参議院 国土交通委員会 第21号 平成27年9月8日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は一般質問ということで、防災関係の課題と観光政策に関しまして国土交通大臣にお伺いをしたいと思います。
 そこで、まず防災対策の中で広島の土砂災害について伺いたいと思います。
 八月二十日で、七十五人もの犠牲者を出しました広島土砂災害から一年を迎えました。今なお土砂崩れでむき出しになった山肌や、また更地になったままの土地があるなど、傷痕は深く残っております。被災した地域におきましては、土石流の流路に家屋が建ち並んでいたために土石流が家屋を襲って流れを変えて、被害がより広範囲に広がって及んでしまいました。
 こうした土石流をせき止めて下流域にある住宅街に流入を防ぐために有効なのが砂防ダムでございます。被害の大きかった安佐南区の八木地区、ここでは砂防ダムが土石流と土砂をしっかり食い止めておりまして、大きな石、ここで食い止められました。この地区では、住宅被害がありましたけれども人命は守られたと、こう伺っているわけでございます。
 今、広島の被災地におきましては、復旧事業として三十五か所で砂防ダムの建設が、緊急的な整備が進んでおりまして、先月、初めての砂防ダム本体も完成をいたしました。これらの地域では一日も早い整備が求められております。
 そこで、この砂防ダムの整備状況、御報告いただきたいと思います。
○政府参考人(金尾健司君) お答え申し上げます。
 昨年の八月の豪雨により甚大な土砂災害が発生した緑井、八木地区を中心に、国土交通省と広島県が連携して集中的に砂防事業を実施しております。国土交通省では、特に被害の著しかった二十四渓流で対策を進めており、このうち二十一渓流において砂防堰堤等の工事に着手しております。また、広島県でも同様に七渓流で砂防堰堤の工事に着手しております。これまでに国、県合わせて二基の砂防堰堤の工事が完了したところであり、これらのほか、整備が必要な渓流についても設計や用地を進めております。
 できるだけ早期に土砂災害からの安全が確保されるように、引き続き砂防事業を推進してまいります。
○山本博司君 是非とも一日も早い整備の完成ということをお願いをしたいと思います。
 次に、気象庁に伺いたいと思います。
 広島市の土砂災害に関しましては、夜間に大量の雨が短時間に集中的に降ったということもございまして、土砂災害の警戒情報の発表が避難勧告につながらなかったということがございました。そのことによりまして被害の拡大、広がったということの指摘もあるわけでございます。
 こうした状況を踏まえまして、土砂災害警戒情報が発令された場合には直ちに直接的な避難勧告の基準と捉えまして迅速な対応が可能となるように進めるべきと考えます。その際には、自治体が危険度やその切迫度を認識しやすくなるように、分かりやすく情報提供が求められるわけでございます。
 今回、交通政策審議会の気象分科会におきましてはこのほど提言をまとめたということでございますけれども、防災気象情報と観測・予測技術の在り方、今後どのように進めるのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(西出則武君) 昨年の広島の土砂災害など、局地化、集中化、激甚化する豪雨等に対しまして、気象庁としても一層危機感を持って取り組む必要があると認識をしております。
 委員御指摘のように、気象分科会において今年の七月に提言をまとめていただきました。この提言では、まず防災気象情報につきましては、社会に大きな影響を与える現象については、可能性が高くなくともそのおそれを積極的に伝えていくこと、もう一つは、危険度やその切迫度を認識しやすくなるよう分かりやすく情報を提供していくことという、この二つの基本的方向性の下に、まず、対応がより困難となる夜間から早朝にかけての避難の可能性を考慮して、夕方の天気予報の発表に併せて、可能性が高くなくても警報級の現象が発生するおそれがあるということを伝えていくこと、二つ目として、その地域での発生がまれな猛烈な雨が降っている事実を伝える記録的短時間大雨情報というのがございますけれども、これを最大三十分早く提供できるよう処理、解析を迅速化すること、そして三つ目としては、雨量等や危険度の推移を時系列で、危険度を色分けして分かりやすく提供することなどについて取り組むべきとされております。
 また、観測・予測技術につきましては、世界最先端の気象観測機能を有するひまわり八号の利用技術や次世代気象レーダー導入に向けた技術開発を行うこと、さらには、数値予報技術の高度化による集中豪雨や台風などの予測精度の向上を図ることなどについて、人材の育成強化も含め取り組んでいく必要があるとされております。
 気象庁としましては、この提言を踏まえ、防災気象情報の改善について可能なものから早期に実現してまいります。また、観測・予測技術の向上についても、関係機関との連携を強化し、研究から実用化までを担う気象庁の総合力を発揮しつつ、全力で取り組んでまいります。
○山本博司君 しっかりと対応をお願いをしたいと思います。
 次に、台風被害について伺いたいと思います。
 今年の七月の台風十一号、四国、中国地方を縦断いたしまして、降り始めからの雨量が七百ミリを超えた、こういう地域もございまして、大きな被害が発生をいたしました。
 香川県の土器川に架かる中方橋、これは台風十一号の直撃を受けまして被害に遭いまして、橋桁が沈下したために、今現在、全面通行止めになっておる状況でございます。また、この通行止めによりまして、上下流の橋梁まで約二キロ以上離れておりますから、迂回をせざるを得ない。そういう形ですから、非常に周辺の道路は渋滞をしておりまして、住民の生活に影響が出ておる状況もございます。一日一万一千台、交通量があった橋でございますので、地域住民の生活にとりましてもなくてはならない橋でございました。早急な仮橋、また被災箇所の復旧というのが必要であるわけでございます。
 八月の二十五日に、太田大臣の元に香川県知事とともにこのことで要望にお伺いをいたしました。多大な事業費を要するということからも、これは国からの財政的な支援等が不可欠でございまして、災害復旧事業の採択、これを早急にお願いをする次第でございます。
 この中方橋の被害の対応に関して御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(金尾健司君) お答えいたします。
 中方橋の復旧につきましては、現在、道路管理者である香川県において、災害復旧事業の早期申請に向け、仮橋も含め設計を行っているところでございます。また、香川県と国土交通省では、現地における円滑な災害査定に向け事前打合せを実施するとともに、四国地方整備局においても技術的支援を行っているところでございます。
 地元の方々の御不便、御不安を早々に解消することが重要でございますので、国土交通省としてもしっかりと対応してまいりたいというふうに考えております。
○山本博司君 是非とも、これ、台風十一号で本当に被災を受けて困っておりますので、対応をよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 次に、南海トラフ対策で伺いたいと思います。
 南海トラフの巨大地震が発生した場合、地震や津波により甚大な被害が予想されるわけでございます。特に太平洋に面している高知県、これは短時間で地震、津波の影響がございます。特に高知市の中心部、十六メートルの津波によりまして長期的浸水被害が発生すると、こう言われております。
 そのために、防潮堤の整備のハード対策とともに避難対策のソフト対策、これを総合的に進めることが重要でございます。特に、高知港のハード対策としましては、一つには高知新港の防波堤、二つには浦戸湾外縁部、湾口部の防波堤や防潮堤、そして三つ目は浦戸湾の内部の護岸等の耐震強化、この三つのラインで津波から防護する三重防護、これによりまして被害を軽減することが有効でございます。
 大臣、この三重防護に関しまして着実に推進すべきと考えますけれども、大臣の認識を伺います。
○国務大臣(太田昭宏君) ここは非常に大事なところなので、高知県と国交省よく連携取って、三重防護方式による三つのラインで重層的に津波から防護するという体制を取りたいと、このように考えています。
 この対策につきましては、既に平成二十五年度から第一ラインである高知港の第一線防波堤の補強に着手しているわけです。また、第二ラインである高知港海岸の浦戸湾外縁部、湾口部及び第三ラインである湾内部の対策につきましては、平成二十六年度及び二十七年度で既存施設や潮流、地盤等の現況調査及び概略設計等を実施しております。
 これらの調査結果を踏まえまして、浦戸湾を含めた高知港における地震・津波対策の実施につきましてしっかり検討してまいりたいと、このように思っております。
○山本博司君 是非とも、大事な部分でございますので、実行の予算が確保できるようによろしくお願いを申し上げたいと思います。
 次に、観光政策に関して伺いたいと思います。
 七月の訪日外国人客数は、推計値で百九十一万八千四百人ということで、単月ベースでは過去最高となりました。また、七月までの累計も一千百五万人を突破をしております。また、旅行の消費額に関しましても過去最高となり、観光業を日本のリード役と、こういう成長させる方針というのが着実に進んでいると思います。こうした観光業の活性化が地方創生に資するように是非政府として取り組んでいただきたいと思います。
 そういう意味で、これから地方の課題ということでお聞きをしたいと思います。
 今、訪日外国人の需要は首都圏、関西などのゴールデンルート、これは非常に集中しておりますけれども、中部、北陸地域での昇龍道プロジェクト、これのように、一つの県だけでなくて地域が連携して多様な広域ルート、これを開発、発信して地域への誘客を促進すると、こういうことが求められていると思います。
 六月十二日に広域観光周遊ルートという形で、せとうち・海の道、これを認定をしていただきました。自然風景とかアートとか食文化を売り込んで、外国人の延べ宿泊数を年間、二〇二〇年までに二〇一三年の三倍、三百六十万人と、こう想定しておりまして、ハード、ソフト両面からこの受入れ体制というのを進めております。大臣にも瀬戸内海、香川を視察していただきました。また、八月下旬に訪問されました鳥取県の境港とか島根県の松江、出雲、こういう地域も広域的な連携ということで盛り上がっているわけでございます。
 こうした地域の連携による観光振興に向けまして、広域的な交流振興、これが重要でございますけれども、これはしっかり政府により、地方、地域への財政的な支援ということも大変重要でございます。
 そこで、大臣にお伺いしますけれども、この訪日外国人の地方の誘客、どのように進めるのか、認識をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(太田昭宏君) 点から線、線から面ということをずっと考えてきまして、六月に広域観光周遊ルート形成事業ということで、せとうちなど七つのルートを決定をさせていただきました。ここは非常に大事なことで、予算という話もありましたが、七つの地域それぞれ違いますし、また、この七つの地域には入っておりませんが、宍道湖、中海、大山、この辺りの非常に大変なポテンシャルのある地域というものも盛り上げていくということが大事で、横と同時に松江—尾道の道路で広島とも結ぶというようなこともまた大事なことだというふうに思います。
 せとうちであれば、香川県あるいは岡山県始めとしてそれぞれ特徴があって、我が県はここだぞというところがあると思います。そこのルートをどう形成するかということが極めて大事だというふうに思っておりまして、広域の協議会でその検討を深めていただくことが重要だと思います。その取組についての関係者の連携、あるいはまた交通アクセスの円滑化ということで周遊パスの導入、あるいは受入れ環境整備として無料公衆無線LANの整備、あるいは滞在コンテンツの充実ということでクルーズ船の活用、海外への情報発信は一つの県ではなかなか難しゅうございますからその辺を応援する、こうしたことを集中的に支援したいというふうに思っています。
 当然、空港とかあるいは道路また海運と、非常に大事な面になりますので、よく連携取って積極的にこのルートが開発されて、そして一泊、二泊、三泊、こうしたことができるように努力をしていきたいと、このように思っているところです。
○山本博司君 ありがとうございます。力強い大臣の答弁をいただきました。しっかりこの点もお願いをしたいと思います。
 それでは、具体的な課題についてお聞きをしたいと思います。
 地方におけるショッピングツーリズムの発展を促進して訪日外国人の利便性を向上させるためには、消費税を免税する免税店の拡充、これが大変重要でございます。二〇一四年の十月には九千三百六十一店ありましたけれども、今年四月には一万八千七百七十九店、二倍に増えておりますけれども、しかし、まだまだ地方部への普及というのはこれからでございます。
 こうした中で、免税店の拡大に向けまして、この四月一日から、免税手続の一括カウンターを運営する第三者にまとめて免税手続を委託できます手続委託型輸出物品販売場制度、これが創設されまして、五月二十八日から全国で初めて岡山市の表町商店街、ロマンチック通り商店街、ここが免税店の一括カウンターがオープンいたしました。しかし、まだまだ認知度が低いという状況がございます。
 二〇二〇年までに三大都市圏を除く地方の免税店、現在の三倍の二万店に増やすという計画ですけれども、この拡充をどう進めるのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(久保成人君) 委員御指摘のとおり、全国の免税店、四月一日現在で一万八千七百七十九店までなりましたけれども、御指摘のとおり、六五%が三大都市圏でございます。三大都市圏以外については三五%ということでありますので、地域、地方における免税店の更なる拡大が、御指摘のとおり、極めて重要だというふうに考えております。
 これも御指摘いただきましたけれども、二〇二〇年には地方、地域における免税店数を二万店規模へ増加させるという目標を設定したところであります。この地域、地方における免税店を増やしていくということにつきましては、私ども、経済産業省とも協力をいたしまして、それぞれのブロック機関であります地方運輸局、地方経済産業局、ここに免税店相談窓口を設けております。この窓口の周知、さらに、一層の活用の推進を続けております。また、全国各地でもこの免税店の説明会の開催を続けているところでございます。
 さらに、これもお話をいただきましたけれども、この四月から免税手続の第三者への委託を可能として、岡山市の商店街の例を出していただきましたが、商店街あるいは地域、地方の物産センターなどにおいて免税手続を一括で行うことができるカウンターを設けて、そこでやってもらいましょうという制度をつくりました。この活用を一層促進をしていきたいというふうに思っております。
 また、地域、地方の免税店の拡大につなげていくためには、その地域地域での特色ある産品、商品、あるいは伝統工芸品、これらに触れながらショッピング、買物を楽しめる地域独自のそういうショッピングエリアを巡るコース、これを地方ブロックごとにつくり上げて海外にも発信していきたいというふうに思っております。
 また、これらに加えまして、各地の事業者の方々からの要望も踏まえて、来年度の税制改正要望におきまして免税対象の一般物品の最低購入金額を一万円から五千円に引き下げておりますので、これも関係者の御理解を得られるよう努力をしていきたいと思っております。
○山本博司君 最後になりますけれども、大臣にお伺いをしたいと思います。
 この地方への外国人の誘導ということに関して、自転車による観光振興ということで伺いたいと思います。
 近年では、自転車による観光振興ということで、愛媛県と広島県を結ぶしまなみ海道におきましては台湾を始め世界各地からサイクリストが訪れるわけでございます。ヨーロッパでは、サイクリングロードを結びましてナショナルサイクリングロードとして認定を受けた自転車道が重要な観光資源になっております。今、国会におきましても議員立法で自転車活用推進法、これが検討されておりますけれども、世界に誇る質の高いサイクリングロードに関しまして、こうした海外の事例も参考にしてナショナルサイクリングロードとして認定する制度、これを創設すべきと考えます。二〇一三年以来、広島知事また愛媛知事ともこのことに関して訴え続けておりますけれども、最後に大臣にその認識を伺いたいと思います。
○委員長(広田一君) 太田国土交通大臣、時間が参っておりますので、簡潔に願います。
○国務大臣(太田昭宏君) はい。
 しまなみ海道では、昨年、高速道路本線を活用して約八千人が参加するサイクリングの国際大会が開かれて大変盛り上がったということも始めとして、非常にサイクリングブームが到来していると思います。有識者会議などでナショナルサイクルルートについて検討を行っていますが、それができるだけ早期に制度として具体化するように努力をしたいと思います。
○山本博司君 ありがとうございます。
 以上でございます。