高次脳機能障害 特性の理解や支援促進に期待
高次脳機能障害 特性の理解や支援促進に期待
脳卒中や交通事故などで脳の一部が損傷し、思考や記憶、言語などの脳機能に支障が出る「高次脳機能障害」で苦しんでいる人たちがいる。その特性が広く認識され、社会全体で支援を一層進める契機としたい。
高次脳機能障害に関する社会の理解促進や当事者・家族への支援強化をめざす「高次脳機能障害者支援法」(議員立法)が、16日の参院本会議で成立した。長年にわたり当事者らの切実な声を聴き、超党派議員連盟の立ち上げを後押しするなど、法整備に尽力してきたのが公明党である。
厚生労働省によると、高次脳機能障害と診断された人は2022年12月現在で全国に約23万人いると推計されている。具体的な症状としては、新しい出来事を覚えられない、集中力が続かない、感情のコントロールがうまくできないなど、さまざまだ。脳機能の障害は外見上は分かりにくいため、周囲の人から誤解されやすい側面がある。
例えば、「会話がかみ合わない」「怠けている」と受け取られてしまうことで、当事者は支援を求めにくくなり、結果として学業や仕事などを断念することもあるという。周囲の適切な理解と対応が重要であり、支援法では当事者の自立と社会参加の確保を基本理念に掲げ、国と自治体に支援策を講じる責務を規定した。
重要なのは、当事者がどこに住んでいても、切れ目なく支援を受けられることである。当事者や家族からの相談などに応じる支援拠点は全国に約120カ所あるが、取り組みや予算の地域差は大きく、十分とは言えない。
このため支援法では、支援の中核的な役割を担う「支援センター」を都道府県に設置するとともに、市区町村を含む自治体に対し支援策の実施状況の公表を努力義務とした。法律が根拠となり、支援策や予算の拡充が期待されよう。
また、当事者の介護を担う家族が、うつ状態に陥るケースも少なくない。同センターは支援が必要な家族を関係機関につなぐ役割も発揮してもらいたい。
2025/12/17 公明新聞 2面


