参議院 文教科学委員会 第5号

○斎藤嘉隆君 民主党の斎藤でございます。今日はどうぞよろしくお願いをいたします。
 先般、委員会で、教職員定数の問題について財務省の山本政務官と議論をさせていただきました。今日は、それともかかわりがあるんですけれども、教員給与の問題について少し議論をさせていただきたいと思っています。
 今、財務省の方で、財政審などの議論だと思いますけれども、教員給与をいわゆる一般行政職並みに引き下げていくと、その方向で議論が進められていると聞いています。これ、資料の方もお配りをさせていただきましたけれども、教員の給与というのは、いわゆる人材確保法、昭和四十九年の制定でありますけれども、こちらをもって、教員が意欲と使命感を持って生き生きとした活動ができる、その職制とか給与、処遇をそれぞれにふさわしく改善をするんだということで、これはまさに自民党の当時の文教部会による提言を踏まえて制定をされたものだというように認識をしています。
 つまりは、教育を国の中心的な課題にして、そのためにも教職への優秀な人材の誘致を目的にしたこういった法律があるわけです。この法律に基づいて現行の給与水準というのが定められているということでありますけれども、今財務省の方で検討されているこの給与の削減の措置等については、この人材確保法の趣旨に照らし合わせるとやはり問題があるんではないか、法的にも問題があるんではないかと考えますが、財務省としての御見解をお聞かせをいただきたいと思います。
○大臣政務官(山本博司君) 斎藤委員、大変質問ありがとうございます。
 今の御指摘ございました人材確保法でございますけれども、義務教育の水準の維持向上を図っていくために、質の高い教員を確保し養成することは大変重要であるというふうに認識をしております。
 この点におきまして、今委員の御指摘のこの人材確保法の目的につきましては十分に理解をしているわけでございます。他方、この人材確保法につきましては、平成十八年五月に成立をいたしました行革推進法におきまして、廃止を含めた見直しを行う、こういうふうにされておりまして、さらに、この行革推進法を踏まえまして、自公政権におきましては基本方針二〇〇六、閣議決定におきまして、人材確保法に基づく優遇措置を縮減する、このことを決定したところでございます。
 教員年収に関しましては、依然として一般地方公務員年収を約十万円上回っております。こうした経緯も踏まえつつ、この教員給与の水準につきましては今後の予算編成過程で検討してまいりたいと思う次第でございます。
○斎藤嘉隆君 今言及がありました基本方針の二〇〇六、これの中に、人材確保法に基づく優遇措置を縮減をするというように示されているのは事実だと思います。
 その措置に基づいて、平成十九年以降、教員給与が一般行政職を上回っている分、つまりは二・七六%だと認識をしておりますけれども、義務教育等教員特別手当などが段階的に縮減をされてきたと。今、もう既に月額給与でいうと、教員の優遇分というのは千二百十七円であります。もちろん、一時金への跳ね返りとか、そういったものを全て総合をして、それでも月額一万円に満たない分が今、いわゆるこの人確法に基づく優遇分ということで措置をされているわけであります。
 財務省の言われますこの基本方針二〇〇六、これは平成二十二年の概算要求基準においても、この方針に基づく要求というのはもう廃止をするんだと、こういう閣議決定が実は一方でなされているのも事実であります。私は七年前のこの基本方針が今こういったことを論じる根拠になり得ないんではないかと思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(山本博司君) 今お話ございましたけれども、人材確保法に基づく教員給与優遇措置の縮減方針ということでございますけれども、これは自公政権が決定した方針でございまして、国民に対する約束としては大変重いものであるというふうに認識している次第でございます。
 近年、こうした義務教育を取り巻く環境、大きく変化をしてございますけれども、この点に関しましては、文科省ともよく連携をして意見交換をしていきたいと思う次第でございます。
 他方、こうした大きく変わった点は財政状況、これは大きく平成十八年以降も悪化をしてきております。こうした厳しい経済財政状況を十分に踏まえていく必要があると思う次第でございまして、この教員の給与水準に関しましては予算編成過程で行っていきたいと思う次第でございます。
○斎藤嘉隆君 教職云々を語るときに、金がどうこうという、給料がどうこう、高いからどうこうというのは、やっぱりそれは僕自身もふさわしいとは思いません。ただ、今現政権の下で、教育というのは政権のもう中心的な課題とされているわけですよね。そんな状況の中で、改めて教職に優秀な人材を誘致していくというのは、非常に私は重要なことだと思っています。こういう政権そのもののスタンスからいっても今回のこういった方向性というのは反するんではないか、そのように率直に思いますが、いかがでしょうか。
○大臣政務官(山本博司君) やはり全体的には、こうした教育の充実ということを考えたときには、教職員の方の待遇という点では、これはやはり全体の、やる気のある教員の方の士気を高めていく、そういう意味でめり張りのある給与の部分でございますとか、若しくは外部人材のこうした支援、こういうことも含めて教職員の方々の学校現場のこういう負担を配慮していく、こういうこともすごく大事ではないかなと思っております。
 ですから、教職員の給与以外に、平成十九年以降、教員給与を優遇する特別手当、これを縮減する一方で、部活動手当、例えばこれは週休日四時間程度千二百円を二千四百円に倍増するとか、若しくは副校長の処遇で管理職手当を一五%導入するとか、こういう部活動手当、こういうことを倍増しているとか、こういうめり張りの利いた給与体系、これを推進をしてきたこともございます。
 また、平成二十五年度予算におきましては、学力向上に向けた補習等、地域人材を活用して、これ七千人ぐらいの規模でございますけれども、補習のこうした人材活用でございますとか、さらにソーシャルワーカーとかいじめ等の問題のカウンセリングを含めた方々、こうした様々な施策等の充実、こういうことも講じている点でございます。
○斎藤嘉隆君 今るる述べられた様々な措置、それは理解をしています。
 政務官、僕は委員会でもいろいろ今までも一緒にお仕事させていただいて、本当にこの教職、教員に対する様々な待遇改善、こういうものの重要性というのはやっぱり誰よりも御認識をされているんではないかなと思います。
 ちょっと視点を変えますけれども、この教員への人材の確保というのは本当に今なされているんでしょうか。といいますのも、今、ややもすると教員バッシング的な風潮がいまだに続いておりますし、給与の優遇措置もあるといっても、さっき僕が申し上げたみたいに本当にごく僅かなところであります。各自治体の教員採用試験の倍率なんかも、今年度の試験の合格者、もう発表されていますけれども、都市部を中心に下がる傾向があって、今多くの県、市でもう三倍を切っているんですね。一次試験なんかはもう平均でも二・七倍という状況であります。
 一般の企業、民間企業なんかでも倍率が三倍を切るともう質が確保できないんだと、保てないんだと、そんなようなことも言われておるような状況です。採用試験に合格しても、給料もどんどん下がっていますし、非常に社会からの厳しい目もありますし、四月からの就職を辞退をするという方も非常に多い。これも昨今の傾向ではないかなと思います。
 こんな状況をつくる一方で質の向上を叫ばれている今の政府でありますけれども、僕は全く相矛盾するんではないかと。教員の社会的地位の低下につながって、学校へいろんな形でクレームも増加をしておりますけれども、こういったものとも無関係ではないと私は思っています。
 この教職への人材確保の現状と必要性について、いま一度政務官御自身のお考えをちょっとお聞かせいただけませんでしょうか。
○大臣政務官(山本博司君) 今委員御指摘ございましたように、この教育業界の様々な課題というのは大変多くの課題があると思います。そういう意味では、教職員の方々のそうした様々な負担をなくしていくというようなことでございますとか、その支援というのは大変必要であると思います。
 一方、全体的な財政ということで考えていきますと、一般の、年収ベースでいいますと、教員が約六百七万円、これは文科省の試算でございますけれども、実際やはり、一般行政職が五百九十七万、年収ベースでは十万円近い形の差があるということも含めて、そういう点はまた配慮しないといけないのかなということは、私は、財務省に来て様々な全体を見る中で、この公平感ということも含めて考えないといけないということは認識しております。
○斎藤嘉隆君 ありがとうございます。この件についてはという注釈付きで、本当にありがとうございます。大臣と全く考えは同じだなというように思います。
 もう一点だけ、山本政務官にお聞きをしたいと思います。
 調整額、さっきの時間外手当のことですけれども、これはいわゆる時間外手当として本来あるべきものの代替として措置をされているという認識をしているんですね。今、実態とも全く合っていないんだというお話もさせていただきました。財務省さんが、この教員の給与、様々な諸手当も含めて引下げが必要だということをおっしゃるのであれば、この時間外勤務手当のところをもう手当化していく、本当に、調整額ではなくてですね。そういったことも、引上げが困難ならば、全体の、そういったことも考えていいんじゃないか、それがまさにめり張りのある給与体系になってくるんじゃないかと思いますが、このことについてはいかがでしょうか。
○大臣政務官(山本博司君) ありがとうございます。
 今の委員御指摘の部分でございますけれども、公立学校の教育は、時間外勤務手当支給されない代わりに、今ございます四%分の教職調整額、これが支給されていると承知しているわけですけれども、この、じゃ、教職調整額の支給の在り方に関して、今文部科学省を中心に検討されてきておりますけれども、仮にこうした点の見直しを行う場合ということに関しますと、例えば、今、教職調整額、これは本給扱いになっております。時間外の場合ですと、本給でないとなるとボーナスの算定基準に含まれてこないという、こういう問題等の論点でございますとか、先ほどから言います一般行政職の水準を超えた部分の本給の取扱いの問題とか、若しくは教員のみに対する優遇措置である義務教育等の教員の特別手当の在り方、こういう論点も含めて、併せてこの時間外勤務手当の検討ということも含めて進める必要があるというふうに認識をしております。
 いずれにしても、この教職調整額の見直しという御指摘に関しましては、この時間外勤務手当の関係以外、様々なこうした多くの論点もある課題と、このように認識をしている次第でございます。