参議院 総務委員会 第4号 平成28年11月10日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 今回の法律案に関しまして、大臣並びに関係省庁にお伺いをしたいと思います。
 この法律案は、世界経済が直面するリスクを関係諸国が一体となって回避するために消費税率の一〇%への引上げを平成三十一年十月までに再延期することに伴い、地方税に関して所要の施策を講ずるものでございまして、現下の状況を考えれば致し方のないものと考える次第でございます。
 しかしながら、社会保障の充実と安定化とともに財政健全化の両立を目指してこれまで進めてきました社会保障と税の一体改革の旗は下ろすべきではありません。
 本来、消費税、地方消費税の引上げによる増収分に関しましては、子ども・子育て支援や医療、介護の充実に向けた施策の実施など、社会保障の充実また安定化などに充てることとされておりまして、この税率引上げの再延期によりまして、これらの施策は税率引上げまでその財源は失うことになるわけでございます。また、消費税、地方消費税率の引上げを再延期したとしても、保育の受皿五十万人分の確保、また介護職員等の処遇改善、これに関しましては可能な限りの社会保障の充実を実施すると、こうされておりまして、その費用については安定した財源の確保が重要でございます。地方自治体からも、国が責任を持って財源を確保すべきと、こういう意見も出ている次第でございます。
 大臣として、この地方負担分の財源確保に関しましてどのように考えていくのか、まず認識を伺いたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 社会保障の充実施策につきましては、消費税率引上げ時期の延期に伴いまして、消費税率一〇%の段階で実施する予定であったものを見直していく必要もございます。その具体的な見直しにつきましては、今後予算編成過程で検討するということになりますけれども、その際には、地方負担分も含めて所要の財源を確保することが必要だと考えております。
 この消費税率引上げ時期の延期に伴って、予定されていた引上げ分の地方消費税収の歳入は得られなくなりますけれども、地方団体が地域に必要な行政サービスを確実に提供しながら安定的な財政運営が行えますように、年末の地方財政対策において地方交付税を始めとした地方の一般財源総額をしっかりと確保できるように取り組んでまいりたいと存じます。
○山本博司君 大臣、是非ともこの年末に向けての財源確保を進めていただきたいと思います。
 今回の法案によりまして、自動車取得税の廃止と、燃費の良い車ほど購入時の税金が安くなる新税でございます環境性能割引制度の導入も、消費税引上げと同様に平成三十一年十月へと延期となります。
 消費税率一〇%の引上げが延期になりますと、引上げ前後における駆け込みの需要とか、また反動減の動向なども先に延びることになりますから、対策も先延ばしになって、その間の燃費の良い車の技術革新、これが停滞するようなことがあってはならないと思います。
 また、自動車取得税などのエコカー減税に関しましても、来年の春に終了期限を迎えていくということでございますので、前年と同じ基準ではこの技術開発、これは促すことはならないと思いますので、基準を厳格にしてしっかり対象を絞った上で、このエコカー減税の延長というのはすべきと考えます。
 どちらにしても、いずれにしましても、平成二十九年度の税制改正におきまして、この自動車の保有に係る税負担の軽減に関しましては総合的な検討を行って必要な措置を講ずると、こうしておりますので、これから本格的な論議、議論が進むと思いますけれども、こうした燃費の良い車への税制の在り方、どのように考えていくのか、認識をお伺いしたいと思います。
○大臣政務官(冨樫博之君) 車体課税に係る税制改正に当たっては、道路等の行政サービスを提供するために必要な税収の確保という視点だけではなく、自動車産業が我が国経済や地域の雇用を支える重要な基幹産業であるとの認識の下、技術開発の促進にも十分に配慮をしながら取り組んできたところであります。
 今回の法案により、消費税率引上げ時期の変更に伴い自動車取得税の廃止も延期されることになれば、今後のエコカー減税の在り方について平成二十九年度の税制改正プロセスにおいても議論されることになります。エコカー減税の延長に当たっては、これまで燃費基準を適切に切り上げてきたことがエコカーの普及や燃費値の向上に一定の成果を上げてきたことを踏まえながら、適切に取り組んでいきたいと考えております。
 また、今回の法案においては、環境性能割の導入を二年半延期することに加え、その導入前に、技術開発の動向、地方財政への影響等を勘案して、環境性能割の税率区分を見直すこととしております。この規定の趣旨を踏まえ、環境性能割の導入により、自動車の環境負荷の低減を図るとともに、地方の安定的な財源確保に資するよう、平成三十一年度税制改正に向けてしっかりと検討してまいりたいと思います。
○山本博司君 今お話ありました。是非ともその推進をしていただきたいと思います。
 地方税に関連しまして、電子納税の今後につきましてお伺いをしたいと思います。
 インターネットを利用して電子的に手続が行えるシステムとしましては、国税におきましてはe―Taxが広く知られておりまして、税務署に直接行かずに手続を完結することができますので、大幅な時間短縮になるということで大変評価をされております。
 これに対しまして、eLTAXとは地方税ポータルシステムの呼称でございますけれども、地方税における申告などの手続をインターネットを利用して電子的に行うシステムでございます。このeLTAXの概要とこれまでの利用状況を確認をしたいと思います。
○政府参考人(林崎理君) お答え申し上げます。
 いわゆる地方税の電子化は、ICT化が進んだ社会環境を踏まえた納税者の利便性の向上や税務事務の効率化などの観点から極めて重要な課題であると認識しております。
 今御指摘いただきましたeLTAXでございますけれども、平成十七年の一月に稼働しておりまして、現在、全ての地方団体が対応して、今まさに御指摘いただいた電子申告などのサービスを提供しているところでございます。
 平成二十七年度における電子申告の利用率を申し上げますけれども、都道府県の法人事業税などにつきまして、これは五六・一%、五年前、平成二十三年度に比べますと一六・五%ポイントの増、それから市町村の法人住民税は五七・四%、同じく二五・七%ポイントの増、給与支払報告書の提出は三二・六%、同じく二三・六%ポイントの増となっておりまして、着実に向上してきているところでございます。
 電子申告を利用することにより、企業などは複数の地方団体に対しまして書面で申告する必要がなくなりますので、事務作業やコストを大幅に削減できることから、こうしたメリットを更に周知をして利用率の一層の向上を図ってまいりたいと考えております。
○山本博司君 今お話ありました電子申告に関しましては、五七%近くまで普及をしているということでございます。
 これが更に改善を行っていけば利用者の増加が見込まれると考えますけれども、ここで大きなポイントといいますのは、地方税の支払がインターネットで行えるということでございます。企業がネットで支払える電子納税システム、国税ではこれは既に実現をしておりますけれども、地方税は残念ながら、費用の問題とか自治体の足並みがそろわない、こういう形で導入が大変遅れております。今、全国二十二団体ということですから、九割以上の自治体は電子納税は実施をされておりません。しかし、この法人税、法人二税ですね、企業が従業員の賃金から天引きした個人の住民税を、総額をインターネット決済で一括して入金をする、また自動的に自治体ごとに振り分けていく、こうした部分に関しましては非常に、企業だけでなくて自治体もこれは効率化が大幅に図られると思います。
 この電子納税に関しましては、個別にシステムを導入するというのは大変負担が大きいということでございますので、今、全自治体が利用できる共有システムを検討していこうという、そういう動きもございますけれども、今後電子納税に関してどのように進めるのか、確認をしたいと思います。
○政府参考人(林崎理君) お答え申し上げます。
 先ほど申し上げたように、電子申告につきましては全ての団体が対応して利用率も上がってきておるんですけれども、今御指摘がありました電子納税、これにつきましては、納税者の利便性向上、地方団体の事務負担軽減という観点で、今御指摘あったとおり、意義があるというふうに私どもも考えておりますけれども、導入に掛かります手間や費用の観点から現実に今進んでいないという状況、そういう状況でございます。
 特に、国税と異なりまして地方税につきましては、企業は複数の地方団体に納税しなければならないということが多くて、納税先の地方団体の全てが電子納税に対応していないとそのメリットは少ないと考えられるところでございます。このため、地方分権時代にふさわしい地方税制のあり方に関する調査研究会というものが設置されまして、金融機関や地方団体などの委員によって電子納税推進のための実務的な意見交換を現在行っているところでございます。
 共同システムの構築という御指摘ありまして、それももちろん一つの方策でございますが、地方税の課税事務を担っている地方団体におきまして、いろいろ費用も掛かりますので合意形成が必要と考えられます。現時点において、なかなかまだそこまで至っていないという状況ではございますけれども、総務省として、地方団体における電子納税が進展しますように引き続き必要な対応を図ってまいりたいと、こう考えているところでございます。
○山本博司君 これは、海外と比較しましても大変この電子納税に関しましては日本は遅れていると思いますので、様々な課題はあるかと思いますけれども、是非御検討しながら進めていただきたいと思います。
 それでは次に、鳥取県中部地震について質問をしたいと思います。
 十月二十一日に鳥取県中部を震源にしましたマグニチュード六・六の地震によりまして、鳥取県内の公共施設はもとより、農作物の被害や観光施設等にも多くの被害が発生をいたしました。震度六弱を記録しました倉吉市や北栄町、湯梨浜町など、県の中部を中心にして被害が多くなっておりまして、例えば収穫前の梨の落果であるとか、多くの宿泊、ホテル等のキャンセルが相次いでおりまして、観光産業に大きな今後の風評被害が懸念をされているということもございます。
 その意味で、先日現地を視察させていただきまして、知事や市長、町長とも意見交換をさせていただきました。大変建物壊れておりまして、屋根瓦が壊れて、もう一面ブルーシートが至る所に張り巡らされているということで、被害の甚大さに大変驚いたわけでございます。
 鳥取県からは、今回の地震被害に係る緊急対応、また復旧対策経費に対する県及び県市町村の財政措置に関しまして、特別交付税の措置とか新たな財政支援の措置ということの格別な配慮をお願いしたいということの総務大臣に対する要望も出ております。
 そこで、是非積極的な財政支援をお願いをしたいと思いますけれども、高市大臣に認識をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 今回の地震によりまして、公共土木施設を始めとして様々な被害が生じております。被災自治体においては、やはりこの応急対策、復旧対策など、かなり財政負担が生じるということが見込まれます。
 今、山本委員おっしゃっていただきましたとおり、県からも、そして一市四町からも緊急要望書をいただいておりますし、また、知事を始め関係の首長の方々からも総務省で直接状況についてお話を伺っております。
 今後、関係省庁とも連携しながら、被災自治体の実情を丁寧にお伺いをして、地方交付税や地方債によります地方財政措置を講じて、その財政運営に支障が生じないように取り組んでまいりたく存じます。
○山本博司君 大臣、是非とも鳥取県に対する財政的な支援をお願いしたいと思います。
 特にその現場を視察しまして一番要望が強かったものが観光産業への支援でございました。十一月、これからカニ漁解禁をされるということで、やはり書き入れ時でございます。しかし、この中部の三朝温泉以外にも、西部の米子の皆生温泉とか東部の鳥取市全域、予約キャンセルが発生して一万三千件ぐらい予約がもうなくなってしまったということでもございます。
 復旧復興に向けての支援が必要でございまして、鳥取は大丈夫なんだという情報、メッセージの発信とともに、熊本地震の際に実施をされました九州ふっこう割のような割引旅行プラン助成、この制度を是非鳥取県でも行っていただきたい、これも要望でございました。
 今日は国土交通省の政務官に来ていただいておりますので、それも含めましてよろしくお願いしたいと思います。
○大臣政務官(藤井比早之君) お答えいたします。
 鳥取県には、鳥取砂丘、倉吉の白壁土蔵、三朝温泉、松葉ガニなど、魅力的な観光資源が多数ございます。委員御指摘のとおり、秋、冬の観光シーズンを控え、観光客に対する風評被害の防止が何よりも急務であると考えております。鳥取県からも、日本政府観光局、JNTOや観光関係団体による国内外でのプロモーション、鳥取観光キャンペーンを実施し、風評被害を払拭することで鳥取観光を支援することについての御要望をいただいております。
 このため、観光庁やJNTOのホームページにおいて、被害が一部地域のみであること、交通機関や宿泊施設等の利用、特に観光には支障がないことなどの情報発信を国内外に向けて行っております。これに加えまして、より多くの人に鳥取県に観光で訪れていただくために、国内向けには、正確な情報発信のためにメディアを鳥取に招請する、海外向けには、正確な情報とともに、アジアで人気の温泉、松葉ガニ、海外で人気のアニメ、「ゲゲゲの鬼太郎」、「名探偵コナン」など、鳥取県の魅力を発信していくことにより、風評被害を払拭し、観光客の取り込み、特にインバウンドの取組を積極的に図るための取組を行ってまいります。
 なお、鳥取県からも割引旅行プラン助成制度等の創設の御要望をいただいております。これにつきましては、今後の地震の影響を注視しながら検討をしてまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非とも、熊本のこのふっこう割も百五十億円の需要創出になったということで、知事も、大変復興に手助けになったということでございますので、是非とも前向きに検討をお願いをしたいと思います。
 それでは、もう時間がなくなりましたので、二つの質問は飛ばさせていただきまして、最後に緊急防災・減災事業債に関しまして伺いたいと思います。
 今回、鳥取県中部地震だけではなくて、近年、大規模な地震、津波、集中豪雨等といった災害が頻発しておりまして、住民生活の安全、安心が脅かされる事態が生じております。国土強靱化に資する社会資本整備につきましては、地方財政においては厳しい財政状況の中でその財源を確保することがますます困難になっております。
 全国防災事業が平成二十八年度になくなりますので、また、緊急防災・減災事業費も平成二十八年度末に終了する場合には、このままでは平成二十七年から二十九年の三年間にかけて一兆円の防災関係の財源が失われることになります。地方単独事業に係るこの緊急防災事業債の期間を延長して、地方の実情を踏まえて拡充をしていく、また、防災、減災を加速するための十分な財源を安定的、継続的に確保すべきと考えます。
 この点、大臣、この緊急防災・減災事業債に関して今後どのように考えておられるのか、御見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(高市早苗君) 平成二十八年度までとしておりましたが、延長を前提に考えております。
 今後、来年度以降の対象事業の内容、それから地方財政計画等への計上額、どの程度の期間延長するかなどにつきまして、地方団体の御意見、ニーズも踏まえて、年末の地方財政対策を講じる中で具体的に決定をしてまいりたいと存じます。
○山本博司君 是非ともお願いをしたいと思います。
 以上で質問を終わります。