参議院 総務委員会 第7号 平成28年11月24日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、今回の法律案に関しまして、大臣始め関係省庁にお伺いをしたいと思います。
 我が国は現在少子化が進行しておりまして、人口減少時代を迎えております。少子化の急速な進行は、労働力の人口の減少、地域社会の活力の低下など社会経済に深刻な影響を与えております。一方で、子供を産み育てて家庭生活を豊かに過ごしたいと願う人々は多いにもかかわらず、こうした人々の希望が実現しにくい状況が見られます。持続可能で安心ができる社会をつくるためには、就労と結婚、出産、子育て、あるいは就労と介護、この二者択一構造を解消し、仕事と生活の調和、ワーク・ライフ・バランスを実現することが必要不可欠でございます。
 この法律案は、民間及び人事院勧告等を踏まえた国家公務員に係る規定の改正内容に準じて、平成二十九年一月一日から施行できるよう、地方公務員の育児支援、介護支援に係る規定の改正を行う内容となっておりまして、この改正を機に、働きながら育児や介護がしやすい環境整備を更に進める必要があると思います。
 そこで、男性の育児休業取得について伺いたいと思います。
 政府は、第四次男女共同参画基本計画の中で二〇一六年度から五年間の目標を定めており、計画決定当時、民間企業では二・三%、国家公務員では三・一%、地方公務員では一・五%にとどまる男性のこの育児休業取得率、これを二〇二〇年までに一三%に引き上げると、こうしているわけでございます。この男性の育児休業の取得に関しましては、安倍政権が掲げる一億総活躍社会の実現に向けて子育てのしやすい環境づくりを目指す、その意味では大変重要な政策でございます。しかし、まだまだこれは道半ばでございまして、具体的な展開が求められております。
 そうした中で、人事院は九月十三日に、二〇一五年度の公務員の育児休業取得状況、これを発表いたしました。妻の出産に伴って育休を取った男性の割合、これが前年比四ポイント増の九・五%ということで、これは一九九二年度からこの育休が制度化されて以降、最高を記録したということでございます。これは大変大きな変化でございまして、この意識変革の新たな兆しであると私は期待しているところでございます。
 そこで、今日、人事院に来ていただいておりますけれども、この調査結果の内容と国家公務員の男性の育児休業率が向上した理由、また今後の目標について御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(中山隆志君) お答え申し上げます。
 先生御指摘のとおり、平成二十七年度における一般職の国家公務員に対する調査によりますと、男性職員の育児休業取得率は前年度の五・五%から九・五%に四ポイント増加しているところでございます。
 こうした男性国家公務員の育児休業取得率の上昇には様々な要因があると思われますが、職員本人はもとより、上司なども含めた職場全体の意識が変わってきているのではないか、意識改革の取組の効果が上がってきているのではないかというふうに私どもとしては考えております。
 具体的に人事院の取組について御紹介を申し上げますと、まず各府省に対し利用可能な制度を男性職員に改めて周知すること、あるいはこれらの制度の活用を幹部職員から働きかけることなどを要請しております。さらに、今年の一月にはワーク・ライフ・バランス実現シンポジウムを開催するなどの取組も行っているということでございます。
 今後についてのお尋ねもございました。
 御指摘のとおり、平成三十二年までに一三%とする目標がございます。国家公務員についても政府全体として取り組んでいくことが必要だと思います。
 その中で、人事院といたしましては、例えば、来年一月から、いわゆるマタハラに加えましてパタハラについてもルールを作りまして、育児休業の制度の利用に対する上司、同僚の不適切な言動、これによる就業環境を害する行為を防止するための取組を進めていきたいと思っています。
 それから、先ほど申し上げました周知啓発といった取組についても引き続き進めていきたいと思っています。
 以上でございます。
○山本博司君 国家公務員と地方公務員、この間の育児休業の考え方ということに関しましてはどのような違いがあるのか定かではありませんけれども、今お話がありましたこうした新たな兆し、優良な事例等を、これを地方公共団体、地方自治体に対しても積極的に紹介すべきと考えます。
 また、地方自治体におきましては、特に首長の意識改革、これ大変大事であると思います。トップリーダーが常に意識をしてワーク・ライフ・バランスを呼びかけている自治体というのは大きく変わっていっているというふうに聞いておりますし、それは大変大事だと思います。
 そこで、総務省として、この地方公務員の男性育児休業率の向上に向けてどのような対策を講じているか、この点、確認をしたいと思います。
○政府参考人(高原剛君) 御答弁申し上げます。
 地方公共団体における男性職員の育児休業取得率については、第四次男女共同参画基本計画において平成三十二年で一三%が数値目標とされておりますが、実態の数字は平成二十六年で二・二%ということで、取得は進んでいない状況にございます。
 ただ、男性職員の取得率が高い地方公共団体では全国目標の一三%を超えているところもございます。このような団体では、例えば、今御紹介がありましたが、首長さんによる明確なメッセージの発出ということでイクボス宣言を行ったり、あるいは子育て応援総合サイトの創設やイクメン手帳を交付したり、あるいは子の出生予定がある職員と管理職員の面談を制度化したりといった、いろんな取組が行われております。
 総務省といたしましては、実態把握に努めつつ、このような先進事例の紹介や、先ほど御紹介がありました国家公務員の取組の紹介を通じまして、さらに地方公共団体で男性職員の育児休業取得が推進されますように取り組んでまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○山本博司君 三重県とか愛知県とかという形で事例として進んでいるということでございますけれども、しっかりこういう形で事例を含めて地方に対して訴えていただきたいと思います。
 最近では、イクボスというこの上司の存在がクローズアップされておりますけれども、現実にはなかなか認識の低い上司が存在することも少なくありません。今回の法律案には、職員の勤務環境が害されることのないように相談に応じていく、また必要な体制の整備をしていく、その他の雇用管理上必要な措置を任命権者に義務化するということをしております。やはりこれを実効性あるものにしていかなくてはならないと考えますけれども、各地方自治体に対してどのように進めていくのか、この点もお願いしたいと思います。
○政府参考人(高原剛君) 御答弁申し上げます。
 今回の改正は、従前からの育児休業等を取得したこと等を理由とする不利益取扱いの禁止に加え、上司、同僚などによる勤務環境を害する行為について防止措置を講じなければならないこととされております。
 民間労働法制では、防止措置の対象となる具体的な行為の類型について厚生労働省の指針において定められておりまして、例えば、育児休業等を申し出たことを理由として上司が解雇や人事考課における不利益な評価などを示唆する言動を行うことや、同僚が育児休業や介護休業など制度の利用を阻害するような言動を行うこと、育児休業等を利用したことを理由として上司、同僚が繰り返し嫌がらせをすることなどが対象となるとされております。あわせて、ハラスメントに対する対処方針等の明確化及びその周知啓発、相談に適切に対応するために必要な体制の整備、例えば相談窓口の設置などが示されております。
 国家公務員について、このような厚生労働省の指針を踏まえて人事院規則等で防止措置等が定められる予定と承知しておりまして、総務省としては地方公共団体にこれらを情報提供し、必要な対応がなされますよう助言を行ってまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○山本博司君 やはり地方自治体、それぞれ格差がございますので、その自治体に応じてやっぱり実効性がある、そういう助言も含めた体制をお願いをしたいと思います。
 次に、いわゆる非正規の職員として地方公共団体で働いている方々の育児休業制度につきまして、私も重ねてお聞きをしたいと思います。
 平成二十三年に改正されました地方公務員育児休業法によりまして、一般職の非常勤職員の方につきましては、一定の要件を満たす場合に条例で定めることにより育児休業の取得が可能となっております。しかし、一般職の非常勤職員の育児休業制度に係る条例を制定している団体数は、本年四月の総務省の調査によりますと、市区町村では千七百二十二団体中七百三十五団体と半数以下しか条例が設定をされておりません。地方公共団体の中でもいわゆる非正規職員の役割、大変大きくなっておりまして、こうした非正規職員の方に対しても育児休業が取得しやすい環境を早急に整備すべきと考えます。
 私も中国、四国を回っておりまして、消費者センターの相談員の方々であるとか、また図書館の司書の方であるとか、やはり正規職員に負けない、同じような仕事を非常に頑張っていらっしゃる方がたくさんいらっしゃるわけでございます。そういう中で、やはり全ての自治体で条例が制定をされて、働いている人たちが出産、育児をしやすい環境づくりに向けて努力すべきと考えるわけでございます。
 今回の法律案は、この非正規職員の方にとっても育児休業を取得しやすい環境を整えるための大変大事な改正であると私も思っておりますので、この改正を機に非正規職員の休業取得、これを進めていただきたいと思いますけれども、どのように進めるのか教えていただきたいと思います。
○政府参考人(高原剛君) 御答弁申し上げます。
 育児休業の対象となる一般職非常勤職員の要件は地方公務員育児休業法で条例に委任されているため、各地方公共団体において一般職非常勤職員が育児休業を取得するためには条例整備が必要となります。各地方公共団体において一般職非常勤職員に係る育児休業制度の整備を進めることは大変重要な課題でございます。このため、総務省としては、本年度の勤務条件等調査において特別ヒアリング項目と位置付け、重点的に要請を行うなど条例整備に向けた助言等を重ねているところであります。
 さらに、委員から御指摘いただきましたように、今般、民間労働法制や国家公務員に係る取扱いを踏まえ、育児休業の対象となる子の範囲の拡大、育児休業を取得できる一般職非常勤職員の要件緩和について地方公共団体において条例改正を行っていただく必要がございます。このため、この機会に一般職非常勤職員に係る育児休業制度を整備していない団体においては整備をしっかり行っていただきますように助言を行ってまいります。
 以上でございます。
○山本博司君 四国においても見ますと、そのアンケートの中には、予定していないと、こういうふうに答えている自治体が五団体ございました。その意味では、こうした条例が制定されていない地方公共団体に対しまして、地方議会からもしっかり、今先ほどの、それぞれ各派委員からもお話がございましたけれども、そういう超党派でやり取りをしながらも、地方議会も含めて、是非ともこれは総務省の力強い助言のフォローアップをお願いをしていただきたいということを重ねて申し上げたいと思います。
 それでは、次に進めたいと思います。
 安倍政権では現在、働き方改革、この実現をメーンテーマにしておりまして、生産性の向上、同一労働同一賃金などの課題にも取り組んでおられます。こうした中で、総務省におきましても、地方公共団体における多様な人材の働き方と、この働き方改革に関する研究会、これを議論を重ねられていると思いますけれども、この中でワーク・ライフ・バランス、これに関する議論、今どのように展開をされているのか、近々にもこの報告書を取りまとめられるということでございますけれども、検討状況をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(高原剛君) 御答弁申し上げます。
 地方公共団体においては、人事管理の在り方や勤務時間、勤務形態等の働き方について大きな変革が求められていると思っております。このため、総務省では、各地方公共団体がこの変革に適切に対応して働き方の見直し等を行うに当たって留意すべき事項について研究するため、地方公共団体における多様な人材の活躍と働き方改革に関する研究会を本年五月に設置いたしました。
 この研究会においては、ワーク・ライフ・バランスの確保も含め働き方の見直しの観点から、管理職を中心にワーク・ライフ・バランスに資する取組を行った者を適切に評価するなど労働時間の長さよりも業績や業務の効率化を評価する職場環境を実現することが必要である、柔軟で多様な勤務形態の選択肢を用意することで職員がその能力を十分に発揮し高い士気を持って効率的に勤務できることとなる、主担当となる職員以外であっても業務内容やその進捗状況を把握できるように日頃からそれらの情報を周囲の職員に共有していく体制が重要であるといった議論が行われているところであります。
 総務省においては、今年度中に取りまとめられる報告書を受けて、その内容を周知することにより各地方公共団体における人材育成や働き方の見直しの取組を促してまいりたいと考えております。
 以上でございます。
○山本博司君 大臣にお聞きをしたいと思います。
 今、総務省は他府省に先駆けてこの働き方改革を進めている役所だと自負されているということを伺っております。テレワークの利用率も霞が関では一番進んでいるということでございまして、様々な配慮をされながら実施をされているということを伺っております。
 私も大臣のコラム等拝見させていただいておりますけれども、そうした記述、たくさん書かれているということも見ている次第でございますけれども、こうした子育て期、中高年期といった人生の各段階におきまして、男性も女性も共に多様な働き方の選択を可能にする社会、これが明日への希望につながると私は考えます。
 そのためにも、長時間労働の抑制やワーク・ライフ・バランスを進めていくとともに、特に子育てや介護などの家庭の状況から時間的な制約を抱えているこの時期に働いていらっしゃる方々につきましては、仕事と家庭の両立支援ということは大変重要でございます。その意味で、この働き方改革の実現に目指しまして、大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) まず、働き方改革ということに関する認識なんですけれども、私は、男女を問わず、また体に障害をお持ちかどうか、こういったことに関わりなく、またお住まいの地域に関わりなく、できるだけ多くの方がライフステージごとの生活スタイルに応じて柔軟な働き方ができる、その力を存分に発揮できる、そういう社会をつくっていくということがとても大切だと思っています。それで、組織の経営戦略としても、これは民間又は公務員問わずこれを積極的に推進するべきだと思っております。
 総務省は、やはり霞が関の働き方改革のトップランナーたるべきだという思いを持って、特にテレワークなどのICTを活用した取組に力を入れてまいりました。指紋認証のパソコンを活用して、セキュリティーにも配慮をしながら柔軟に働ける環境づくりに今留意をしているつもりでございます。
 これは地方公共団体においても、やはり女性職員を始めとした全ての職員が活躍できる環境をしっかりとつくっていかなきゃならないと考えております。
○山本博司君 是非とも、大臣、この働き方改革の実現を目指しまして進めていただきたいと思う次第でございます。
 最後の質問になりますけれども、地方財政に関しましてゴルフ場利用税に関して伺いたいと思います。
 このゴルフ場利用税に関しましては、アクセス道路の整備や維持管理、また廃棄物処理や地すべり対策等この災害防止対策など特有の行政需要に対応していることであるとか、また、その税収の七割が所在市町村に交付金として交付しておりまして、特に財源の乏しい中山間地域の市町村にとりましては貴重な財源となっております。
 こうしたことから、厳しい地方団体の財政状況を踏まえ、現行制度を堅持すべきと考えますけれども、大臣の最後の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 今委員がまさにおっしゃっていただきましたような理由から、ゴルフ場利用税は地方税にふさわしいものであると考えております。そしてまた、重要な自主財源となっているものでございます。
 十一月十八日に公表された地方財政審議会意見におきまして、ゴルフ場利用税の廃止などゴルファーに対する減税を行うことは不適当という指摘がなされました。また、地方財政の厳しさ、地方団体から現行制度堅持への強い御要望を多くいただいております。そしてまた負担の公平性といった観点からもゴルフ場利用税については今後とも堅持すべきと考えておりますので、先生方の御支援もよろしくお願いいたします。
○山本博司君 力強い答弁いただきました。ありがとうございました。
 以上で質問を終わります。