参議院 総務委員会 第8号 令和2年3月26日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、市町村の合併の特例に関する法律の一部を改正する法律案に関しましてお伺いをしたいと思います。
 いわゆる平成の大合併では、日本全国で平成十一年当時に三千二百三十二あった市町村が千七百十八の市町村に再編をされました。これは、多くの自治体がこれからの存続に強い危機感を抱いて合併を決断した結果だと思います。
 また、総務省が平成二十二年三月に公表いたしました「「平成の合併」について」では、市町村合併の効果が現れるまでに、市町村建設計画等で一般的に定められている十年程度の期間が必要としておりました。その十年間が経過をしたわけであり、一定の合併の効果が見えてきているのではないかと考えます。
 政府の地方制度調査会では、今回の延長という答申をした議論の中におきまして、市町村合併の効果、課題という資料が提出されたと承知をしております。
 そこで、大臣にお伺いをしたいと思いますけれども、まずこの平成の大合併の効果、どのように評価をしておられるんでしょうか。
○国務大臣(高市早苗君) 平成の合併は、地方分権の担い手となる基礎自治体の行財政基盤の確立が目的でございました。その結果、総じて申し上げれば、市町村の規模の拡大や行財政基盤の強化といった成果が得られたと認識しております。
 ただ、それぞれの市町村において、合併後の町づくりというのは今も進行中でございます。多くの団体で、専門職員の配置、充実、また専門部署の新設など、組織、機構の充実、そして広域的な町づくりの推進、また地域資源を生かした広域的な地域活性化、職員の配置の適正化や公共施設の統廃合など、行財政の効率化といった市町村合併の成果は既に現れつつあると認識しております。
○山本博司君 これからも継続的にこの大合併についての検証ということを行っていただいて、見える化ということで大変大事でございますので、国民に示す必要があると思います。
 この合併の効果の中で、合併によって人口規模が拡大したことで行政組織が充実をしたとか、また行財政の効率化図れたということがございますけれども、具体的にどのように進んでいったのか、具体的なデータがあればお示しをしていただきたいと思います。
○政府参考人(高原剛君) 御答弁申し上げます。
 合併市町村においては、合併により、内部管理等の重複部門の解消や公共施設の効率的な配置など、スケールメリットを生かした行財政効率化が図られているものと承知をしております。
 データで申し上げますと、例えば総務部門の職員数は、平成十一年から平成二十七年にかけて、非合併市町村では四・〇%の減少に対し、合併市町村では一〇・七%減少しております。また、財政力指数は、平成十年度から平成二十九年度にかけて、非合併市町村では変化はないものの、合併市町村では財政力指数の低い団体の割合が減少し、単純平均で〇・三七から〇・四九へと〇・一二ポイント上昇しております。さらに、合併市町村では、保健福祉分野、土木建築分野などの専門職員の平均配置人数も増加しているところでございます。
 以上でございます。
○山本博司君 こうした効果が評価をされている一方で、また様々な御指摘もあるわけでございます。
 例えば、地元選出の議員が縮小をして、また支所の職員が減ったことによって住民の声が届けにくくなっているのではないかとか、また、自治体の災害対応力が低下しているのではないかと、こういう指摘も受けております。また、町役場がなくなったことで、役場職員という最大のお客様を失った商店街が衰退してしまったという、そういう声もお聞きをしております。
 先日視察をいたしました岡山県倉敷真備町の被災現場では、支所長に避難勧告などの防災に関する権限があればもう少し早い対応ができたかもしれないという声もいただきました。
 こうした周辺部の旧市町村の活力が失われている中で、役所のある中心部との格差、これが広がっているという指摘に対してどのように総務省として認識しているんでしょうか。
○副大臣(長谷川岳君) 委員御指摘のとおり、合併により周辺部の住民の声が届きにくくなったなど、旧市町村の活力が失われているとの課題が、指摘があることも事実でございます。
 こうした課題の解決に向けて、合併市町村においては、支所の設置、地域の自治区の活用、様々な取組が行われていると承知をしております。
 総務省におきましては、平成合併により市町村の面積が拡大するなど市町村の姿が大きく変化をしたことを踏まえて、支所に要する経費の加算など、平成二十六年度以降五年間掛けて普通交付税の算定を順次見直してきているところでございます。
 引き続き、合併市町村の課題を踏まえ、必要な支援を行ってまいりたいと、そのように考えます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 先日、愛媛県西予市を訪問いたしまして、市町村合併の効果に関しまして、市長やまた地域の方々に伺ってまいりました。
 愛媛県は、七十ありました市町村が二十市町村に再編をされております。この中で、西予市は平成十六年四月に、明浜町、宇和町、野村町、城川町、そして三瓶町の五つの町が合併をして誕生したわけでございます。現在の人口は三万七千人、合併からおよそ十五年たちましたけれども、約一万人の人口減少となっております。今後もこうした人口減少は避けて通れない状況となっておりまして、二〇四〇年には二万四千人、二〇六〇年には約一万六千人になると、こう推計をされておりまして、この人口減少を受け入れた、そういう施策をこの市では推進をされていました。
 具体的には、小規模多機能自治活動拠点、これを顔の見える小学校区単位で整備しておられまして、自助、共助の視点から様々な行政サービスの提供をきめ細かく取り組み、地域課題の解決と活性化を進めているということでございました。
 この西予市は、この五つの町、そうでございますけれども、突出した中心部があったというよりも、それぞれの五つの町ごとのまとまりのあるクラスター的な構成となっていることから、その地域住民自身がこの町づくりに細かい単位で取組が進められておりまして、地域自治の一つの形であると実感したわけでございます。
 こうした住民の意見を反映させる施策である小規模多機能自治活動に関してどのような支援を行っていくことを考えているのか、認識を伺いたいと思います。
○政府参考人(境勉君) お答え申し上げます。
 御指摘の西予市の取組もそうでございますが、人口減少、高齢化が進展する中で、地域の生活や暮らしを守るために、住民が中心となりまして地域課題の解決に向けた取組を行っていただくという、こういう地域運営組織の重要性はますます高まっているものと認識をいたしております。
 総務省では、このような地域運営組織の立ち上げや運営、また、高齢者等の暮らしを守る取組に対します市町村の支援経費につきまして地方交付税措置を講じているところでございます。また、過疎地域を始めとした条件不利地域におきましては、地域運営組織などが行います集落機能の維持活性化に資する取組を交付金によって支援をしております。
 今後とも、地域課題の解決に向けまして、地域運営組織が実践するいわゆる小規模多機能自治の取組をしっかり支援してまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非ともこの取組をほかの地域でも、島根県の雲南市であるとか様々な地域でこうしたことが取り組まれておりますので、しっかり支援をお願いしたいと思います。
 次に、市町村の今後の課題ということで伺いたいと思います。
 第三十二次地方制度調査会では、昨年の七月に、圏域における地方公共団体の協力関係を含む地方行財政体制の在り方について、二〇四〇年頃から逆算をして顕在化する地方行政の諸課題とその対応策についての中間報告、これを取りまとめられました。この中間報告では、二〇四〇年頃にかけて求められる方策として、地域の枠を超えた広域連携の必要性が提言されたとのことでございます。
 今後、全ての市町村が行政サービスをフルセットで持つということは難しいと予想されております。そうした中で、福祉や教育、交通インフラの維持や災害対策などの課題に関しまして、周辺の市町村と連携して補い合うこの広域連携の手法を活用するのは一つの選択肢であると思います。
 この広域連携に関して地方調査会ではどのような議論をされているのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(高原剛君) 御答弁申し上げます。
 今次の地方制度調査会における広域連携に係る調査審議の中では、市町村間の広域連携については、定住自立圏や連携中枢都市圏の枠組み形成が進められているが、産業政策や観光振興など比較的連携しやすい取組が進められている状況にあるとの現状認識から、今後の資源制約の下でも、資源、専門人材の共同活用や施設、インフラの再編など、合意形成は容易ではないが広域で対応する必要がある困難な課題にも対応し、取組の内容を深化させていくために必要な方策等について議論をいただいております。
 また、都道府県による補完、支援については、小規模市町村が多い県などにおいて都道府県と市町村が一体となって行政サービスを提供する協働的な手法が使われているとの現状認識を踏まえまして、技術職員、ICT人材等の専門人材の確保や、今後、市町村間の広域連携では対応が困難な事案の増加が見込まれる中で、個々の市町村の規模、能力等に応じて都道府県がきめ細やかに補完の役割を担うために必要な方策等について御議論いただいているところでございます。
○山本博司君 また、二〇四〇年には六十五歳以上の人口がピークとなるとされておりますけれども、この人口構造の変化の表れ方、これ地域によって様々でございます。それぞれの自治体が持続可能な地域づくりを進めるに当たっては、住民の合意の下で自主的にそれぞれの地域のあるべき姿を選択できるようにする必要がありまして、国として幅広くこの選択肢を示すことが重要でございます。
 この二〇四〇年を見据えた行政単位の在り方について、地方制度調査会ではどのような議論がされているんでしょうか。
○政府参考人(高原剛君) 市町村は、住民に最も身近な基礎自治体として住民に対し行政サービスを適切に提供する責任を有するものでございます。各市町村において、地域における行政需要や経営資源等の変化を首長、議会、住民等が共有し、行政サービス提供の持続可能性を確保するために必要となる対応を長期的な視点で選択していただく必要がある、また、今後の基礎自治体の行政サービス提供体制について、自主的な市町村合併、市町村間の広域連携、都道府県による補完などの多様な手法の中から市町村が地域の実情に応じて最も適したものを自ら選択できるようにすることが適当という御議論を地制調でいただいているところでございます。
 以上でございます。
○山本博司君 これまで様々にお聞きをしてまいりましたけれども、あくまでも大事なことというのは、地域のことは地域で決めるというこの住民自治の考え方であります。基礎自治体が主体性を持って自分たちが進むべき方向性を議論すべきでございますので、国や都道府県はそれを側面的に支援するという姿勢が重要であると思います。
 そこで最後に、地方議員のなり手不足に関して伺いたいと思います。
 市区町村は、基礎的な地方公共団体として最も私たちの身近な、そうした密着をした事務を取り扱っております。その政策決定には、地域の代表者である議会、これが極めて重要な役割を担っているわけでございます。特に、小規模な町村議会におきましては、一般的に議員と住民との距離が近くて、地域課題をきめ細やかに把握をして意思決定させるという、大変地域住民の代表としての機能が強く求められているわけでございます。
 そうした中、近年、町村議会の議員数は大幅に減少しておりまして、特に、人口減少と高齢化に苦しむ過疎地では、議員の後継者がおらず、なり手不足が深刻化しております。地方政治への関心の低さや不信感、さらには議員報酬が低額であるということ、また兼業がしにくいなどの要因も指摘をされております。平成二十九年には、高知県大川村では、議員のなり手がおらず、町村総会の導入を検討していることが話題になったこともございました。
 公明党には約三千人の地方議員がおりまして、この小さな声に耳を傾け、地道に地域の課題解決に取り組んでいただいております。こうした地方議員のなり手不足に対してどのように対応していくのか、大臣に最後にお聞きしたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 地方議会の役割の重要性については、もう今、山本委員からお話があったとおりでございます。
 この議会が多様な民意を集約して団体意思を決定していくということを考えますと、住民の皆様の多様な層から議員が選出されて、そして議会を構成していただくということによって多くの皆様のニーズをつかむということにつながっていきますので、そこが大切だろうと思っております。
 総務省では、昨年六月に地方議会・議員のあり方に関する研究会を立ち上げ、今後の地方議会、議員のあるべき姿や、多様な人材が地方議会に参画しやすくなる方策などについて議論してまいりました。現在、この研究会の議論を基に、地方制度調査会において、地方議員のなり手不足への対応ということで、請負禁止の緩和や立候補環境の整備などの項目について検討を深めていただいているところでございます。
 総務省としても、有意義な議論が行われ、それがまた政策に反映されていけるように、しっかりと頑張ってまいります。
○山本博司君 以上で終わります。