参議院 国土交通委員会 第9号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、水防法等改正案に関しまして国土交通大臣にお伺いをしたいと思います。
 近年、洪水のほか、内水や高潮により現在の想定を超える浸水被害が多発をしております。特に都市部では深刻でございまして、今回の改正案では、考えられる最大の豪雨を前提にして浸水想定区域を指定するよう自治体に義務付けているわけでございます。さらに、想定区域で暮らす住民向けに対しましても、避難場所の位置や予想される水深を周知するハザードマップ、この作成も自治体に求めております。
 そこで、まず、現時点での全国的なハザードマップの作成状況、これはどのようになっているのか、また、新たに法律で規定されました内水や高潮による被害想定を盛り込んだ場合にスムーズに作成ができるのかどうか、このことを御報告いただきたいと思います。
○政府参考人(池内幸司君) 現行の水防法に基づく洪水ハザードマップにつきましては、平成二十六年三月末時点におきまして、作成が必要な一千三百十市町村のうち、約九七%に相当いたします一千二百七十二市町村で作成が完了しております。
 また、今回の法改正によりまして、洪水ハザードマップにつきましては、最大規模の洪水に対応したものへの変更が必要になるとともに、新たに内水及び高潮に関するハザードマップの作成が必要になります。このため、防災・安全交付金によりまして、ハザードマップの変更、作成等に対しまして財政的支援を行いますとともに、ハザードマップ作成マニュアルの整備、それから市町村職員が直営でハザードマップを作成、加工できるソフトの提供、相談窓口の設置等により技術面からも市町村を支援してまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 改正された土砂災害の防止法の際にもこれは議論になったんですけれども、危険度が高いと公表された地域住民からは、公表されると不動産の価値が下がってしまう、損害が出る、こういう懸念がございましたけれども、人命の優先、またリスクを正しく知る、こういう観点からもまたハザードマップを作成するということは意義があると思います。
 しかし、ハザードマップ作成の際、最大級の豪雨を前提にして、今回、内水、高潮による浸水被害の状況、これが示されるために、これまで浸水の地域ではないと、こういう理解をしておりました地域住民の方々、これが困惑をすることのないように、分かりやすい納得できる周知、これが必要ではないかと思います。
 各市町村におけるハザードマップの周知に関しまして、情報や技術、これをしっかり提供するということから国からの支援が必要であると思いますけれども、この点に関しまして御報告をいただきたいと思います。
○副大臣(北川イッセイ君) 委員さん御指摘のとおりでございまして、ハザードマップを作成して、これをしっかり使っていくということが非常に大事だろうというふうに思います。住民にしっかり周知をしていくということであります。このために、印刷物の配布というのはもちろんのこと、インターネットや掲示板の活用などの多様な方法によるハザードマップの周知、それから、何よりも大事なのが、やっぱり防災訓練、それから学校の防災教育などの様々な機会を捉えたハザードマップの活用、これが非常に大事だろうというふうに思います。
 それから、ハードの面では、浸水時の水深、浸水したときに水深何メートルになるかという表示、こういうようなものも避難場所などについて、例えば電信柱なんかにもその標識を設置をしていくというようなことなどのそういうような取組について、市町村などと連携していろいろ研究をしながら進めていかなければいけないというように思っております。
 その際、市町村などに対しては、防災・安全交付金の活用、それから標識の設置に関する手引の提供、それから相談窓口の設置などを行うことにより、財政面、技術面の双方から支援をしてまいりたいというように思っております。
○山本博司君 是非お願いしたいと思います。
 私も今高松に住んでおりますけれども、平成十六年の高潮に浸水されましたけれども、今ビルの中にもエレベーターの中にもそうした浸水状況が書かれているわけですけれども、やはり最大限のそうした浸水ということでございますので、しっかりとした周知、これをお願いをしたいと思います。
 今回の改正案では、現在は河川周辺に設定をしております浸水想定区域、これを地下街のある駅前又は市街地などにも拡大をして浸水想定区域を指定するように自治体に義務付けているわけでございます。
 二〇一三年に大阪また名古屋の両市で起きました集中豪雨、これは雨水が下水道を逆流しまして、内水氾濫による地下街への浸水被害が発生をいたしました。都市部におきまして地下空間の利用が進む中で、地下での浸水危険性、これは今後更に高まってまいると思います。地下空間の浸水は人命に関わる深刻な被害につながる可能性が高いために、これは万全な取組を進めなければなりません。浸水を防ぐハード面の対策とともに、的確な情報伝達、そして避難体制の確立といったソフトの面においても強化をすべきと考えますけれども、この点に関しまして対応を説明いただきたいと思います。
○政府参考人(池内幸司君) まず、現行の水防法におきましては、洪水の浸水想定区域内にあり、不特定多数の利用者の円滑かつ迅速な避難確保が必要な地下街等について対策を講じることとしております。具体的には、市町村長から地下街の管理者等に河川の水位情報を伝達することや、地下街の管理者等に対する避難確保・浸水防止計画の作成の義務付けなどを講じております。
 本案におきましては、これに加えまして、洪水につきましては想定し得る最大規模の降雨を対象とした浸水想定区域に拡充いたしますとともに、新たに最大規模の内水それから高潮に関する浸水区域を指定いたしまして、地下街等に対し、現行の洪水と同様の措置を講ずることとしております。
 また、本法案では、現行で対象としている既設の地下街等だけではなく、建設段階のものも対象とすることとしております。これによりまして、建設段階から出入口等のかさ上げや止水板の設置等、浸水に対して安全な構造とすることが期待できます。
 さらに、本法案では、地下街の管理者等が避難確保・浸水防止計画を作成しようとする際に、地下で接続しているビルの所有者等に意見を聴くこととしております。これらによりまして、地下街と接続ビル等が連携して避難確保対策や浸水防止対策を実施することが期待できます。
 本法案におけますこれらの措置を講ずることによりまして、地下街等における浸水対策の一層の充実を図ることとしております。
○山本博司君 命を守る対策でございますので、しっかりお願いをしたいと思います。
 また、市街化が進展をしました都市部におきましては、河川の拡幅とか堤防のかさ上げとか、また洪水調整ダムの整備、こういった浸水被害の防止というのはなかなか制約があって難しい面がございます。特に、急激な都市化に伴います雨水などの流出量の増大に関しましては、河川整備だけでは追い付きません。流域で雨水をためたり、また浸透させたりする保水・遊水機能を十分に確保するには、従来では別々に対策がされておりました河川、流域、また下水道の各対策を一体的に進める必要があると思います。
 そうした状況の中で、特定都市河川浸水被害対策法、これが二〇〇四年五月に施行されまして、十年以上が経過をしているわけですけれども、都市型災害への対策としては一定の効果があったと考えておりますけれども、この法律による水害防止の効果、これがどのようになっているのか、また今後どのように進めていくのか、御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(池内幸司君) 委員の御指摘のとおり、特定都市河川浸水被害対策法は、都市部におきまして、市街化の進展により河道等の整備が困難な地域の浸水被害を防止するため、雨水貯留浸透施設の整備ですとか、あるいは既存の調整池の保全等の流域対策の推進を図ることを目的とした法律でございます。
 この法律に基づきまして、これまでに八河川が特定都市河川に指定されておりまして、うち六河川では流域一体となった流域水害対策計画が策定されております。これらの河川では、河川管理者や下水道管理者などによりまして、一体的に雨水貯留施設の整備などの取組が進められているところでございます。例えば、東京都と神奈川県を流れる鶴見川におきましては、雨水貯留浸透施設の整備率が容量ベースで九九%に達するなど、各河川で浸水対策が着実に進んでおります。
 また、地方公共団体からは、特定都市河川の指定を契機に、流域で降った雨をためること、あるいはしみ込ませることに対する住民や民間企業の方々の関心が高まったという声も聞いております。
 これまでにも、地方公共団体との会議を通じて、制度の分かりやすい説明、参考となる取組事例の紹介、それから課題となっている事項へのアドバイス等を行っているところでございまして、今後とも特定都市河川の指定の促進に向けてしっかりと取り組んでまいります。
○山本博司君 是非、この法律の推進といいますか、指定を具体的に進めていくということも含めてお願いをしたいと思います。
 次に、雨水貯留施設の整備に関しまして伺いたいと思います。
 今回の改正案では、民間事業者の建物などに設置されております雨水貯留施設を災害時に自治体が活用できるように、市町村の下水道事業者が直接管理する協定を結ぶことが可能となっております。
 雨水をタンクにためれば、一挙に下水道に流れ込む、そういったことを防いで洪水の抑止が期待ができるわけでございます。このためにも、公的施設への設置とともに、民間施設への雨水貯留施設の設置を促進させることはとても重要でございます。
 こうした民間施設への雨水貯留施設の設置に向けましてどのように推進をしていくのか、御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(池内幸司君) 今御指摘ございました、民間による雨水貯留施設の整備を促進するために制度面、財政面で様々な支援策を講じることとしております。
 まず、制度面では、維持管理の負担を軽減するために、本法案におきまして、市町村等が管理協定を締結した民間の雨水貯留施設につきまして、その管理を市町村等が行うことができる制度を設けることとしております。
 また、財政面では、施設整備の負担を軽減するため、平成二十七年度予算におきまして、整備費用に対する補助制度を創設いたしました。また、税制におきましても、法人税、所得税の割増し償却の特例を措置いたしました。
 さらに、これまでにも、地方公共団体が都市再生特別地区ですとかあるいは特定街区等におきまして、雨水貯留施設の整備に伴う容積率の緩和の特例を措置している事例がございます。
 国土交通省といたしましては、このような支援措置や事例を周知いたしまして、民間による雨水貯留施設の整備を促進してまいります。
○山本博司君 次に、雨水利用推進法に関しまして伺いたいと思います。
 雨水利用推進法、これは雨水を貯留する施設を家庭や事業所、公共施設に設置することを通じまして、トイレの水や散水などに有効利用すると同時に洪水を抑制するということも盛り込んでおります。雨水は流せば洪水となりますけれども、ためれば有効な資源となります。こうした雨水を活用すれば、水資源の有効利用につながることだけではなくて、渇水時の水確保とか又は水道料金の節約など多くの効果が期待できるわけでございます。
 このほど、雨水の利用の推進に関する基本方針、これが閣議決定されましたけれども、その内容について御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(北村匡君) 雨水の利用の推進に関する法律が議員立法により成立いたしまして、平成二十六年五月一日に施行されております。今年三月十日、同法の規定に基づきまして、国及び独立行政法人等が建築物を整備する場合における自らの雨水の利用のための施設の設置に関する目標、これを閣議決定いたしまして、国及び独立行政法人等の地下階のある新築建築物には、原則として雨水の利用のための施設の設置を義務付けております。
 また、同日、雨水の利用の推進に関する基本方針を決定いたしまして、雨水の利用の推進の意義、雨水の利用の方法、雨水の利用の推進に関する施策に係る基本的な事項等を定めております。
 具体的には、地方公共団体において、雨水の利用の推進に関する都道府県方針及び市町村計画の策定等に努めるとともに、国はガイドラインの作成等の技術的支援、施設の設置コストの低減等に関する調査研究、雨水利用の意義等についての普及啓発などを行うこととしております。
○山本博司君 今回の改正は浸水被害を未然に防ぐために雨水をためるということでございますけれども、やはりさらに雨水の利用推進ということも私は大事な視点ではないかなと思います。この民間施設への雨水貯留施設の設置に関しましては、東京を始め各地で市街地の再開発が盛んに行われておりますけれども、一定規模のビルが建設される際には、浸水が想定される地域であれば、この雨水貯留施設の設置を義務化するような積極的な対応策、これも今後私は必要ではないかなと考えます。先ほどの平成二十七年度の予算、民間に対して約二億円の部分だと思いますけれども、これだとどのくらいの箇所ができるかというと、非常に少ないと思います。予算の拡充も含めて対策を強化すべきと、こう考えますけれども、太田大臣の認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(太田昭宏君) 雨の降り方が集中化、激甚化し、局地化している、そして、浸水被害が頻発をしていると。特に都市の水害対策ということについては、今回様々な措置をとり、ハザードマップを作ったり、地下街ということについての止水板を始めとする、あるいは避難ということをやる。
 同時に、これをためるという、そうした施設を造るということでありますが、この利用という角度では、東京でも幾つかやっておりまして、区でも墨田区などは先進的にためて、それによって全て全部トイレの水を始めとして賄っているというような状況にもございます。これらも含めまして、河川や下水道の整備を計画的に進めるとともに、まちづくりの中で雨水の貯留施設の設置を進めることは極めて大事だという認識をしております。
 今回の改正で、今局長からもありましたが、市町村等が民間の雨水貯留施設を管理できる制度、民間の雨水貯留施設への補助制度、そして税制の特例、また容積率という話もありましたが、といった支援策を設けました。このうち、民間の雨水貯留施設への補助制度につきましては、来年度以降の予算につきましても必要な額を確保できるよう努力をしたいと、このように思っています。さらに、今回の法改正では、このような支援策のみでは浸水被害の軽減が困難な場合には、市町村等の判断によりまして、条例で民間に対して雨水貯留施設の設置を義務付けることが可能となるように措置をしています。
 このように、まちづくりの中で民間の雨水貯留施設の設置が進むように支援をしたいと考えています。
○山本博司君 民間のこの雨水貯留施設推進ということで、是非ともお願いをしたいと思います。
 次に、世界水フォーラムに関してお伺いをしたいと思います。
 世界水フォーラム、これは三年に一度、世界中の水関係者が一堂に会しまして、この四月十二日から韓国で行われました。太田大臣もそこに出席をされたと思いますけれども、今回の水フォーラム、どのような議論が行われたのか、まず御報告いただきたいと思います。
○政府参考人(北村匡君) 第七回世界水フォーラムは、四月十二日から十七日にかけて韓国大邱市及び慶州市において開催をされました。
 我が国代表として、太田国土交通大臣が出席し、統合水資源管理をテーマとした閣僚円卓会議において議長を務め、我が国の健全な水循環に関する取組について紹介をいたしました。
 フォーラム全体では四百以上の分科会が開催をされまして、水災害対策や下水道関連など、水問題解決に向けた多様な議論が行われ、日本の技術、取組なども紹介をされています。
 フォーラムでは、第三回国連防災世界会議の成果を踏まえまして、水災害対策や統合水資源管理の重要性に言及した閣僚宣言ですとか、水資源管理、水災害対策、下水道の重要性等をまとめました大邱・慶北勧告などが発表されました。
○山本博司君 最後の質問ですけれども、是非そうした日本の技術というのを世界的にも発信をしていただきたいと思いますし、大臣に最後にお聞きしたいと思います。
 二〇二〇年の東京オリンピック・パラリンピックに対しまして、安心、安全な都市の構築ということを進めていくことは大変大事だと思いますので、大臣の決意を最後にお聞きしたいと思います。