼ばれる視覚障がい者のためのナビゲーションロボットの研究開発に従事し、視覚障がい者が楽しみながら街歩きできる技術の実現を目指している。21年4月に日本科学未来館の館長に就任。工学博士。

【新館長 浅川智恵子から就任のごあいさつ】

毛利衛さんの後任として日本科学未来館の館長という重責を担うこととなりました。

人工知能やバイオテクノロジーをはじめとする科学技術の進化によって、これまで人類があきらめていたようなことができるようになり、新しい社会が開かれようとしています。一方で、人為起源の気候変動や生物多様性の損失をはじめ地球規模の課題は日増しに深刻になっています。科学技術がもたらす便利さをただ受け入れるだけでは、より良い未来は決してやってきません。2030年はちょうど国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標年です。これからの10年間、私たち一人ひとりが誰かに任せるのではなく、自らの行動を変えなくては持続可能な世界は実現できません。

未来館はミュージアムとして何ができるでしょうか。昨年4月に就任が決まって以来、進むべき方向性について、スタッフらと議論を進めてきました。そして、2030年に向けて「あなたとともに『未来』をつくるプラットフォーム」というビジョンを掲げることにしました。

最新の科学技術をはじめとする知識によって、より良い未来をつくるため、未来館をあらゆる人が立場や場所をこえてつながるプラットフォームにしたいと思います。未来館というプラットフォームを通じて、幅広い科学技術を体験することで、未来の社会を想像し、より良い未来に向けた行動を始めるきっかけとなってほしいと願っています。その中から新しいアイデアやイノベーションが生まれればこれほど嬉しいことはありません。そのために、さまざまな科学コミュニケーション活動を積極的に進めていきたいと考えています。

そんなプラットフォームになるためには、未来館が、障害や年齢、国籍といった違いに左右されることなく、誰にとっても利用しやすいことが不可欠です。スマートフォンを活用した高精度な音声ナビゲーション・システムを導入する準備を進めているほか、未来館に私自身アクセシビリティの研究室を設けて、研究開発を進めていきます。ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包摂性)を大切にし、アクセシブルなミュージアムとして未来館を世界に誇れるモデルにしたいと考えています。

私のモットーは「夢を持ってあきらめなければ道は開ける、不可能は可能になる」です。私は小学5年生のときプールでの事故で視力が弱まり、中学生のころには両眼の視力を失いました。大学では英語を勉強しましたが、目が見えなくてもプログラミングはできると知って専門学校に通いました。そして日本IBMで先端技術を活用し、視覚障害者の課題解決に取り組んできました。簡単ではありませんでした。何度もあきらめようと思いましたが、チャレンジを続けた結果、失明した当初には予想もできなかった人生が開けました。

私たちは一人ひとりいろいろな可能性を秘めています。夢を持っていればその可能性をいかすチャンスはめぐってきます。日本科学未来館は今年で20周年を迎えます。素晴らしい成果をさらに積み上げていくために、精いっぱい努力していきますので、皆さまのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。ぜひ私たちとともに、より良い未来をつくっていきましょう。

日本科学未来館 館長 浅川 智恵子