参議院 環境委員会 第2号 平成30年11月27日

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。質問の機会をいただき、ありがとうございます。
 本日は所信に対する質疑ということで、環境行政を取り巻く課題のうち、浄化槽の整備に関しまして私も伺いたいと思います。
 国交省、農水省、環境省の合同で、それぞれが所管をする下水道、農業集落排水施設、浄化槽によるこの汚水処理施設の普及状況を調査した結果を本年八月に発表いたしましたけれども、それによりますと、平成二十九年度末における全国の汚水処理人口普及率は九〇・九%と、昨年度末より〇・五%増となりました。一方で、いまだに約一千二百万人が汚水処理施設が利用できない状況にございまして、特に人口五万人未満の市町村の汚水処理人口普及率、七九・四%にとどまっているということでございます。
 この汚水処理施設の整備につきましては、地域の実情に応じた整備方法、整備スケジュール等を設定した都道府県構想に基づいて地方公共団体が実施をしているところでございますけれども、国は引き続き支援を推進すべきと考えますが、この汚水処理施設の未普及地域の早期解消に向けた支援、どのように推進しているのか、また下水道と集落排水、浄化槽のいずれを選ぶのかという点について、現状の基本的な見解、取組に関しまして環境省から御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(山本昌宏君) お答え申し上げます。
 今委員御指摘ありましたように、汚水処理施設につきましては、公共下水道、集落排水施設、合併処理浄化槽のそれぞれの特性、経済性等を勘案して、地域の実情に応じた最適な整備手法を選択することが重要と考えております。
 御紹介のありました都道府県構想でございますが、平成二十六年一月に国土交通省、農林水産省、環境省の関係三省で、汚水処理に関する都道府県構想策定のためのマニュアルを策定しております。これを関係者で周知することによりまして、今後十年程度を目標に汚水処理未普及地域が解消する、これを目指して三省連携して取り組んでいるというところでございます。
 現在、マニュアルに基づきまして汚水処理施設の計画の見直しが各地で進められておりますが、近年の地方自治体の財政状況や人口減少化の状況を踏まえますと、今後、浄化槽の果たす役割はますます大きくなると認識してございます。
 環境省としては、今後とも関係府省と連携して浄化槽の整備に取り組んでまいります。
○山本博司君 やはり普及率が低い地域といいますのは、財政状況も大変厳しい地域でございます。そうした中で、この浄化槽の整備といいますのは、下水道整備に比べまして、工期の面からもコストの面からも大変に優位性がございますし、個別処理の浄化槽に切り替えて汚水処理施設の早期整備を目指していく自治体も増えつつございます。
 先ほどの汚水処理施設の都道府県別の普及状況でございますけれども、上位三位は、東京都の九九・八%、兵庫県の九八・八%、滋賀県の九八・七%と高い水準となっておりますけれども、下位の三位は、徳島県の六〇・四%、和歌山県の六三・六%、高知県の七二・五%となっておりまして、香川県は下から五番目、愛媛県は下から六番目ということで、私、地元の四国の地域が低いままでございまして、地域間格差が顕著となってきております。
 こうした地域間格差といいますのは、長い年月の間に様々な経緯が影響しているかとは思いますけれども、できるだけ早急に解消すべきと考えます。この格差をどのように解消しようとしているのか、各自治体に対してどのような啓発を行っているのか、認識をお聞きしたいと思います。
○大臣政務官(菅家一郎君) 山本先生の地元四国は会津とゆかりがあり、今後とも御指導よろしくお願いいたしたいと思います。
 では、御答弁申し上げます。
 委員御指摘の汚水処理施設の普及率、これが低い地域への取組といたしましては、環境省では、交付金や補助金、これによる浄化槽整備の支援を進めているところでございます。
 その中でも、市町村自らが事業主体となって整備を進める浄化槽市町村整備推進事業、これは浄化槽の普及を進める上で大変効果的だと、このように思っております。実は、私が会津若松市長を務めていたときに、本事業を採用いたしました取組、本日現在で市内の浄化槽九百九十二基の整備を進めることができているところでございます。
 さらに、本年六月には廃棄物処理施設整備計画の閣議決定し、浄化槽整備区域内の合併処理浄化槽の普及について今後五年間の整備目標を新たに掲げております。
 また、浄化槽の整備を進めるため、環境省主催の浄化槽トップセミナーや浄化槽フォーラムを開催し、地方自治体の首長や地域住民に直接働きかけるなどの積極的な情報発信にも努めております。
 今後も、普及率の低い地域へ合併処理浄化槽の普及拡大を進めていくことで、生活排水が適正処理できる環境の確保に向けて取り組んでまいりたいと存じます。
○山本博司君 そうした中で、この単独浄化槽からの合併浄化槽への転換が大きな課題となっております。
 政府が本年六月に閣議決定しました未来投資戦略二〇一八では、汚水処理事業のリノベーションの重要性に鑑み、単独浄化槽の集中的な転換を進めるということを目指しております。単独浄化槽は平成十三年四月より新設は禁止をされておりますけれども、平成二十八年度末時点においては全体の五三%、三百九十九万基も残っているのが現状でございます。
 この単独浄化槽は高度成長期にトイレの水洗化を目的に急速に普及したわけでございますけれども、ただ、合併浄化槽と違いまして、台所や風呂場の排水を処理できないために河川の水質汚染の原因ともなっております。また、最近では、老朽化による破損や漏水等の事例が多く報告されているところでございまして、公衆衛生上もゆゆしき事態であると言わざるを得ません。
 そこで、大臣にお伺いをしたいと思います。
 是非ともこの転換促進を進めるべきと考えますけれども、今後の方針をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(原田義昭君) 既に菅家政務官、また、ただいま山本委員からも御指摘ありました。単独処理浄化槽は、平成二十八年度末において全国で約四百万基存在しており、単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換促進が水質改善や防災対策のために非常に重要であるというふうに認識しているところであります。
 本年六月には廃棄物処理施設整備計画を閣議決定をいたしまして、浄化槽整備区域内の単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換について、今後五年間の目標をしっかりまた設定したところであります。
 今後も引き続き、合併処理浄化槽への転換を進めていくことで、生活排水が適正処理できる環境の確保に向けて取り組んでまいりたいと、こう思っております。
○山本博司君 今お話ございましたけれども、この転換の際に、本体そのものは助成があるわけですけれども、トイレ、風呂場と浄化槽をつなぐこの配管の部分、これが助成をされていないということで、一般家庭にとりましてもコスト負担が大きいと、転換遅れの大きな要因の一つとなっております。私も、四国等を回りましても、そのことを一番多く皆様言われるわけでございます。配管工事には通常四十万円から五十万円掛かるということでございますけれども、この個人負担を少しでも軽減をしていくことが合併浄化槽への転換に大きく寄与することと考えます。
 いよいよ予算編成の時期を迎えるわけですけれども、この宅内配管工事への助成の拡充につきましてしっかり取り組んでいただきたいと、こう思いますけれども、大臣の決意をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(原田義昭君) まさに、今御指摘の案件について、私どもも来年度の概算要求でもしっかりまた要求しているところでございまして、単独処理浄化槽の転換を推進するために、浄化槽の交換と併せて、し尿のみならず生活雑排水も浄化槽に流入させるための宅内配管工事費用についても助成対象とすべく要求しておるところでございます。
 単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換を更に推進するため、しっかりと取り組んでまいりたいと、こう思っております。
○山本博司君 先ほども森先生からもお話ございました。私ども公明党といたしましても、明日、財務省にこの申入れをしようと思っておる次第でございまして、しっかりこのことに関しましては我々も応援をしていきたいと思いますので、大臣もよろしくお願いを申し上げたいと思います。
 さらに、この合併浄化槽が有効な処理性能を維持するためには、定期清掃などの維持管理も重要でございます。しかしながら、この浄化槽法に定める法定検査受検率、全国で僅か四〇%にとどまっておりまして、その法定検査の基礎となる浄化槽台帳の整備が不十分な地域が多いために発生しているとも言われております。
 本年六月に閣議決定されました骨太の方針、また未来投資戦略二〇一八におきましても、AIとかロボット、台帳システムのリノベーションを進めることを政府として取り組む方針が示されておりますけれども、今後の展開を考えますと、こうしたデータベースをしっかり管理されるということが前提になると思いますけれども、この整備に関しましての認識を伺いたいと思います。
○政府参考人(山本昌宏君) お答え申し上げます。
 まさに、御指摘いただきましたように、浄化槽台帳システムの整備、重要な課題だと認識しております。特に、浄化槽の設置状況、維持管理状況を把握するためにしっかりとした浄化槽台帳システムを整備する、これが重要でございまして、このことは、本日御指摘もありました合併処理浄化槽への転換の推進あるいは適正な維持管理などを図る上で効果的だと考えております。
 環境省におきましては、台帳の電子化や関係機関との連携、GISの活用など、台帳システムの整備及び施策への活用を促進するマニュアルを作成しまして、台帳システム導入に前向きな地方自治体への導入支援、それから、他の自治体への普及に活用しているところでございます。
 また、本年六月に閣議決定いたしました廃棄物処理施設整備計画におきましても、浄化槽台帳に法定検査等の結果等も反映して単独処理浄化槽から合併処理浄化槽への転換や浄化槽の管理の向上に活用する旨、位置付けております。
 環境省といたしましては、引き続き、浄化槽台帳システムの整備を進めるための方策についてしっかり検討して取り組んでまいります。
○山本博司君 是非ともその推進をお願いしたいと思います。
 最後の質問になりますけれども、この合併浄化槽は、地域を選ばずに健全な水循環が実現できるという観点から、環境との調和が取れる日本の優れた技術だと思います。この優れた技術である我が国の浄化槽の仕組みを海外に輸出する機運も高まりつつございます。国際的にも、未処理排水を二〇三〇年までに半減させるという国連の持続可能な開発目標、SDGsが合意をされておりますけれども、そうしたことも大変大事でございます。
 我が国では、インフラシステムの輸出戦略の中に、日本企業が二〇二〇年までに約三十兆円のインフラシステムを受注することを目指しているということでもございます。この機を捉えまして、戦略的な国際展開を強化すべきと思いますけれども、副大臣、いかがでしょうか。
○副大臣(あきもと司君) 委員御指摘の国際展開、大変大事な視点だと思っておりまして、その流れの中で、おかげさまで浄化槽の海外市場は近年急速に拡大しております。昨年度の我が国の企業の海外での浄化槽設置基数は対前年比で約二倍の約六千基と伸びております。累計としても約一万三千基となっております。
 環境省として、昨年、日本の環境技術・制度を発展途上国に展開することを支援する環境インフラ海外展開基本戦略を策定し、取組の分野の一つに浄化槽を位置付けさせていただきました。この基本戦略の下に、浄化槽のニーズの高い国を中心に、国際会議等を活用したトップセールス、そして浄化槽セミナーによる技術のPR、ワークショップや国内研修による人材育成、浄化槽の性能評価制度等のソフトインフラ支援に取り組んでいるところでございまして、今後とも、関係機関や民間企業と連携しながら浄化槽の海外展開を戦略的に推進し、途上国の環境改善に貢献するとともに、我が国のビジネス展開に貢献できるよう取り組んでまいりたいと思います。
 なおまた、今週末にインドにおいて会議が実は予定されておりまして、国会のお許しがいただけるならば、私自らお伺いしながらトップセールスをしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いします。
○山本博司君 ありがとうございました。
 以上で質問を終わります。