参議院 財政金融委員会 第15号 令和4年6月2日

第208回国会 参議院 財政金融委員会 第15号 令和4年6月2日

○山本博司君 今お話しされましたような可能性がある一方で、投機的な側面やマネーロンダリングの手段としての悪用やテロ資金への活用、ハッキングによる消失も話題になっておりまして、暗号資産の規制強化、これも必要となってきております。
 今回の法改正は、二〇二〇年十月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議が公表した声明を踏まえまして、米欧の各国と協調して検討されてきたと認識をしております。我が国だけが規制しても、取り締まることはできないわけでございます。国際的な連携が重要であると考えますけれども、海外における規制の動向どのようになっているのか、また、これまで我が国がどのような役割を国際社会で果たしてきたのか、御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(有泉秀君) お答え申し上げます。
 アメリカが、フェイスブックが公表したリブラ構想も踏まえまして、日本が議長を務めますG20財務大臣・中央銀行総裁会合は二〇一九年十月にプレスリリースを公表しております。その中で、グローバルステーブルコインについて、政策や規制に関連する一連のリスクに適切に対処しなければサービスを開始してはならないという認識を示したところでございます。
 G20での議論も踏まえまして、二〇二〇年の十月に、金融安定理事会、FSBは、グローバルステーブルコインに関する十のハイレベルな規制、監督、監視上の勧告を公表しております。こうした国際的な議論を受けまして、アメリカや欧州においても、今回の法案と同様に、規制の導入に向けた動きが本格化しているものと承知しております。足下、金融安定理事会、FSBでございますが、市場動向や各国の規制対応状況も踏まえながらこの勧告の見直し作業を進めているところでございます。
 金融庁としては、今後ともこうした国際的な取組に積極的に貢献していきたいと、このように考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この暗号資産に関連をしまして、四月に成立しました外為法の改正では、暗号資産が制裁の抜け穴として悪用されるのを防ぐために、制裁対象者から第三者への暗号資産を移転する取引等を規制対象とするほか、暗号資産交換業者に対しても、銀行等と同様に、制裁対象者に関する移転ではないことを事前に確認する義務を課した次第でございます。
 そこで、財務省に伺いたいと思います。
 この外為法改正を受けまして、ロシアがビットコインなどの暗号資産を使って経済制裁を回避するのを阻止するために、財務省としてどのような対応を行っているのか、現在の対応状況、御報告いただきたいと思います。
○副大臣(大家敏志君) 山本先生より、改正に伴う財務省の対応についてお尋ねをいただきました。
 先般御審議をいただき成立をいたしました外為法改正により、暗号資産交換業者は、銀行等と同様に、制裁対象者に係る暗号資産の移転ではないということを事前に確認する等の義務を負うこととなりました。
 具体的には、この暗号資産業者において、大きく三つの対応を行っていただくことといたしております。まず一つ目は、自身の顧客に制裁対象者がいないかを確認すること。二つ目に、暗号資産の移転先が制裁対象者であるとき又はその疑いがあるときにはその移転を行わないこと。三つ目は、制裁対象者からの暗号資産の移転の依頼を取り次がないこと等の三つの対応を行っていただくこととなっております。
 このうち、顧客に制裁対象者がいないかの確認、一つ目でありますけれども、これは犯罪収益移転防止法により既に義務付けられており、この確認を実施していれば、制裁対象者からの依頼を取り次がないことという三つ目の対応についても実態的に対応していると認識をいたしております。
 また、暗号資産の移転先が制裁対象者である等の場合にその移転を行わないという二つ目についてでありますけれども、制裁対象者に係るアドレスをリスト化したものの利用等を推奨しており、業界全体として利用が進みつつあると、ほぼ全ての業者が行っていただいておると認識をいたしております。
 こうした確認義務を適切に行っていただくため、財務省では、暗号資産取引業者に対して複数回にわたって直接の説明会を行ったほか、文書での周知を行うなど、制裁の実効性確保に向けて鋭意取り組んでおります。
 三月のG7首脳声明におきましても、G7各国は暗号資産を制裁回避の手段として活用することができないことを確保するとされており、引き続き、G7を始めとする国際社会と緊密に連携をして、暗号資産が制裁の抜け穴とならないよう適切に対応してまいります。
○山本博司君 ありがとうございます。
 次に、法案の内容に関して伺います。
 今回新たに創設しました電子決済等取扱業、電子決済手段等取引業につきましては、届出制ではなく登録制として、業務運営の質を確保し、利用者保護、またマネロン対策を行うこととしている次第でございます。
 当局によるこの検査、監督で、一定の質の担保、これは保たれると思う次第でございますけれども、この登録制をすることでこの仲介者に対しましてどのような規制を行い、利用者保護につなげようとお考えなのか、お伺いをしたいと思います。
○政府参考人(古澤知之君) お答え申し上げます。
 委員御指摘の電子決済手段等取引業でございますが、登録制を導入して利用者保護に必要な措置を講ずるわけでございますが、利用者保護の措置といたしましては、サービスの利用者がその業者について銀行などの他の事業者と誤認しないようにきちんと説明した上で、取り扱います電子決済手段の内容、それからその手数料等の契約内容について情報提供を行うと、それから利用者から預かりました電子決済手段をきちんと分別管理すると、それから利用者に損害が生じた場合における賠償責任の所在の明確化のため発行者との間で契約締結を行うべきということを規定して、講じなければならないとしているところでございます。
 こうした対応によりまして、我が国におけるステーブルコインの制度上の取扱いが明確化され、利用者保護、マネロン対策等を図りつつ、利便性の高いサービスの提供を始めとする金融イノベーションの促進が可能になると考えているところでございます。
 なお、具体的な中身につきましては、内閣府令、ガイドラインなどによって定めるということにしてございまして、関係者の皆様の御意見も伺いながら適切に検討してまいりたいと考えてございます。
○山本博司君 また、今回の法改正によりまして、為替取引分析業も定義を定めております。
 許可制を導入することで、この為替取引に関する取引フィルタリング、取引モニタリングの共同化が可能となっておりまして、マネロン対策の改善につなげることになっている次第でございますけれども、この為替取引分析業を共同化することでこのマネロン対策に対するメリットはどのような効果があると考えているんでしょうか。
○政府参考人(古澤知之君) お答え申し上げます。
 マネロン対策につきましては、足下、国際的に金融機関に対しましてより高い水準でのマネロン対策の実施というものが求められているわけでございますが、他方で、中小規模の金融機関におきましては、システムの整備、人材確保などの面で単独での対応が難しいという声があると承知してございます。こういった中で、銀行界におきましてはマネロン対策の共同化といった検討が進められていると承知してございます。
 こういったマネロン対策の共同化の取組の効果といたしましては、各金融機関のマネロン対策の知見、ノウハウが集約されまして業界全体として活用可能になるといった点もございますし、さらには、より高度なシステムを共同で整備するということが可能になりまして、業界全体としてのマネロン対策の高度化、効率化が図られるということかと考えてございます。
 こういった点によりまして、各金融機関におきますマネロン対策の実効性の向上が図られますと、詐欺などの犯罪の未然防止、犯罪の関与者の捕捉といった点のほか、被害者の損害回復といった点でも利用者保護につながるということが期待されるところでございます。
 金融庁といたしましては、引き続き、銀行などによるマネロン対策の共同化の取組がより実効性のあるものになるよう、業界としての取組をフォローしてまいりたいと考えてございます。
○山本博司君 次に、この暗号資産取引に伴う消費者問題に関してお伺いをしたいと思います。
 今回の改正でこの暗号資産が資産決済の手段として活用することが想定されましたけれども、暗号資産というものは、現在のところ、まだ、決済手段というよりは投機というか、投機目的で利用する人が圧倒的に多いと思われます。先日も、ネットカジノから暗号資産へ資金が流れているのではといった報道もあった次第でございます。また、若い人の間で気軽にこの暗号資産に投資する人が増えているという話もお聞きをしております。これ大きな消費者問題につながることでございまして、注意喚起、これが必要でございます。
 そこで、消費者庁に伺いますけれども、この消費生活相談として、暗号資産の関連する相談がどのように寄せられているのか、最近では増えているのか減っているのか、また、トラブルを回避するためにはどのような注意喚起を行っているのか、対応状況を報告いただきたいと思います。
○政府参考人(長谷川秀司君) お答え申し上げます。
 委員御指摘の暗号資産に関し、全国消費生活情報ネットワークにおける相談件数についてここ三年間の状況を見ますと、現時点では、二〇一九年度は二千八百一件、二〇二〇年度は三千三百四十七件、二〇二一年度は六千三百四十三件程度と承知しております。
 具体的な相談事例といたしましては、例えば、絶対にもうかるなどと持ちかけられて投資をしたが、返金されない、出金できない、また、無登録業者に勧誘されて投資をしたが、その後当該業者と連絡が取れない、また、マッチングアプリで知り合った者に勧誘されて投資をしたが、その後返金されない、連絡が取れないといった趣旨のものがあると承知しております。
 こういった相談の傾向も踏まえまして、消費者庁においては、金融庁等の関係省庁と連携しつつ、暗号資産に関する注意喚起を行っているところでございます。
 具体的には、金融庁、財務局での登録の有無など、暗号資産交換業者の情報を確認すること、また、マッチングアプリ等で知り合った人から投資の勧誘を受けても安易に投資をしないことを主なポイントといたしまして、暗号資産に関するトラブルに御注意いただくようにお願いしているところでございます。
 暗号資産に関する消費者被害の防止に向け、消費者庁といたしましても、引き続き、金融庁等の関係省庁と連携しつつ、消費者への適切な注意喚起に取り組んでまいりたいと考えております。
○山本博司君 これに関連しまして、国税庁にお聞きしたいと思います。
 急拡大するこの暗号資産の取引によりまして、所得の申告漏れ、また無申告が相次いでいるともお聞きしております。国税庁は二〇一七年に、この暗号資産による取引の利益、雑所得として確定申告の対象として取締りを強化しているわけですけれども、しかしながら、SNS上では暗号資産同士の交換は非課税といった誤った情報も出回るなど、認識不足から巨額な追徴課税を求められるケースもあると、こう聞いている次第でございます。こうした誤った情報を打ち消して正しい知識を伝えることも大変大事でございまして、取締りを強化することが納税意識の向上にもつながると思います。
 こうした適切な納税に関する周知、広報、しっかり取り組んでいただきたいんですけれども、国税庁の対応状況をお聞きします。
○政府参考人(重藤哲郎君) お答えいたします。
 国税庁としましては、暗号資産の取引を行った納税者の方に適正に申告をしていただけるよう、的確な周知、広報に取り組むとともに、適正に納税を行っている方々が不公平感を抱くことのないよう、申告誤りの適切な是正を通じて適正、公平な課税を実現することが重要だと考えております。
 主な周知、広報の取組としましては、国税庁ホームページに暗号資産の売却等による所得などの申告漏れに関する注意喚起について掲載をするほか、暗号資産関連団体を通じて、各交換業者や利用者に対して、暗号資産の税務上の取扱いについてまとめたFAQなどの周知について協力依頼を行うといったことをしております。
 加えまして、暗号資産取引について、あらゆる機会を通じて課税上有効な各種資料情報の収集に努め、所得を捕捉し、無申告も含め、課税上問題があると認められる場合には的確に税務調査等を実施してきたところでございます。
 国税庁としましては、適正、公平な課税の実現に向けて、引き続き周知、広報や申告誤り等の適切な是正に努めてまいりたいと考えております。
○委員長(豊田俊郎君) 時間が参っておりますので。
○山本博司君 最後に大臣に、この利用者保護、大変大事だと思いますけれども、最後に、暗号資産取引に関する、注意喚起に関する大臣の決意を最後にお聞きしたいと思います。
○委員長(豊田俊郎君) 時間が参っておりますので。
○国務大臣(鈴木俊一君) はい。
 ただいま消費者庁から御説明ございましたが、暗号資産取引については様々なトラブルが生じておりますので、利用者保護を図る観点から、利用者への注意喚起、これを十分に行っていかなければならないと、そのように考えているところでございます。
 金融庁といたしましては、これまで消費者庁、警察庁と連名で、暗号資産の取引上の注意点、被害事例をまとめ、注意喚起を実施しております。この注意喚起の内容につきましては、金融庁に寄せられた最新の相談内容などを踏まえまして適宜見直しを行っておりますし、また、その周知方法につきましても、金融庁のウエブサイトのみならず、ツイッター、ユーチューブといった媒体を活用するなど、情報発信にも強化しているところでございます。
 今後とも、こうした取組をしっかりと行いまして、暗号資産取引に関する注意喚起の充実に努めてまいりたいと思っております。
○山本博司君 質問を終わります。