参議院 財政金融委員会 第4号 令和4年3月16日

第208回国会 参議院 財政金融委員会 第4号 令和4年3月16日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は委嘱審査ということでございますので、コロナ禍における中小企業の支援策に関しまして質問をいたしたいと思います。
 我が国で最初に感染が確認されましたのが令和二年一月でございましたので、既に二年が経過している状況でございます。コロナ禍におきまして、公庫や民間における無利子無担保の融資によりまして、我が国を挙げて様々な資金繰り対策行ってきているところでございます。これまで何とか事業を継続をしてまいりましたけれども、新型コロナの流行が長期化するとともに、今、年明け以降では、変異株、オミクロン株の感染が急拡大をしておりまして、飲食・宿泊業を中心に地域経済は大変苦境に立たされております。そうした中、地域の実情に応じたきめ細やかな融資の実行、これが求められている次第でございます。また、足下では、原油価格の高騰の影響を受けまして、経済環境、更に厳しさを増しております。
 そこで、まず、この二年に及ぶ間の公庫等の政府系金融機関の資金繰りの対応状況、確認をしたいと思います。
○政府参考人(小野平八郎君) お答えいたします。
 新型コロナの影響を受けました中小・小規模事業者の事業継続のため、資金繰り支援、これをしっかりやっていくということは極めて重要であると考えております。
 今委員お尋ねの実質無利子無担保融資等でございますけれども、日本政策金融公庫等の政府系金融機関が行っております数字で申し上げますと、本年二月末時点で、累計で約九十九万件、金額にして約十八兆円の融資を決定いたしているというところでございます。
 さらに、この三月四日には、経済産業省、金融庁、財務省の連名で中小企業活性化パッケージというものを公表いたしまして、その中で、日本公庫等による実質無利子無担保融資等を融資期間の延長した上で本年六月まで継続するということといたしております。
 こうした取組を通じまして、引き続き、事業者の資金繰り支援に万全を期してまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。是非とも支援の継続をお願いをしたいと思います。
 その上で、この融資の返済につきまして、先日も、四国の愛媛県や香川県などの旅館業の団体の皆様からの御要望を伺ってまいりました。
 今、日本政策金融公庫、また商工中金の融資によりまして、経営が落ち着く事業者がいる一方で、融資が膨らんで返済が経営を圧迫している事業者もいるということでございまして、このコロナの借入れにつきましては、返済期が到来して困っているケース、これも多くなってきております。据置期間につきましては一年以内の方が五割以上ということで、既に返済が始まっている方も大勢おられるわけでございます。しかしながら、今コロナ禍が大変長く、長引いておりますから、経済情勢が改善せず返済できないんだという、そういう声も聞いております。
 中小企業者に対する返済条件の変更を含む資金繰り支援等につきましては、個々の実情に応じて柔軟な対応、これが必要であるかと思います。一年程度の短期間を前提としている特定リスケにつきましても、中長期をにらんだ制度に組み替えるなど、返済猶予に対しまして柔軟な対応、これが必要でないかと思いますけれども、副大臣の認識をお伺いします。
○副大臣(大家敏志君) これまで政府系金融機関に対しては、既存融資の返済猶予などに柔軟に対応するよう財務省として累次にわたって要請しており、その結果、政府系金融機関の条件変更の応諾率は約九九・七%と、多くの事業者の返済負担軽減につながっております。また、年度末に向けて資金需要が高まることなどを踏まえ、三月七日に鈴木大臣から直接、政府系金融機関を含む金融機関に対し、返済期間等の長期の延長等を積極的に提案するなど、引き続き柔軟な対応に努めていただくようお願いをさせていただき、続いて、三月八日には同様の趣旨を盛り込んだ要請を政府系金融機関等に対して発出をしております。
 財務省としては、引き続き、コロナ禍において厳しい状況に置かれている事業者の皆様の実情に応じ、しっかりと資金繰り支援に取り組んでまいりたいと思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 こうした中で、コロナ禍で財務状況が悪化した中小企業などを支援するために、政府系金融機関が設けました資本性劣後ローン、こういう融資制度を利用する動き、これも広がっております。政府系の金融機関が資金繰りを助けることで民間金融機関が中小企業への融資をしやすくなる呼び水効果を狙っておりまして、打撃を受けた中小企業の命綱となっている次第でございます。
 この資本性劣後ローンに関しましては、企業が倒産した場合に返済する順位が低い借入れでございまして、借入金は株式発行で調達した自己資本と同等とみなすことが可能でございます。これから経済活動の正常化が進むとしても、これまでに蓄積された過剰債務、これが原因で資金調達ができなければ、こうした中小企業の経営再建、これはおぼつかなくなってしまう次第でございます。
 こうした企業の財務改善につながるためにも、今後も利用が進むと考えられますけれども、この資本性劣後ローン、対応状況、報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(小野平八郎君) お答えいたします。
 資本性劣後ローンにつきましては、委員御指摘のとおり、事業再構築等を志向する事業者の財務基盤を強化し、民間金融機関の融資を呼び込むといった効果が期待されると考えております。
 政府系金融機関による資本性劣後ローンにつきましては、新型コロナの発生以来、中小企業向けの実績といたしまして、今年二月末時点で約六千百件、金額にいたしまして約八千八百億円の融資を決定いたしているところでございます。
 また、先ほども申し上げました中小企業活性化パッケージの中で、日本公庫等による資本性劣後ローン、これを来年度末まで継続するということにいたしております。その上で、政府といたしまして、三月八日に政府系金融機関に対しましてこの資本性劣後ローンの更なる活用等につきまして要請も行っているということでございます。
 引き続き、資本性劣後ローンの活用を含め、支援に万全を期してまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 次に、地域の民間金融機関への支援に関して伺いたいと思います。
 地方銀行、また信用金庫などは、新型コロナウイルス感染拡大によりまして、取引先の業績悪化、さらには国内外の金利上昇による収益悪化などで先行きへの警戒感、これが強まっている次第でございます。コロナ禍で融資や手数料収入、これが伸びているのも事実でございますけれども、収益を大きく改善させるものとはまだなっておりません。
 地域金融機関は地域経済の発展の下支えをしておりまして、地域のことを一番よく知っている存在でございます。地方創生、地方活性化においても欠かせない存在がこの地域金融機関でございます。一昨年十一月に施行されました独占禁止法特例法によりまして、合併によって経営基盤を強化する事例も増えてきてはおります。
 地域のこうした民間金融機関の連携支援が重要であると思いますけれども、金融庁、副大臣におかれまして、この地域金融機関の置かれている状況、どのように認識されているでしょうか。
○副大臣(黄川田仁志君) 御質問ありがとうございます。
 令和三年九月期決算や自己資本比率等を見ても、地域銀行については総じて充実した財務基盤を有しておりまして、金融システムは総体として安定していると考えております。
 しかしながら、地銀、地域銀行は人口減少など構造的な厳しい経営環境が続いておりますので、将来にわたっては事業者支援や地域経済に貢献できるよう、またコロナ禍においても経営改革の手綱を緩めることなく、経営基盤の強化に取り組んでいく必要があると考えております。
 金融庁といたしましては、新型コロナの長期化による影響や足下のグローバルな金融資本市場の動向を注視しつつ、引き続き、地銀、地域銀行が将来を見据えた経営改革に取り組むよう対話を重ねるなど、その健全性を維持し、金融システムの安定を確保することに万全を期してまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非とも支援をよろしくお願いを申し上げます。
 次に、国税納付の猶予制度について伺います。
 本来ならば、国税をその納期限までに納付していない場合は遅滞税が掛かったり、財産の差押えなどの滞納処分を受けることがございます。ただし、国税を一度に納付することによりまして事業の継続や生活が困難となるとき、また災害時などは、税務署に申請することによりまして、最大一年間、財産の換価、売却や差押えなどの猶予が認められるものでございます。
 コロナ禍におきましては大変有効な制度でございますけれども、この二年間を通じて、これまでの猶予制度の活用状況、報告いただきたいと思います。
○政府参考人(重藤哲郎君) お答えいたします。
 国税庁におきましては、令和三年二月一日までに納期限が到来した国税につきまして、新型コロナウイルス感染症の影響により納税が困難な納税者からの申請に基づき、特例猶予、納税の猶予の制度の特例を適用してまいりました。この特例猶予の適用状況は、令和二年四月から令和三年二月までの間で三十二万件、一兆五千百七十六億円でございます。納税が困難な方に幅広く利用していただいたものと認識をしております。
 この特例猶予を受けられました方のうち、令和三年十一月末までに猶予期限を迎えたものが三十一万件、一兆四千七百七十七億円ございます。これらにつきましては、一月時点で集計した数字ですが、そのうちの二十三万件、七五%、金額でいいますと一兆三千三百六十九億円、これは九〇・五%に相当しますが、は既に完結をしております。また、既存の猶予制度の適用を受けたものが五万件、八百八十三億円ございます。今申し上げました完結したものと既存の猶予制度を適用したもので合わせまして件数、税額共に期限が到来したものの約九割を占めております。残りの三万件、五百二十六億円につきましては、その時点で引き続き猶予の審査や納付の相談などを行っている状況ということでございます。
 国税庁としましては、新型コロナの影響を受けた納付が困難な方に対しては、個々の実情を十分に伺いながら、適切かつ丁寧に対応してまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この納付の猶予につきましても、一年間の猶予だけではなくて、再延長、これを求める声もあるわけでございまして、この事業継続には猶予が必要だということをそれぞれの事案ごとに精査をしていただき、是非とも検討いただきたいと思いますけれども、見解を伺いたいと思います。
○副大臣(大家敏志君) 山本先生から、コロナの影響から回復できていない事業者の皆さんの国税の猶予についての御質問をいただきました。
 特例猶予の猶予期間は一年以内とされていますが、その適用終了後も納付が難しい場合には、納税者の状況に応じ、既存の猶予制度に基づき、原則担保不要で更なる猶予や分割納付も可能であります。また、既存の制度に基づく猶予についても、猶予期間内に納付することが困難な場合には更に猶予期間を延長することも可能となっております。
 新型コロナの影響により納税が困難な納税者につきましては、国税当局において、個々の実情に十分お伺いをしながら、適切かつ丁寧に対応していくことが本当に重要であると考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 やはり、丁寧な形での事案ごとの対応をお願いしたいと思います。
 次に、酒類の業界への支援策について伺います。
 第六波の影響など、まん延防止等重点措置の適用で飲食店に時短要請を求める地域もある中で、飲食店などと取引がある酒の販売店、酒造などの売上げが落ち込んでおります。私も、高松や岡山の酒屋さんなど、大変厳しい声を聞いている次第でございます。政府としては、事業復活支援金や雇用調整助成金の特例などによって支援を行っておりますけれども、このウイズコロナ時代を見据えれば、外食や旅行の消費に加えまして、家庭内需要、いわゆる家飲みの拡大を図る必要があるほか、こうした需要の使途を踏まえた酒類業界全体の創意工夫を促すことも重要であると思う次第でございます。
 財務省、国税庁は、酒類業を所管する立場から、経産省と連携しながら、こうした家庭内需要を含めた国内消費の喚起やウイズコロナ時代も見据えた事業者の前向きな取組を積極的に支援をお願いをしたいと思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
○政府参考人(重藤哲郎君) お答えいたします。
 新型コロナウイルス感染症の影響による外食産業の落ち込みに伴い、酒類の需要が減退し、酒類業界が厳しい状況にあるということは我々も認識をしております。
 こうした状況に対応するため、国税庁におきましては、令和三年度補正予算において、新市場開拓支援事業費補助金、我々、フロンティア補助金と言っておりますが、これを八億円計上し、新型コロナウイルス感染症の拡大の影響によって顕在化した課題への対応を含め、事業者の意欲的な取組を支援しているほか、酒類の消費が減少していることを踏まえ、日本産酒類の販路拡大や消費喚起に向けた各種イベントや情報発信を支援するための費用として五・五億円を計上しておりまして、現在、その参加事業者を募集しているところでございます。
 こうした支援によりまして、国税庁としても、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて厳しい状況にある酒類業界の前向きな取組を後押ししてまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 そうした支援も含めまして、国産酒類の輸出促進ということも大変大事だと思う次第でございます。
 今、政府は、農林水産物・食品の輸出につきまして、二〇三〇年に五兆円という目標を掲げておりまして、昨年、二〇二一年には一兆円の達成をしたということを承知しております。このうち酒類は約一割の千百四十七億円を占めておりまして、二〇二〇年に比べまして日本酒はプラス六六%、ウイスキーはプラス七〇%増加するなど、非常に伸びている次第でございます。
 こうした輸出促進、クールジャパンの戦略の一環としても重要でございます。この点、いかがでしょうか。
○副大臣(大家敏志君) これもまた山本先生の酒類業界を応援する立場からの御質問であると認識をしております。
 農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略では、農林水産物・食品の輸出額を、先生も今申されましたけれども、二〇二五年度までに二兆円、三〇年度までに五兆円とする目標に加えて、酒類、酒類については、清酒、ウイスキー、本格焼酎・泡盛の三品目を輸出重点品目とし、品目ごとのターゲット国、輸出目標等を定めております。
 国税庁としては、この戦略を踏まえ、重点三品目を中心として日本産酒類の一層の輸出拡大を図るため、販売拡大や認知度向上等に積極的に取り組んでおります。具体的には、海外販路拡大に向けた取組として、オンラインを含む商談会、日本酒類の促進コンソーシアム、コーディネーター、この三事業を一体として実施する等々、努力を続けているところであります。
 引き続き、関係省庁とも連携をして、一層の輸出拡大に取り組んでまいりたいと思います。
○委員長(豊田俊郎君) 時間が参りましたので、質問をおまとめください。
○山本博司君 はい。
 最後に鈴木大臣に、この中小企業に対する支援、まとめて簡潔に、よろしくお願いしたいと思います。
○国務大臣(鈴木俊一君) 新型コロナウイルスが拡大する中で、中小企業を中心に大変に困難に陥っている事業者の方がたくさんおられると思います。そういう中で、今般公表しました中小企業活性化パッケージ等を通じまして、各省庁とも連携をしながら、全力を挙げてこうした中小企業活性、この中小企業、困っている事業者に対する手当てをしてまいりたいと思っております。
○山本博司君 以上で終わります。ありがとうございました。