「気付きにくい障がい」に光/社会全体で理解広がる契機に

「気付きにくい障がい」に光/社会全体で理解広がる契機に

 「気付きにくい障がい」と呼ばれる高次脳機能障害。その当事者らの支援法が、超党派の議員立法によって先の臨時国会で成立した【表参照】。誤解や偏見に傷つき、辛い思いをしてきた患者や家族にとって待ちに待った法律だ。関係者の声とともに“政治の谷間”に光を当て続けた公明党の闘いを紹介する。

 「まだ信じられない。感謝でいっぱいです」

 今月16日、参院本会議場の傍聴席で全会一致での支援法成立を見届けたNPO法人「日本高次脳機能障害友の会」(以下、友の会)の片岡保憲理事長は大粒の涙を流した。

 片岡理事長の弟は高校生の時にバイク事故で重傷を負い、高次脳機能障害となった。「退院後の弟は、感情がコントロールできずに、まるで性格が変わったようだった」

 理学療法士の資格を持つ片岡理事長は、リハビリを通して弟を元に戻そうと懸命に関わった。しかし、どこか不満そうな表情の弟に接するうちに気付いたという。「変えなければいけないのは弟なのか。今のままでも幸せを感じながら生きていけるよう、社会の方を変えるべきではないのか」

 そこから10年以上にわたって法整備の必要性を訴え、走り続けてきた。

■誰も分かってくれず

 友の会前理事長(現・監事)の古謝由美さんと息子の宏二さんは「支援法をきっかけに、社会全体に理解が広がってほしい」と期待を寄せる。

 宏二さんは高校生の時、自転車で走行中に右折車にはねられ、半年間入院する大事故に遭った。退院後、右上下肢のまひが残っていたため養護学校に移った。

 他の生徒たちは四肢欠損などの身体障がいがあったが、宏二さんは外見上は健常者と変わらない。ある時、目の不自由な生徒から「どこが悪いの?」と聞かれた。「さっき起きたことも、思い出せない。それを誰も分かってくれない」と答えると、「かわいそうだね」と優しく言葉を掛けてくれた。宏二さんは「初めて自分の心の痛みを理解してもらえた」と感じたという。

 養護学校を卒業後、宏二さんは工場に就職した。仕事の手順を丁寧にノートに書いたが、そのノートの存在を忘れて使うことができなかった。それでも職場の理解があり、10年近く働けた。

 体調を崩して転職した次の職場では、清掃の仕事に従事した。しかし高次脳機能障害の特性が十分理解されず、退職を余儀なくされたという。

■不登校の原因にも

 「これまで子どもの支援は後回しになってきた」と語るのは、高次脳機能障害の子どもを持つ家族の会「ハイリハキッズ」の中村千穂代表だ。息子が3歳の時に食中毒にかかり、脳に障がいが残った。

 高次脳機能障害の子どもは、疲れやすかったり、感情のコントロールが難しいため、周囲から「甘えている」「怠けている」と誤解されやすい。受傷・発症前との違いに苦しみ、友達関係や勉強につまずき、不登校となるケースが増えているという。

 支援法には、個別の教育支援計画や指導計画の作成について明記された。中村代表は、これを評価し、「きめ細かな支援が教育現場でも広がってほしい」と願っている。

■回復引き出す環境を(専門家)

 長年にわたって高次脳機能障害者のリハビリに取り組み、支援法制定に尽力した、渡邉修・東京慈恵会医科大学客員教授(友の会顧問)は「現代社会において、脳機能の障害は身体障がいと同格か、それ以上に重い意味を持つ。しかし、医療関係者ですら高次脳機能障害を十分理解していない現状がある」と指摘する。

 今後の課題として、「脳神経は、死ぬまでつながり回復しようとする性質がある。退院後、どういった環境に身を置くかでその度合いは変わる。本人の可能性を最大限引き出していける地域のネットワークを築くことが重要だ」と強調する。

■公明、合意形成をリード/「寄り添って動いてくれた」

 「ずっと私たちに寄り添って、最後まで一緒に動いてくれた」(片岡理事長)。支援法成立後、関係者は口々に公明党「高次脳機能障害等支援対策プロジェクトチーム(PT)」の山本博司座長(前参院議員)らへの感謝の言葉を述べていた。

 公明党は1998年に井上義久衆院議員(現・常任顧問)が政府に質問主意書を出したのを皮切りに、高次脳機能障害者の支援充実に一貫して尽力。2001年度から坂口力厚労相(公明党)の下でモデル事業が始まり、06年度に普及事業として全国展開した。だが支援の地域格差が大きく、社会に正しい理解が広がる状況には至ってなかった。

 そこで公明党は18年にPTを設置。ヒアリングや視察を重ね、23年に自民党との勉強会を立ち上げた。今年4月に設立された超党派の議員連盟では、幹事長に就いた公明党の山本PT座長が、法案提出へ各党との合意形成に奔走した。

 自治体の取り組みも、今後さらに大事になる。党地方議会局長の中川康洋衆院議員は「ここからがスタートだ。法律が機能するよう、地方議会でも公明党が先頭に立って支援充実を訴えていきたい」と語った。

2025/12/25 公明新聞 3面