参議院 総務委員会 第10号 令和2年3月31日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、NHKの予算審議ということで、前田会長を始め関係の皆様に伺いたいと思います。
 まず、前田会長に伺います。
 本年一月に会長に御就任され、約二か月が経過をいたしました。会長は、民間の金融機関での御経験が長く、これまでとは違うお立場でもあり、御苦労も多いかと思います。前田会長は、就任の記者会見の冒頭で、公共放送の使命を果たすためにしっかりと軸のぶれない組織運営をしていきたいと、こう表明をされました。
 そこで、お聞きしたいと思いますけれども、公共放送の使命とはどのようなものであるのか、認識されているのか、まずお伺いしたいと思います。
○参考人(前田晃伸君) お答えします。
 NHKの設立目的は、放送法第十五条で、公共の福祉のため、あまねく日本全国において受信できるように豊かで、かつ、良い放送番組による国内放送を行うとともに、放送及びその受信の進歩発達に必要な業務を行い、あわせて国際放送及び協会国際衛星放送を行うことと規定されております。
 公共放送でありますNHKは、放送法を踏まえ、公共の福祉のため、広く視聴者・国民の皆様の負託に応え、自主自律を貫き、公平公正、不偏不党を堅持して、豊かで良い放送を行い、これによりまして、視聴者・国民の皆様の知る権利に応え、信頼される情報の社会的基盤の役割を果たしていくものと考えております。
 放送と通信の融合時代におきまして、放送を太い幹としつつも、インターネットも効果的に活用し、公共メディアとしてしっかり期待に応えてまいりたいと思います。
○山本博司君 ありがとうございます。
 多くの国民の受信料を財源として成り立っているのがNHKでございます。今お話ありましたとおり、放送法の理念に基づいて、国民の知る権利と健全な認識の発展に寄与するようにしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 NHKの令和二年度の予算では、受信料の値下げを実施するなど、事業収支は約百四十九億円の赤字となる見込みとのことでございます。赤字予算は二年連続でございますけれども、この赤字解消にどのように取り組むつもりなのか。また、これ以外にも様々な課題が山積しておりますけれども、解決していかなくてはならないと思います。
 そこで、会長に伺います。会長就任以来初めての予算でありますけれども、予算への基本的な考え方、お伺いしたいと思います。
○参考人(前田晃伸君) お答え申し上げます。
 基本的には、このNHKの予算制度は、収支はバランスするということだと思います。ただ、私は、そうは言っても、単年度で常にバランスするというのは、これだけ変化が激しい時代におきましては、誠に申し訳ないんですけど、ちょっとやっぱり長期的に見ていただきたいと思います。
 特に、今回の場合のように受信料を値下げするというようなことになりますと、赤字決算を組まないと下げられないというような会計上の問題もございますので、ここら辺は、基本的には、バランスさせていくというのは、私も銀行員ですので赤字は好きでございませんので、基本的には、黒字にしたいんですが、ちょっと、二、三年の範囲でバランスさせるというような少しの弾力性をお許しいただきたいと思います。
○山本博司君 ありがとうございます。
 四月から三か年の経営計画が最終年度を迎えるわけでございますけれども、令和三年度からの次期経営計画についてもこれから議論が始まると思います。放送をめぐる社会環境の変化に柔軟に対応していただくとともに、こうした受信料の公平負担を徹底して、事業の効率化に取り組んで、この赤字額を減らす努力、努力をしていただきたいと思います。
 それでは次に、新型コロナウイルスの感染防止対策に関して伺いたいと思います。
 今月の十二日に、総務大臣が、NHK国際放送に対しまして、新型コロナウイルス感染症に関する国内の最新の状況に特に留意すること、こういう要請をいたしました。この要請に限らず、我が国の事実に基づいた最新の情報をNHKのテレビ、ラジオ、国際放送によって発信をするということは、海外滞在の日本人の方や、また外国人観光客にとってもとても有益な情報源になると思います。また、今インターネットで様々な情報があふれております。国内放送においては、正確な情報を迅速に伝えることで国民の安心感につながると思います。
 そこで、こうした新型コロナウイルス関連の情報発信にどのように取り組むのか、お聞きしたいと思います。
○参考人(木田幸紀君) お答えいたします。
 新型コロナウイルスをめぐって、NHKでは、命と暮らしを守る報道の使命を果たすため、テレビ、ラジオ、インターネットと、あらゆる伝送路を使い、最新の情報や支援策など、海外を含めて連日お伝えしているほか、視聴者の疑問や不安に応える番組を編成するなど取組を強化しております。
 令和元年度の国際放送の実施要請の変更の要請につきましては、内容を検討した結果、これを応諾した場合でもNHKの番組編集の自由を確保できると判断し、今月十三日に応諾の回答を行いました。
 新型コロナウイルス対策の特別措置法が成立したことを踏まえ、NHKは指定公共機関として今月二十四日に行動指針を策定しました。また、その行動指針の英語版も公表したところであります。この中では、正確な情報を迅速に届け、安全、安心を守ることのほか、六つの柱を掲げております。
 NHKとして、NHK全体として、この行動指針に基づいて視聴者・国民の皆様の役立つ放送サービスを届けるという使命を果たしてまいります。
○山本博司君 是非よろしくお願いしたいと思います。
 次に、オリンピック、パラリンピックに関して伺います。
 新型コロナウイルスの影響で、東京オリンピック・パラリンピック、おおむね一年程度延期となりました。昨日、七月二十三日に東京オリンピックの開幕日、またパラリンピックは八月二十四日開幕ということが決定したわけでございますけれども、大会までのスケジュールや施設とか人材確保、こうした運営面に加えまして、この大会の主役となる選手の、代表選手などの競技面においても課題が山積をしており、様々な影響が懸念をされます。
 午前中にも議論がございましたけれども、この東京オリンピック・パラリンピック競技大会につきましては、NHK予算におきましても、五十六年ぶりの自国開催ということで最高水準の放送サービスで提供すると、こういうことを目指しておりました。
 これから放送内容等の変更等、様々な見直しが必要になってくると思いますけれども、しかし、この機を、延期の決定のこの機を捉えまして、開催までの機運を更に高める質の高い番組を是非とも提供していただきたいと思います。
 そこで、今後どのように見直していくのか、会長にお聞きします。
○参考人(前田晃伸君) お答えします。
 NHKといたしましては、東京オリンピック・パラリンピックの延期の決定を受けまして、放送サービスの見直しや事業運営に与える影響などの検討、精査に着手したところでございます。
 昨日、東京オリンピックにつきましては来年七月二十三日に開幕することなどが発表されましたが、延期された大会の詳細についての大会組織委員会やIOCなどの議論を注視しながら、放送サービスを適切に実施してまいります。
 NHKといたしましては、延期されましたこの大会につきましても、引き続き最高水準の放送サービスを提供することを目標に掲げ、公共メディアとして適切に準備を進めて、視聴者の皆様の期待に応えてまいりたいと思います。
○山本博司君 大変御苦労は多いかと思いますけれども、是非内容の充実を目指していっていただきたいと思います。
 次に、人に優しい放送サービスの充実に関して伺います。
 共生社会の実現に関しまして、高齢者や障害のある人など誰もが快適に情報を入手できるよう、この放送分野における情報アクセシビリティーの確保、これ大変重要でございます。
 総務省が平成三十年四月に公表しました放送分野における情報アクセシビリティに関する指針では、字幕の付与や解説放送、手話放送についても数値目標が定められておりまして、更なる拡充が必要でございます。
 特に、我が党が提案してまいりました国会中継における字幕放送、平成三十年十月より本会議の総理の所信表明演説で実施、実現ができたわけでございます。こうした字幕放送の一層の充実に是非とも努めていただきたいと思います。
 また、音声認識による字幕制作システムの研究であるとか、また、新たな解説放送サービスやコンピューターグラフィックスを用いた手話アニメーションのこうした技術研究、これも早期の実用化を目指して推進をしていただきたいと思いますけれども、こうした人に優しい放送サービスの充実に向けての取組、お伺いをしたいと思います。
○参考人(木田幸紀君) NHKでは、二〇一八年二月に策定された放送分野における情報アクセシビリティに関する指針にのっとり、字幕放送、手話放送、解説放送の拡充に取り組んでおります。
 具体的には、字幕放送に関しましては、令和二年度の総合テレビにおいて、普及目標の対象となる午前六時三十分から二十四時三十分の間の番組では九八%程度の番組に字幕を付与する計画です。手話放送につきましても、令和二年度は地上波において一週当たり四時間程度の放送を計画しております。副音声で情景描写などをコメントする解説放送は、令和二年度は百六番組で実施する計画です。いずれも拡充して、継続して拡充に努めていきたいと思います。
 また、技術開発の面では、高齢者や障害のある人など誰もが快適に御覧いただけるための人に優しい放送サービスをインターネット、ICTも活用して構築することを掲げ、研究開発をしております。気象情報の手話CGの研究や自動音声認識字幕付与装置の実験を一部の地域放送局で行うなど、取組を進めております。
 今後も、どのような課題があるか、公共放送として今可能なのか、引き続き検討を重ね、全ての視聴者が見やすく、聞きやすく、分かりやすく、安心して視聴できる人に優しい放送サービスの充実に努めていきたいと考えております。
○山本博司君 やはり視覚障害の方々の解説放送や、また聴覚障害の方々の手話を含めて、是非とも研究も含めて人に優しい放送サービスに取り組んでいただきたいと思います。
 次に、受信料の負担軽減ということで伺いたいと思います。
 平成三十年四月から、公益性の高い社会福祉施設への受信料の免除の対象が拡大をされました。この件につきましては、私も、平成二十八年の十一月、また平成二十九年三月、この当委員会で質問したほか、公明党が長年訴え続けてきたことが実現をしてきたわけでございます。
 この受信料免除拡大の対象事業は、小規模保育や、病児保育や、手話通訳、介助犬訓練、小規模多機能居宅介護など、保育、介護、障害福祉など二十五事業、約二万事業所、この総額免除額は年間約二億円になるわけでございます。
 先日、新たに対象となった愛媛県松山市のこの小規模保育事業の施設を訪問させていただきました。お会いした理事長からは、年額一万六千円、BSも含めて約三万円の受信料ではございますけれども、こうした小さな声に配慮していただいて本当にうれしいと。また、一昨年の西日本豪雨災害、愛媛県も被害ございましたけれども、不安な中、NHKのテレビの災害情報を必死に見詰めましたと、テレビの必要性を実感しましたという声もいただいた次第でございます。
 また、受信料免除の対象になっていることを知らない施設もあるかもしれません。こうした対象施設への周知が求められますけれども、NHKに確認しましたら、現在、約一万事業所、年間一億円の利用にとどまっているということでもございました。
 やはり受信料の免除を受けるには申請が必要でございます。こうした施設への周知、しっかりと行っていただきたいと思います。また、親元などから離れて暮らす奨学金を受給している学生等にもこの受信料の免除制度が導入されておりますけれども、こうした方々への周知も大変重要でございます。
 こうした周知の必要について見解を伺いたいと思います。
○参考人(松原洋一君) お答えいたします。
 御指摘のとおり、受信料の免除については、その対象となる方に対して周知を徹底するということが大変重要であるというふうに認識をしております。
 このため、社会福祉施設や奨学金受給対象等の学生への免除の実施に当たっては、これまでもテレビのスポットやラジオ、あるいはダイレクトメールの送付、それから関係団体等への協力を得ながら周知を行ってきたところであります。
 引き続き、免除の対象の方に周知が行き届くように、関係団体等への協力要請も含めて御案内の徹底に努めていきたいというふうに考えています。
○山本博司君 是非ともこの点、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 次に、災害報道に関して伺います。
 地震や台風などにより毎年のように災害が多発しております。また、南海トラフや首都直下型地震、三十年以内に起きる可能性は七〇%とも言われておりまして、今後の災害への備えがとても重要でございます。
 先日、NHKの総合テレビで東日本大震災から九年目の節目としての特別番組がございましたけれども、大変すばらしい内容でございました。これまで災害で明らかになった数々の課題や教訓を決して忘れることなく次の災害に生かせなければ、命を守ることができません。
 今回のNHK予算の資料には、安心、安全を守るために、防災・減災報道、緊急報道を充実し、被災地の復興を支援すると書かれておりました。
 一昨年の西日本豪雨災害の被災地では、ラジオの役割も大変大きかったという声もお聞きしております。テレビ、ラジオ、インターネット、それぞれの特性を生かして、日頃よりこの防災・減災に取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、災害からこの国民の命を守るNHKの役割とは何か、こうした災害報道の充実に向けて具体的にどのように取り組むのか、お聞きをしたいと思います。
○参考人(木田幸紀君) 令和二年度の予算、事業計画でも、安全、安心を守るため、防災・減災報道や緊急報道を充実し、被災地の復興を支援することを重点事項の一つに挙げております。
 委員御指摘のように、昨年の台風十五号や十九号の際には、停電などの影響でテレビやインターネットを見られない方々に情報をお届けするため、ラジオで被災した方々に必要なライフライン情報を放送するとともに、番組内で今知りたいことや伝えたいことを募集して内容を紹介しました。テレビやインターネットでも、自治体ごとの詳しい被害の状況やライフライン情報など、各地の放送局と本部が連携して、被災地の放送局をその他の放送局が支援するなどして地域に密着した情報を伝え続けました。
 引き続き、テレビ、ラジオ、インターネットなどそれぞれの特性を生かしながら、早めの避難の呼びかけや、被害の状況、ライフライン情報を始め、被災した方々に寄り添って生活の支援や再建に必要な情報などをきめ細かくお伝えしていきます。
 また、令和二年度は東日本大震災から十年目という節目に向けた一年になります。力強く復興を進めている姿や、教訓や課題の検証など、ニュースや番組で被災した方々に寄り添いながら様々な角度からお伝えしてまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非ともよろしくお願いしたいと思います。
 最後に、この常時同時配信サービスに関して伺います。
 今月一日よりインターネットで常時同時配信を行うこの新サービス、NHKプラスの試行が始まってからおよそ一か月が経過をしました。明日から本格的なスタートになりますけれども、この放送と通信の融合、今後の大きな可能性を秘めております。そうしたときだからこそ、民業圧迫になるのではないかとか、費用の更なる圧縮に努めるべきではないかとか、経営改革が必要ではないか、そうした課題の解消に向けて積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 その意味で、会長におかれまして、冒頭申し上げました公共放送の使命を改めて考え、新たなこの常時同時配信サービスに取り組んでいただきたいと思いますけれども、スタートに当たり、どのような姿勢で取り組むのか、最後にお聞きしたいと思います。
○参考人(前田晃伸君) お答えいたします。
 インターネットが暮らしに急速に普及をした現在、放送だけでなくインターネットも適切に活用し、視聴者の皆様に公共性の高い放送番組や情報などのコンテンツを視聴できる機会を拡大することはNHKの使命であると考えております。
 NHKプラスは、その役割を果たすための重要な手段と位置付けております。放送を見逃したときや、友人との会話やSNSで話題になった番組を見たいと思ったときに、スマートフォンなどのモバイル端末で、いつでも、どこでも、何度でも、それぞれの場所や環境、スタイルで番組を御覧いただき、日々の暮らしに一層役立てていただきたいと考えております。また、放送の視聴につながってもらえばと期待をいたしております。
 放送と通信の融合が更に進む中、放送を太い幹としつつも、インターネットを適切に活用することによりまして、信頼される情報の社会的基盤の役割を果たしてまいりたいと思います。
○山本博司君 以上で終わります。