<これまでの活動記録>

「かもな」の三橋園長から生産状況の説明を受ける山本(博)ワーキングチーム座長(左)=徳島市
授産施設などで働く障がい者の工賃を引き上げ、経済的自立を目的とする「工賃倍増5カ年計画」が今年度で終了する。この間、工賃を大幅に伸ばした成功事例もあり、今後の障がい者就労支援の充実が一層期待されている。公明党障がい者物品等優先購入法検討ワーキングチーム(WT)の山本博司座長(参院議員)と共に、代表的な成功事例を持つ徳島県の施設を訪ね、今後の支援の在り方などを探った。

独自商品開発、ブランド化など創意工夫が実を結ぶ

「障がい者の苦労が、実を結んだ結果だと思います」。徳島県の社会福祉法人「共生会」の原宗一理事長は、同会が運営する障がい者就労支援センター「かがやき」(阿波市)が製造する手作り菓子が高く評価され、昨年11月から東京の大手デパートのインターネットサイトで販売されていることを感慨深い様子で語った。

「かがやき」は、施設で栽培した野菜を素材にした弁当や菓子など、独自商品の製造に取り組み、売り上げを伸ばしてきた。昨年度の1人当たりの平均工賃(月額)は、3万4417円と県内でも上位だ。今年4月には製造と販売を一体化させた「食彩工房かがやき」もオープンする。デパートからの大量注文に対応できるよう最新鋭の機械が設置され、一層の売り上げ増が期待されている。


一方、徳島市の社会就労センター「かもな」(三橋一巳園長)は、パン製造販売部門が急成長を続けており、昨年度の平均工賃は3万9267円に上る。

特に、県内大手のショッピングモールから店舗内の一部を無償提供され、週末・祝日限定で出張販売を始めたことが急成長の要因の一つで、大勢の買い物客で賑わう“激戦区”にあって「かもな」のパンが民間業者の商品に引けを取らないことが証明された形だ。三橋園長は、「工賃アップは、施設で働く障がい者にとって大きな喜びです。障がい者が経済的に自立した生活ができるよう、今後も努力していきたい」と語っている。

障害者自立支援法の施行(2006年度)に伴い、07年度から始まった工賃倍増5カ年計画は、障がい者が働く施設のうち、「かがやき」や「かもな」などの就労継続支援B型事業所(同法で創設された新体系の一つで、一般就労が困難な障がい者に就労機会を提供する施設)および同法施行前の授産施設、小規模通所授産施設(今年度中にB型事業所など新体系へ移行が完了する施設)を対象に、施設運営に民間の経営手法を取り入れることで、魅力ある商品開発や市場拡大を実現して平均工賃の引き上げを図る事業だ。都道府県が実施主体となって倍増計画を作成し、各施設の取り組みを支援していくもので、主な事業として、施設への経営コンサルタント派遣事業、複数の施設が共同して品質管理などを行う共同受注窓口の整備がある。

5カ年計画では毎年、各都道府県の平均工賃が公表されるが、昨年度の徳島県の平均工賃は、1万7426円で全国第2位になるなど、大幅に伸びた。「かがやき」や「かもな」などの取り組みが、その原動力になっている。

また、こうした各施設ごとの創意工夫もさることながら、複数施設が協力した取り組みも、徳島県の大きな特徴だ。09年に設立されたNPO法人「とくしま障害者授産支援協議会」は県内30施設が加盟し、統一ブランド「awanowa」を立ち上げた。各施設の優れた商品をブランド認定することで付加価値を高め、イメージアップと販売促進を図るとともに、県産品を使ったスイーツなどの共同開発も行っている。


全国1位は福井県

なお、平均工賃が1万7918円で、09年度から2年連続1位を誇るのが福井県だ。「景気に左右されることのない、独自商品の開発販売へ転換を図った」(同県障害福祉課担当者)というように、勝山市にある「九頭竜ワークショップ」では、各家庭で日用品として使用される食品保存用のプラスチック製容器の製造を主力の一つに据え、今年度、開始当初に目標として掲げた平均工賃3万円を突破している。

省庁の優先購入促進へ
ハート購入法の制定めざす 党ワーキングチーム

5カ年計画の取り組みを参考に、来年度からは3年計画で「工賃向上計画」が実施される。ポイントは、地域で障がい者を支える体制を充実させるため、市町村単位での支援を促すほか、障がい者の労働形態の多様化に伴い、工賃算出の際に、これまでの「月額」に加え、「時間額」も選択できるようにするなど、より実態に即した計画実施が期待されている。

厚生労働省障害福祉課の関口彰課長補佐は、「都道府県や施設によって差はあるが、5カ年計画で平均工賃は確実に上昇してきた。来年度からの向上計画で今後も継続して引き上げを実現できるよう取り組む」と語っている。

工賃引き上げについては、公明党も積極的に推進している。特に、山本氏が座長を務める党障がい者物品等優先購入法検討ワーキングチームは、各省庁に対して障がい者が生産する物品の優先購入などを促す「ハート購入法案」の成立をめざしている。視察を終えた山本氏は、「同法制定に力を入れるとともに、(倍増計画で効果のあった)共同受注窓口が全都道府県に設置されるよう、障がい者が自立して生活できる環境整備に取り組む」と述べている。

 (2012年3月5日付 公明新聞より転載)