参議院 厚生労働委員会 第8号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は総理に質問を申し上げたいと思います。
 これまでの審議で明らかになりましたのは、今回の法案は、昨年の衆議院で民主党が政権公約の中で約束をしていました全額国庫負担を棚上げして、児童手当の仕組みを基本的にそのまま活用し、支給範囲や支給額の拡大分について国庫負担を上乗せしているという平成二十二年度一年間のみの時限法であり、実質的な児童手当の拡充法案であるということでございます。
 公明党は子育て支援に最も力を入れており、児童手当制度は、昭和四十七年の創設以来、我が党が中心となって更なる拡充を訴えてきた結果、限られた財源の中から少しずつ支給範囲や支給額が拡大されてきたわけでございます。
 今回の法案は、児童手当の仕組みがそのまま残されており、そこに国庫負担で支給範囲や支給額が拡大されていったことを考えますと、児童手当制度の重要性は認識されていると考えるわけでございます。
 そこで、これまでの児童手当制度に対する総理の認識、評価についてまずお聞きを申し上げたいと思います。
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 山本委員御指摘のとおり、児童手当は昭和四十七年に創設をされたものでございまして、公明党さんの御尽力の下で年々それが拡充されてまいったということでございます。それは、支給額が拡大をされた、あるいは支給範囲というものも拡大をされてきたと。様々な公明党さんの御尽力の下で児童手当がこのように広がってきたということを私どもも認めてまいりたいと思っております。
 私ども、正直申し上げて、野党の時代に、公明党さんの児童手当の拡充に対して厳しい見解を申し上げてきたところでございますが、しかし一方で、やはり年々お子さんを社会で育てていくべきだという思いの下で御努力をされてきたことには敬意を申し上げるべきだと、そのように現在考えているところでございます。
 そして、今回の二十二年度の更なる児童手当の拡充、所得制限を廃止をしていること、あるいは中学卒業まで範囲を拡大をさせていただいたこと、また手当の額も増やしたことなど、これも方向性としては今日まで公明党さんが努力をしてきた方向と相一致するものではないかと、そのようにも思っておりまして、その中で今回の二十二年度の法案が提出されたという思いでございます。
○山本博司君 総理、ありがとうございます。
 ただ、この児童手当、今総理も言われましたけれども、平成十二年以降五回にわたり拡充されてきたわけでございますけれども、民主党はそのうち過去四回の法改正を伴う拡充案すべてに唯一反対をしてきた党でございまして、当時、一部の議員の方々からは選挙目当てのばらまきだと、こうして批判をした経緯もございまして、これは猛省すべきでございます。公明党は反対のための反対はしない政党でございますので、民主党の党首である鳩山総理に一言そのことを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
 次に、地方負担、事業主負担の在り方につきましてお聞きを申し上げたいと思います。
 社会全体で子育てを支援をして少子化対策に取り組むという観点からは、費用負担をすることで責任を果たす意味合いもあると考えるわけでございます。
 ところが、平成二十三年度以降については、予算編成過程においてこうした財源の在り方について検討するということでございますけれども、この地方負担、事業主負担を残す可能性があるのかどうか。残さないとしますと、これは地方とか事業主の子育て支援に対する責任が減じられる、そういうことにもなるわけでございますし、また、画一的な現金給付は国がやり、またサービスの充実の現物給付、これは地方という、この役割分担を決めてしまうのか、そういう部分もございます。また、地方負担とか事業主負担を残すのであれば、民主党のマニフェスト違反という指摘も受けるわけでございますけれども、こうしたことも含めて総理の見解をお伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 御承知のとおり、平成二十二年度、今御審議いただいている子ども手当法案に関しましては、事業主の御負担も含めて地方の皆様方にも御負担をいただいて、自治体の御負担もいただいているということでございます。
 私どもは、二十三年度以降の子ども手当の在り方に関してはこれから徹底的に議論をしていきたいとは思っておりますが、まずは歳出の更なる削減と予算を見直していくという中で見出してまいりたいと思っておりまして、そのようなシステム設計の中でまだ事業主負担あるいは自治体の皆様方に御負担をお願いするかどうかということは全く白紙であるということを申し上げておきたいと思っておりますが、でき得ればこのような歳出削減の努力の中で見出していくのが望ましいと基本的にはそのように考えているところでございます。
○山本博司君 この問題を含めまして、平成二十三年度以降この子ども手当法案の内容をどうしていくのかということが大きな課題でもあるわけでございまして、支給額をマニフェストどおりだということであれば月額二万六千円ということでございます。
 今後、この満額支給ということになりますと、必要額年五兆三千億円ということで、防衛予算を上回るそういう予算になるわけでございまして、果たしてこれが無駄の削減とか予算の組替えで捻出できる金額なのかどうかということは到底思えないわけでございまして、安定した恒久財源を確保しないと結局は次世代にツケを回すことになって、未来に不安が残ります。子どもたちが不安になるということで、本当の意味での少子化対策にはならないと思うわけでございます。こういう点が国民の多くの方々が不安がある点だと思うんですけれども。
 政府は、六月までに、二〇一一年度から一三年度の歳出と歳入の見通しを示す中期財政フレームの取りまとめの中で子ども手当の支給額とか財源などの試算をするという考えでございますけれども、総理、この財源の確保をどのようにやられるんでしょうか。
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 今、山本委員からお尋ねがありましたように、私ども六月に中期財政フレームというものをお示しをいたします。その財政の健全化の道筋というものを示す中には、当然、どのような歳出があるかということも議論していかなければなりません。したがいまして、マニフェストの中で、特に子ども手当の部分に関してはそれまでに結論を見出していく必要がありますし、その財源の在り方というものもそのときまでに議論をして決めておかなければならないと思っています。
 したがいまして、子ども手当をどのように支給させていただくかと、そして支給の方法、財源はどうするかということもそのときにしっかりとお示しをしなければならないことだと思っておりまして、国民の皆様方のお声や経済、財政の状況なども勘案をしながら決めてまいりたいと思っております。
○山本博司君 この二〇一〇年だけでも現状は財源の確保で大変御苦労されたと思うわけでございますけれども、次の二〇一一年度、平成二十三年度では、今の二兆三千億円から新規で三兆円新しく増えるわけでございます。また、基礎年金の国庫負担率の引上げ、これが今の十兆円から十二兆円ですから、プラス二兆五千億円新たな財源が必要になります。また、高齢化に伴います自然の増という形では約一兆円前後と言われておりますし、また雇用対策でも八千億円のこうしたこともやらないといけないということを考えますと、社会保障の分野だけでも六兆五千億とか七兆円、非常に大きな財源が必要なわけですけれども。
 鳩山総理はマニフェストを必ず実現をするということで言われておりますけれども、もし財源確保ができなかったならば、二万六千円の支給ができないということになれば国民への裏切りになるわけでございますけれども、総理はそのときに際しまして責任はどう取られるおつもりでございましょうか。そのことをお聞きしたいと思います。
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 平成二十三年度以降のマニフェストの実現に向けて、特に子ども手当満額支給できるかどうか、それに対する責任の取り方の御質問がございました。
 私としては、まずは基本的に子ども手当満額支給と、マニフェストどおりにその公約を果たすために全力を尽くしてまいりたいと思っております。仮定のことに対してお答えを申し上げる必要もないかとも思っておりますが、まずは、財源の在り方は確かに、山本委員からお尋ねがありましたように、御主張のように大変厳しい財政の中で社会保障費は伸び続けていくということが十分予想されてまいります。その中で、マニフェストの実現を図っていくために、特に子ども手当の財源を探していくのは大変厳しい環境であることは十分に認識をしております。だからこそ、今まで以上に、一般会計と特別会計、すべてを合わせた会計の中で歳出の削減に全力を傾注をしていく必要があると。予算の見直しを全力を挙げて行っていく中で基本的には財源を見出してまいりたいと。
 子どもさんの手当の支給のために、結局、結果としてお子さんに負担というものを将来残してしまったというようなことには極力ならないような配慮がやはり必要だと理解をしておりまして、そのために今責任を十分果たしてまいりたいと考えております。
○山本博司君 この平成二十三年度の満額支給という形でいいますと、これは来年の四月から施行をしていくというお考えでよろしいんでしょうか。また、その法律を提出する時期というのは今回のような形の通常国会という形なんでしょうか。
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) そのこともその時点で決めたいと思っておりますが、基本的にはおっしゃるとおり四月からということで結構でございます。
○山本博司君 この意味では今、これだけの額を、国費を負担をしていくということで、やっぱり政策効果ということを、今回の四月から実施をしていく、このことに関しまして数値的に確認をして今後の制度設計に生かしていくということが大変大事だと思うわけでございます。世論調査などでの、子どもの健やかな育ちがどのぐらい支援をされたのかという検証の必要性ということで、総理はどのようにお考え、いつごろからどのような形で行うのか、お聞かせいただきたいと思います。
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) まず、二十三年度にどのような子ども手当の制度設計にするかということを考える際に、子ども手当、まだ児童手当もございますが、子ども手当、今年の六月から支給をさせていただくと。子ども手当の、半額ではございますが、その支給状況の中で様々検証するべきことが出てくると思います。少子化対策に対してどのような意味があるかとか、あるいは経済的にも御家庭に対してどのような意味があるかと、子どもの育ちに対してどういう影響があるかというようなことを一つ一つ、まずは二十二年度の子ども手当の中で検証してまいりたいと。その中で評価を申し上げていきたいと考えております。
○山本博司君 次に、支給対象について確認をしたいと思います。
 児童養護施設に入所する子どもとか里親の下にいる子ども等に対しまして子ども手当の支給対象とはなっておりませんでした。しかしながら、この法案の「子どもの健やかな育ちを支援する」という趣旨から考えればこうした子どもたちの支援は必要だということで、今回の修正案に関しまして、公明党の主張で、附則の第二条第一項に、「政府は、児童養護施設に入所している子どもその他の子ども手当の支給対象とならない子どもに対する支援等を含め制度の在り方について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と、この項目が盛り込まれておりまして、検討が進むことを期待しているわけでございます。
 約五千人ぐらいの方々がいらっしゃるということでございますけれども、政府はどのように支援をしていくのか、このことに関しまして総理にお聞きをしたいと思います。
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 今、山本委員からのお尋ねがありました、例えば身寄りのない児童養護施設などに入所しておられるお子さん、あるいは里親の下にいるお子さん方に対して、平成二十二年度は御案内のとおり安心こども基金という中でできる限り適用して支給をしてまいりたいと考えておりますことは御案内のとおりでございます。
 それ以後に関して、極力、今、公明党さんの御主張されていた方向で努力を申し上げてまいりたいと思っておりまして、ほぼ現在は親のいないお子さんが四千百五十人、あるいは強制入所されておられる七百人、合わせて五千人程度の方々には支給されてこなかったわけでございますが、そういった方々にも平成二十三年度以降支給されるような方向で検討をしていきたいと考えているところでございまして、その制度の充実に向けて努力をいたしてまいります。
○山本博司君 次に、大臣にこの修正に関しまして、親が仕事で海外に赴任をして、子どもが日本の学校に通う場合に、現状では子ども手当の支給対象にならないということで、これは不合理であるということで、同じく附則第二条第一項の「その他の子ども手当の支給対象とならない子どもに対する支援等」というこの中に含められるべきであり、支給対象とすべきと考えますけれども、このことに関しましての大臣の見解をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(長妻昭君) 御両親が日本国籍で海外に赴任をされておられると、そしてお子さんは日本におられるということで、もちろん祖父母等で養われて一定の要件があればその祖父母の方に出るということでございますけれども、寮とかそういう宿舎にお子さんが入っている場合は現時点では出ないということになっております。その中で、海外に、親が日本に在住していないということは、かなり大きく全体の法体系を見直す必要があるというふうに考えておりまして、平成二十三年度におきましてもその部分について検討をいたしますけれども、この法律の中で措置できるのか、あるいは別の手だてが必要なのか、それも含めて検討課題だというふうに考えております。
○山本博司君 是非とも推進をお願いしたいと思います。
 続きまして、同じく修正の部分でございますけれども、手当などの現金給付だけではなくて、待機児童を解消する保育サービスの充実などの現物の給付、そして育児休業の普及促進などのワーク・ライフ・バランスの推進、さらには、子育て世代である若者の雇用の安定など、総合的に拡充をされて初めて子育て支援という政策目標を進めることができると考えているわけでございまして、その施策のバランスを進めることが大事でございます。
 この法案の附則の第二条第二項に、政府は、平成二十三年度以降の子育て支援に係る全般的な施策の拡充について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものと、このようにあるわけでございまして、全般的な施策の検討ではなく、拡充という文言を盛り込んだことで大変画期的なことであると思うわけでございます。
 このことに関しまして、政府が子ども・子育てビジョンを今回出されておりまして、保育所とか児童クラブの整備などで約一兆六千億円ということが出ているわけでございます。この点に関しまして、政府としてどのような形でこれを推進をしていくのか、この総理の見解をお伺いしたいと思います。
○内閣総理大臣(鳩山由紀夫君) 山本委員からお話がありましたように、お子さんを社会の中でしっかりと支援していくと、支えていくという思いの中で子ども手当が創設をされてまいりましたが、ただ社会全体で子どもを育てるということは、現金の支給のみであるわけではありません。むしろ、車の両輪として考えなければならないのは、保育の在り方などの現物給付というものもあるわけでありますし、さらにワーク・ライフ・バランスをいかに推進していくかということも極めて重要な発想だと理解をしております。
 私どもは、このために子育て支援の総合的な対策として、いわゆる数値目標なども設定をいたしました。保育サービスを毎年五万人増やしていくというような子ども・子育てビジョンというものも策定をしたわけでございまして、これは大変、ある意味で国民の皆さん方の希望も大きな部分だと理解をしております。
 さらに、この関係大臣から成ります子ども・子育て新システム検討会議というものも設置をして、幼保一体化というものを含めて子育て支援のための包括的、一元的な制度の構築に向けて、本年の前半に基本的な方向性を固めてまいります。来年には、通常国会になろうかと思いますが、法案の提出まで準備をしたいと、そのように考えております。
○山本博司君 終わります。