鉄道・バスで導入進む障がい者用ICカード

手帳確認の手間を省く
関西に続き関東圏は22年度後半から

お金をチャージ(前払い)してある交通系ICカードをタッチするだけで、鉄道などの改札を通過できるー。こうした今や当たり前になっている光景が、障がい者にとっては当たり前になっていない。運賃の障がい者割引を受けるには、毎回、窓口で障害者手帳を提示し、駅員などに確認してもらう必要がある事業者が多いからだ。現状の打開に向け、障がい者用ICカードの導入が始まっている。

冒を受けるために有人改札を探す必要がなくなり、とても便利になった」。大阪府に住む視覚障がい者の三原ひろみさん(48)は、障がい者用ICカードが利用できるようになったことを、こう歓迎する。
三原さんが利用するカードは、関西圏を中心とする63の私鉄・バス事業者で構成する「スルッとKANSAI協議会」が2017年4月から発行しているもの。自動改札などでタッチすれば、割引が適用された運賃が支払われる。毎回の駅員らによる確認は不要だ。
発行対象は、身体障がい者や知的障がい者(ともに第1種)と、その介護者。本人と介護者が一緒に利用することが条件だが、バスや一部鉄道事業者では障がい者単独でも利用可能だ。
関東圏でも同様の取り組みが、赤羽一嘉前国土交通相(公明党)や公明党のリードで、22年度後半に始まる。鉄道・バス事業者69社が加盟する「関東ICカード相互利用協議会」が昨年6月、交通系ICカード「Suica」と「PASMO」で、障がい者割引が適用される乗客向けの新サービスを22年度後半をめどに開始すると発表した。
障害者用ICカード発行など交通バリアフリーの充実へ公明党は、岡本三成衆院議員、山本博司、竹谷とし子(参院選予定候補)、石川ひろたか(大阪選挙区)の各参院議員らが19年11月、DPI(障害者インターナショナル)日本会議など4団体と共に当時の赤羽国交相に要請するなど、政府に繰り返し申し入れてきた。
昨年4月の参院決算委員会では、塩田博昭氏が赤羽国交相から、全国的な同カードの発行へ「できないということはあり得ない、との強い姿勢で具体的に指示したい」との答弁を得た。
その結果、昨年6月11日には、赤羽国交相が省内各局に対し、障がい者用ICカード導入など4項目の大臣指示を行うなど、推進する動きが加速。昨年12月成立の21年度補正予算には、導入に必要なシステム整備費用の支援が盛り込まれた。

特急車両の車いす用スペース確保も前進

昨年6月の赤羽国交相による大臣指示では、障がい者用ICカードの導入のほかに、▽特急車両における車いす用フリースペースの導入促進▽ウェプによる障がい者用乗車船券などの予約・決済の実現(マイナポータルとの連携を含む)▽精神障がい者割引の導入促進ーも打ち出され、取り
組みが進んでいる。このうち、特急車両の車いすスペースについて、国交省は1月31日、春をめどにスペース数に関する基準を改正し、新幹線と同水準にすると発表した。
現行の基準では、1編成につき車いすスペースが原則2カ所以上必要で、3両編成以下の列車では1カ所以上となっている。
改正後は、1編成の座席数が5OO~S1000席の場合は4カ所以上、500席末満は3カ所以上とし、100席未満の列車など構造上の制約がある場合など
は、例外として2カ所も認める。
新幹線では20年10月に基準が改正。21年7月以降に導入される車両から新基準が適用されている。