参議院 総務委員会 第12号 令和2年4月16日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、電波法の改正案に関しまして、大臣並びに関係者の皆様にお伺いをしたいと思います。
 いよいよ今年より本格的な5Gの商用サービスが始まるということで、従来の通信事業者や端末事業者だけではなくて、あらゆるプレーヤーを巻き込んで、物やサービスがネットワークを前提とした世界に変わっていくことが予想されております。
 電波は我が国の社会経済活動になくてはならないインフラの一つでございまして、国民生活の利便性向上や経済社会の活性化のためにとても重要な役割を担っております。そうした中におきまして、限られた資源である無線周波数の時間的、空間的な最適な有効利用は、5Gサービスの今後の発展を大きく左右するためにも大変重要なことであると考えられます。
 時々刻々と変化するこの電波利用環境におきまして、利用者のニーズに応じてダイナミックに周波数の共用を可能とする仕組みに関しましては、先導する欧米においては既に一部社会導入も始まっております。今回の法改正では、我が国においても5G用の周波数を確保するために、他の無線システムと柔軟かつダイナミックに周波数を共用することが必要になってくることから、電波法上の指定法人の業務にこのダイナミック周波数共用システムの運用業務を追加することが盛り込まれております。
 そこで、この共用システムに関して伺いたいと思います。
 同一の周波数を地理的、時間的に考慮して共用するに当たりましては、これまで利用しておりました既存事業者と新たな事業者との調整、これが重要になってまいります。周波数のこの新たなサービスの提供ができるということが望ましいわけでございますけれども、だからといって既存事業者の保護、これが担保されない状況はあってはならないと思います。一定のルールの下でこのダイナミック周波数の共用システムの運用、これが進められることになると思いますけれども、運用調整どのように行っていくのか、また総務省はこの運用に当たってどのような関与を行うのか、お聞きしたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 総務省におきましては、令和三年度、来年度からの実運用に向けまして、ダイナミック周波数共用の実現に向けた必要な調査、実証を昨年度から実施をしているところでございます。
 有識者会議の提言におきましては、一次利用者の保護について十分に配慮することが適当とされておりまして、こうした仕組みにおきましては、一次利用者、すなわち既存の事業者の電波の使用を妨げない範囲で新規利用者が電波を使用することを前提として運用ルール等の検討を行っております。
 例えば、二・三ギガヘルツ帯の周波数においては、既存事業者である放送事業者の番組中継用回線を使用しない場合、すなわちマラソンなどのイベント中継がないときには携帯電話システムの使用が期待されるところでございます。他方、既存事業者が運用する場合には、新規事業者は既存事業者の運用場所や範囲などを考慮して自ら運用を停止したりあるいは電波の出力を弱めるなど、既存事業者に影響が生じることがないよう適切に対処することが必要でございます。
 総務省といたしましては、本年度の調査、実証を通じまして運用ルールの整備に向けてしっかり取り組むとともに、運用ルールを実際に運用するに当たりましては、これが適切に行われているかどうか、きちんと見てまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 このシステムにおきましては、高度な周波数共用を実現するために、様々な無線システムの電波の利用状況を正確に把握することにより、時間や場所ごとに電波の空きをリアルタイムに見付けて瞬時に判定して5Gなどに利用可能とする仕組み、これが重要でございます。
 また、混信や干渉を回避する技術、これも必要でございまして、この研究開発及び技術実証に関しましては、電波利用を活用した令和元年度の予算、また二年度の措置に予算がされております。このシステムの技術開発はどのように進めてきたのか、また、予算に関しましてもお聞きしたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 総務省におきましては、委員御指摘のとおり、ダイナミック周波数の実現に必要な研究開発や調査、実証を昨年度から実施をしているところでございます。異なるシステム間の周波数共用技術の高度化事業として、令和元年度予算で二十四・九億円、令和二年度予算で二十七・七億円を計上しております。
 昨年度、令和元年度におきましては、研究開発の中で、ダイナミック周波数共用に必要となる空き周波数を探し出す技術や、干渉計算処理を高速に行うアルゴリズムなどの開発を行いまして、これらの技術を具備した共用システムの基本設計を行ってまいりました。
 また、調査、実証におきましては、ダイナミック周波数共用の運用ルールの検討を行いまして、そのルールの下で既存の無線システムと携帯電話システムが相互に影響なく運用できることを確認するための試験を行ってまいりました。こうした成果を踏まえまして、今年度におきましては、ダイナミック周波数共用システムを構築し、その運用が円滑に行えるよう、関係者立会いの下、東京都内でフィールド実証を行っていくこととしております。
 総務省といたしまして、令和三年度からの実運用に向けて、こうしたフィールド実証を含め、着実に準備を進めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 このシステムの運用につきましては、指定法人である電波有効利用促進センター、これが実施することになっておりまして、一般社団法人電波産業会が指定をされております。
 システムの運用に当たりましては、電波有効利用成長戦略懇談会、令和元年度のフォローアップ会合におきましての追加提言の中にこのようにございます。「システムの運用主体については、例えば、電波法に基づき公的機関として国の監督を受ける者とするなど、公平中立的な業務運営や、秘密保持を確実に実施できる機関とすることが適当である。」と、こういう提言がなされております。
 これから、あらゆる物やサービス、これがネットワークにつながっていくことを考えますと、この中立性、独立性ということは大変大事な視点であると思います。
 そこで、この指定法人の中立性、独立性の担保、これはどのようになっているのか、また、この法人への国の指導監督の在り方に関しましてもお聞きをしたいと思います。
○政府参考人(谷脇康彦君) お答え申し上げます。
 ダイナミック周波数共用システムの運用に当たりましては、一般に公開されていない既存免許人の無線局に関する詳細情報、例えば出力やアンテナの指向性などを利用する必要がございます。委員から御紹介ございました有識者会議の提言を踏まえまして、今般、このシステムの運用については、電波法に基づきまして、国の監督を受ける電波有効利用促進センターに行わせることとしております。
 具体的には、電波法上、電波有効利用促進センターの役職員には秘密保持義務を課すこととしておりまして、業務規程につきましても総務大臣の認可を受けることとなっております。また、電波有効利用促進センターには、必要に応じ、報告徴収や立入検査を行うことが可能でございます。
 こうした枠組みによりまして、電波有効利用促進センターが運用する際の中立性、独立性ということをしっかりと確保してまいりたいと考えております。
○山本博司君 それでは、大臣に伺いたいと思います。
 この電波割当て制度の改革につきましては、安倍総理が以前、大変固い岩盤と、こう比喩表現をしておられましたけれども、規制改革の重要事項の一つとして位置付けられております。ソサエティー五・〇の実現を目指す上でますます増大するこの電波の利用ニーズに対応すること、とても重要であると考えます。この法改正も技術革新や新しい需要への機動的な対応の一環であると理解しております。
 電波は国民共有の財産でございまして、電波利用をめぐる状況も絶えず変化をしております。技術革新の状況なども踏まえつつ、この電波の更なる有効利用に向けて、引き続き、大臣、不断の改革をしていただきたいと思いますけれども、5Gサービスのスタートに当たり、電波の有効利用に向けた大臣の認識を伺います。
○国務大臣(高市早苗君) 様々な分野で電波利用が進展する中で、5Gなど新たな無線システムに対する需要拡大が予想されておりまして、電波の一層の有効利用というものは求められております。また、山本委員が御指摘くださいましたように、電波は有限希少な国民共有の財産でございますので、これまでも周波数割当て制度の見直しなど、不断の改革に取り組んでまいりました。
 今の日本が現下の大変厳しい状況からV字回復をし、国際競争力を一層強化していくためにも、ダイナミック周波数の共用の活用も含めた電波の有効利用を通じて、様々な分野において5Gを戦略的に推進してまいります。
○山本博司君 最後に、4K、8Kの普及に関して大臣に伺いたいと思います。
 東京オリンピック・パラリンピックが一年延期になりました。その意味では、この4K、8K放送も影響を免れないと思いますけれども、大事な4K、8Kの普及に関しまして、大臣の決意を最後に伺いたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 新4K8K衛星放送を一層普及していくためには、受信機を始めとする受信環境整備とコンテンツの充実のハード、ソフト両面での取組を一体的に進めることが重要でございます。ハード面につきましては、総務省で、受信環境整備に向けて、衛星放送用受信環境整備事業、それからケーブルテレビネットワークの光化促進に係る補助事業を行っております。ソフト面では、これまで、二〇二〇年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を見据えて周知、広報に取り組んでまいりました。
 残念なことに大会が一年延期となりましたけれども、しかし、この大会を一つの大きな契機として普及を加速させていくことが大事であるということに変わりはないと思いますので、総務省としては、関係事業者、団体と連携を図りつつ、環境変化に合わせた有効な周知の在り方など、今後の取組についてしっかり検討してまいります。
○山本博司君 質問を終わります。