参議院 厚生労働委員会 第9号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、救急医療体制と災害医療体制についてお伺いを申し上げたいと思います。また、先日、委員会で視察をいたしました周産期医療の課題も含めましてお聞きをしたいと思っております。
 まず、救急医療体制の整備についてお伺いを申し上げたいと思います。
 一昨年の八月に奈良県におきまして発生をしました妊婦救急搬送の事案、また昨年十月にも都内での転院搬送の受入先が決まらず、治療が遅れて結果として妊婦が亡くなるという事故が起こり、大きな社会不安となったわけでございます。我が党といたしましても再発防止策の推進に取り組んでまいりましたけれども、この救急医療に対する需要の増大、また受入れ体制の確保の困難さなど、様々な課題が浮かび上がってきております。本日は、こうした課題の解決に向けて政府としてどのように取り組んでいるのか、現状についてお聞きを申し上げたいと思います。
 まず、周産期医療の確保策についてお聞きをしたいと思います。
 妊婦を始めとする救急搬送に時間が掛かる問題が続いた背景、これは慢性的な医師不足問題とともに救急医療体制の複合的な要因が考えられるわけでございますけれども、特に周産期医療と救急医療が密接に連携を図りながら対策を進める必要がございます。厚生労働省では、この二つの部門の連携状況について各都道府県から昨年末に状況報告を受けていると思いますけれども、この連携強化についてどのように取り組むお考えなのか、まずお聞きしたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 脳出血等の脳血管疾患を発症するなど産科だけでは対応困難な妊婦の救命には、産科と脳神経外科、心臓血管外科等の診療科の連携が必要となります。このため、平成二十一年度予算において、妊産婦の状況に応じて一般の救急医療機関を含めた適切な搬送先の調整等を行う母体搬送コーディネーターの配備に対する支援等を新たに盛り込んだところであります。
 また、診療科間の連携に関しては、本年三月に取りまとめられた周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会の報告書において、産科領域以外の妊産婦の救急患者にも適切に対応できるよう、中長期的視点に立って周産期母子医療センターの指定基準を見直すこと、医療現場において周産期医療部門と救急医療部門等の連携を強化して地域の実情に即した母体救急医療体制を提供するため都道府県に検討の場を設けることなどが提言されたところであります。
 厚生労働省としては、これらの提言を踏まえ、周産期母子医療センターの指定基準の見直しを行うとともに、都道府県の周産期医療協議会において、母体への一般救急医療の提供について救急医療対策協議会やメディカルコントロール協議会等と連携することを求める予定であります。
○山本博司君 ありがとうございます。
 今国会では、消防法の改正案が提出されております。そこでは消防機関と医療機関の連携推進のための仕組み、若しくは救急搬送受入れに関する協議会の設置が規定されているわけでございます。傷病者の速やかな受入れが行われるようあらゆる対策を実施をしていただきたいと思います。
 また、早産児や低出生体重児などの集中治療を行う新生児集中治療室、NICUは、先日も委員会で視察をさせていただきましたけれども、慢性的に不足状態が続いております。また、ハイリスク出産に対応できる母体胎児集中治療管理室、MFICUとともに設置促進とか増床に取り組むべきと考えますけれども、この御見解をお聞きしたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 従来より、母体やお子さんのリスクの高い妊娠にも対応できる周産期医療体制を確保するため、新生児集中治療管理室や母体胎児集中治療管理室の整備に対する支援を行っているところであります。昨年十月の東京都における妊婦死亡事案を受けて開催した周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会の報告書において、NICUについては、従来の出生一万人対二十床を見直し、二十五から三十床を当面の目標として整備を進めることが必要であると提言されたところであります。
 厚生労働省としては、平成二十一年度予算において、NICUやMFICUの設置を指定要件とする総合周産期母子医療センターの運営に対する支援の充実のほか、NICUやMFICUを有する地域周産期母子医療センターへの運営費の補助を新たに盛り込んだところであります。また、政府・与党による経済危機対策においてもNICUの拡充等が盛り込まれており、文部科学省や各都道府県等とも連携し、NICUやMFICUの整備など周産期医療の充実に取り組んでまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非ともその充実を図っていただきたいと思います。
 さらに、先ほど申し上げました昨年十月の都内の妊婦は脳内出血で亡くなったことから考えますと、安心の出産に万全の体制をつくるには、単に産科医だけではなくて、脳神経外科医、又は麻酔科医など複数の診療科が連携をした総合的な対応、これが必要であると考えます。この点につきましてどのように取り組む考えなのか、この点も併せましてお聞かせをいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 産科と脳外科等との連携強化については、先ほど申し上げましたように、母体搬送コーディネーターの配置の支援、周産期母子医療センターの指定基準の見直し、母体への一般救急医療の提供体制の確保を進めることとしております。
 例えば、東京都においては、昨年秋の妊婦死亡事案を踏まえ、救命救急センターと総合周産期母子医療センターが密接に連携することにより、緊急に母体救命処置が必要な妊産婦を必ず受け入れる母体救命対応総合周産期母子医療センターを指定し、脳卒中や出血性ショック等の妊産婦が迅速に救命処置を受けられる体制の確保を図ったところと聞いております。
 厚生労働省としては、周産期医療体制の確保、充実を図るため、各都道府県と協力しながら、その取組を引き続き支援してまいりたいと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 続きまして、医師不足対策についてお聞きをしたいと思います。
 先ほども坂本委員からのお話ございました、女性の問題ございましたけれども、産科医不足を解消するには、比較的多いとされております女性医師の方々が働き続けることのできる環境づくりが大変重要であるわけでございます。結婚又は出産を機に仕事から離れてしまう場合があり、短時間勤務の導入とか待遇の改善、様々なあらゆる対策を講じて働き続けられる、また一度仕事を辞めても復帰しやすい支援をすべきであると考えるわけでございます。この点に関しまして具体的にどのように取り組んでいくお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 近年、医師国家試験の合格者に占める女性の割合が約三分の一に高まるなど医療現場における女性の進出が進んでおり、出産や育児といった様々なライフステージに対応して女性医師の方々が安心して業務に従事していただける環境の整備が重要であります。
 このため、現在、病院内保育所の運営への支援、退職した女性医師に対する復職のための研修を支援する事業や女性医師バンクへの支援、短時間正規雇用や交代勤務制を導入する病院に対する助成事業、病院内の就業環境の改善等について効果的な総合対策を行う医療機関への支援等に取り組んでいるところであります。
 こういった対策を総合的に実施することにより、女性医師の方々が安心して就業の継続や復職ができるような環境の整備とキャリアパス形成の支援に努めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非とも具体的な取組をお願いを申し上げたいと思います。
 次に、救急医療体制の課題につきましてお伺いをしたいと思います。
 少子高齢化の進展や住民の意識の変化に伴いまして、救急の利用が増大、多様化をしているわけでございます。救急搬送人員はこの十年間で五〇%以上増加をしております。その中には、軽症の場合とか救急車を呼ばなくてもいいような不適切な利用も増えていると聞いております。
 そうした状況を転換をし、救急車を呼ぶかどうかを判断するためにも電話相談事業の充実が求められていると思います。公明党も積極的に推進をしてきましたシャープ八〇〇〇番の小児救急電話相談事業は急な対応に戸惑う保護者の不安解消に役立っていると思いますが、この対象を拡大をし、高齢者を含む成人を対象にした事業にすることも検討すべきではないかと考えます。小児救急電話相談事業の推進状況とこの事業の対象者の拡大について、厚生労働省の見解を伺いたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 小児救急電話相談事業につきましては、平成十六年度から行われている地域の小児科医等による小児患者の保護者等向けの電話相談であり、保護者の不安解消や症状に応じた迅速な対応などに成果を上げております。
 平成二十一年三月末時点では四十五の都道府県で導入しており、平成二十一年度予算において、深夜帯の電話相談の実施やすべての都道府県での実施など、小児救急電話相談事業の更なる充実が図れるよう必要な関係経費を盛り込んでいるところであります。
 この電話相談の対象者を成人や高齢者等に拡大することにつきましては、市民が救急車を呼ぶべきか否か迷う場合に、医師、看護師等が救急相談に応じる救急安心センターモデル事業を平成二十一年度において総務省消防庁が実施することとしており、総務省消防庁と連携し、その結果等を踏まえ検討を進めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 今、話がございました東京消防庁では、シャープ七一一九番、救急相談センター、こういったことを含めての対応が広がっているわけでございます。是非とも支援策を講じていただきたいと思います。
 それでは、大臣にお聞きしたいと思います。
 現在、初期救急医療、また、二次救急医療に要する財源につきましては、体制整備に対する国からの補助金が、三位一体改革などによりまして一般財源化、又は税源が移譲され、地方の自主財源として地方自治体の裁量にゆだねられているわけでございます。このため、地域によっては医療への配分が小さい場合もあります。また、救急医療自体では基本的に採算が取りづらい分野であることからも予算配分が十分ではない場合もあると思います。
 しかしながら、国民の命を守るという観点から考えれば、地域によって救える命に違いが出るようなことがあってはならないと思います。国が何らかの一定の基準を示して必要な予算を十分に確保できるよう充実を図るとともに、基準に満たない地域が出た場合には財政支援を含めて検討すべきであると考えます。以前、道路特定財源の一般財源化の活用先の一つとして救急医療体制の整備が挙げられたこともございました。是非とも検討いただきたいわけでございますけれども、この点に関しての大臣の見解を伺いたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 地域の中核となっている救急医療機関、これが非常に今負担が生じていますので、そういう意味で、今委員がおっしゃったような財政措置をどうするかと。これは、二十一年度予算におきましては救急医療対策予算、これは前年度百億円程度でしたけれども、これを倍の二百五億円まで計上しました。特に、休日、夜間の救急医療を行う医師に手当、直接財政支援をやります。それから、管制塔機能を備えた病院に対する適切な財政支援、こういうことにこの予算を使いたいというふうに思っています。それから、都道府県の財政事情も非常に厳しいことが分かっておりますので、この都道府県の負担分を三分の二以内とすることによって、都道府県の財政負担能力に応じた病院の補助を可能なようにいたしました。さらに、今般の経済危機対策において、地域医療再生計画に基づいて地域医療を守るんだと、これは大きな一つの旗になっておりますんで、この下に地域が本当に必要としている救急医療体制を確保していきたいと思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。是非とも、財源確保を含めた充実をお願いを申し上げたいと思います。
 続きまして、救急搬送体制の整備につきまして伺いを申し上げたいと思います。まず、ドクターヘリの導入促進について伺いたいと思います。
 二〇〇七年六月に救急医療用ヘリコプターを用いた救急医療の確保に関する特別措置法が成立したことに伴いまして、ドクターヘリ運航のための助成金交付事業、またドクターヘリの全国配備が進められております。昨年の夏にはテレビドラマでも放映され、大変注目を浴びるようになりました。我が党も導入促進に積極的に取り組んでまいりましたけれども、今後も大臣のリーダーシップで更なる導入ができるよう期待しているわけでございます。
 そこで、現在までのドクターヘリの導入状況と全国配備に向けた大臣の決意、まずお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 急病、それから急な事故、こういうことに遭われた方、ドクターヘリが本当に活躍してくれていて、これで助かった命がたくさんございます。それから、早く処置をするので後遺症が残らないというようなこともありますので、大変なメリットがございます。
 二十一年度予算におきましては、同一県内での二機目に対する補助を含めまして、前年度から八機増やして二十四機分の予算を盛り込んでおります。これは約、地方が八千五百万、国が八千五百万ぐらいの維持費が年間掛かりますので、地方財政にとって非常に大きな負担になるということで、なかなかこちらが二機目をどうですかと言われても、県の方でどうかと。これは、特に沖縄の場合がそうでございますけれども、あれだけ島が多くて人数が多くてもそういうことなんで、名護でMESHというNPOの方々が自発的にやっていただいている、これはもうみんなで今支援をしていますけれども、こういうことも含めて、今後ドクターヘリの普及、そして全国に配備して複数各県に置くと、こういう方向で更なる努力をしてまいりたいと思っております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 総務省においても特別交付税の自治体の負担の軽減に努めているところでございますけれども、政府一丸となったこうしたドクターヘリの普及に取り組んでいただきたいと思います。
 そうした中で、ドクターヘリは民間への委託による場合が多いために、日中の運航に限定をされます。また、遠距離の飛行には向かないということもありまして、様々な制限があるわけでございます。そのために、消防とか防災ヘリ、若しくは自衛隊機、海上保安庁のヘリコプターなどの活用がございます。
 そこで、防衛省にお伺いをしたいと思いますけれども、自衛隊機の出動要請の条件、また昨年一年間の救急搬送の出動状況について御説明いただきたいと思います。
○政府参考人(岸本邦夫君) 今お尋ねの件でございます。
 まず、自衛隊は、離島などからの救急患者の輸送を自衛隊法第八十三条に基づく災害派遣活動の一つとして実施しておりますが、これは、地方公共団体が行います適切な医療施設までの急患輸送手段の確保を含む住民への適切な医療サービスというものを国、この場合イコール自衛隊でございますが、国が補完するものとして、都道府県知事の要請を受けて実施するという仕組みでございます。
 昨年度、平成二十年度の件数でございますが、四百二十四件ございまして、特に要請が多い都道府県としては、お話出ていますように、離島の多い長崎県百二十三件、鹿児島県百十一件、沖縄県百三件という状況でございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 今、四百二十四件とございましたけれども、この救急搬送に自衛隊機の活用も頻繁に行われているわけでございます。これからドクターヘリの全国配備が進むことを考えますと、役割分担や連携体制の構築が必要であると考えます。
 昨年八月にまとめられました救急医療用ヘリコプターの導入促進に係る諸課題に関する検討会の報告書におきましても、役割分担や連携体制の重要性について指摘をされております。ドクターヘリの全国配備が前提ではございますけれども、こうした他の機関が運用するヘリコプターとドクターヘリとの連携について今後どのように考えているのか、厚生労働省から御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) ヘリコプターを活用した救急医療の確保においては、ドクターヘリの導入を促進するとともに、いわゆるドクヘリ法の規定に基づきまして、地域の実情に応じて消防防災ヘリなどの他の機関が運用するヘリコプターとの役割分担及び連携を図ることにより、地域の救急医療体制を総合的に確保することが重要であると考えられます。
 他の機関が運用するヘリコプターについては、ドクターヘリとは異なり、救急医療用器材を常備していない一方で、一般的には飛行可能距離が長く、夜間飛行が可能である等の特徴を有しますことから、長時間の飛行を要する患者搬送等で効果を発揮すると考えております。
 今後とも、ドクターヘリの導入を進めるとともに、併せて他の機関の保有するヘリコプターとの連携を図りながら、ヘリコプターを用いた救急医療の充実に努めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非とも、救えない命はないという、そういう体制の整備に取り組んでいただきたいと思います。
 そうした中で、特に離島の救急搬送についてお伺いをしたいと思います。本土に隣接をしている離島ならば、ドクターヘリ、近距離であれば対応ができるわけでございますけれども、小笠原諸島とか南西諸島など本土から遠距離にある離島への救急搬送体制ではドクターヘリ、なかなか難しい面がございます。そのサポートする手段が必要であると考えるわけでございます。
 先日、我が党のドクターヘリ全国配備推進プロジェクトチームでは、救急医療に携わる医師らのグループから、自衛隊の飛行艇US2に医療機器とともに医療スタッフが搭乗して搬送するシステムの構築の要望を伺ったわけでございます。現在、東京都からの要請でも、約、昨年五月から八月までで十三回、小笠原諸島の父島等の遠距離の部分で十三回の患者搬送の実績もこのUS2であるというふうに聞いております。搬送時間の短縮が期待できるために、全国規模に拡大していただきたいとの要望であるわけでございまして、検討に値するものと考えるわけでございます。例えば、北海道であれば東部地域の利尻島とか礼文島、また伊豆諸島であれば南部の八丈島等、また小笠原諸島もそうでございます。トカラ列島とか、また沖縄以降のこの先島、宮古島とか石垣島の地域もこうした飛行艇が十分活用できる検討の部分ではないかなと思います。
 滑走路が短く、八百メートルぐらいでも着陸ができますし、また海にも着陸ができるということで、非常にこうした条件が不利な離島地域、これこそ救急搬送の整備という意味ではこの飛行艇等も含めた検討が必要ではないかなと、十分な配慮をすべきと考えますけれども、厚生労働省の御見解をお伺いをしたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 離島における救急医療では、救急患者を島外の救急医療機関に迅速に搬送できる体制の確保が重要であると考えており、従来よりドクターヘリの活用等を推進しているところであります。
 他方、自衛隊の救難飛行艇については、ドクターヘリに比べて飛行可能な距離が長いことから、飛行距離が長くなる離島から救急患者を搬送する際に活用することがあると聞いております。例えば、先月の例でも、お話にありましたUS2が東京都の南鳥島から急患を輸送した例がございました。
 今後とも、ドクターヘリの導入を進めるとともに、自衛隊の救難飛行艇も含め、他の機関の保有する航空機の活用を図る観点から、関係省庁と連携を図ってまいりたいと考えております。
○山本博司君 是非とも検討をお願いをして、進めていただきたいと思います。
 続きまして、災害医療体制の整備につきましてお伺いを申し上げたいと思います。
 阪神・淡路大震災の教訓を生かして災害時の医療体制は大きく転換をし、二〇〇五年からはDMATと呼ばれる災害派遣医療チームの養成が行われるようになりました。昨年も岩手・宮城内陸地震などで大きな効果が発揮されており、今後は全国的な体制の整備が求められているわけでございます。また、災害拠点病院や災害医療情報システムにつきましても全国的な配備が進められております。
 そこで、ここでは災害時の医療体制の整備状況について何点かお伺いをしたいと思います。
 まず、DMATの体制整備について伺いたいと思います。DMATは大規模な災害や事故が発生したときに迅速な派遣が可能な災害派遣医療チームのことでございまして、避けられる災害死を出さないために大きな役割が期待をされております。二〇〇五年三月から東京立川の国立病院機構災害医療センターと兵庫県災害医療センターの二か所においてDMATに参加する医師、看護師などの研修が実施をされております。私も先日、参議院の災害特別委員会でこの立川の災害医療センター、DMAT等の内容の話を聞かさせていただきました。国の目標では二〇一一年までに全国で千チームを養成する計画となっております。
 そこでお伺いをいたしますけれども、この目標に対して現状はどのようになっているのか、またこの目標の達成に向けてどのように取り組まれているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 災害派遣医療チーム、DMATは、大地震等の災害発生時に被災地に迅速に駆け付け、災害の急性期に救急治療等を行うための専門的な訓練を受けた一チーム五名から成る医療チームであります。このDMATの養成につきましては、政府の中央防災会議において、平成二十三年度末までにDMATの養成研修を重点的に進め、千チームまで増強する計画としており、平成二十一年三月末現在で五百九十六チームを養成したところであります。毎年、約百二十チームを養成する予定としております。
○山本博司君 是非ともこの目標達成を目指して進めていただきたいと思います。
 更にお伺いいたしますけれども、再研修、再教育の重要性ということでございます。
 災害はいつどこで起きるか分からないために、状況に合わせた対応が必要でございます。また、先日も立川でも様々な技術が新しくなっておりまして、こうした日々新たな技術の習得というのが求められております。一度の研修ですべてに対応できるとは限りません。そうした意味で、一度研修を受けた隊員にも一定期間が経過した場合は再研修の必要性があると考えますけれども、この点につきましての御見解をお聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) DMATについては平成十七年から養成を行っているところでありますが、現在の研修は養成研修のみであり、DMATが活動するために必要な知識、技術の維持が課題となっております。このため、平成二十一年度よりDMAT技能維持研修として試験的に地方ブロックごとにブラッシュアップ研修を行う計画としており、今後、再研修の円滑な実施に向け検討を進めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 次に、広域災害救急医療情報システム、EMISについてお伺いをしたいと思います。
 このシステムに関しましては、災害時の最新の医療機関の受入れ状況、また被災状況などを全国で共有することができ、DMATが病院支援活動などを行う際にも必要な情報となることから、全国的なシステムの導入が求められているわけでございます。
 このシステムの導入状況、どのようになっているのか、お聞かせいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 広域災害救急医療情報システム、EMISについては、被災地で迅速かつ適切に医療が提供できるよう、被災地の医療機関がその稼働状況、被災状況やDMATの活動状況などを入力し、都道府県や医療機関が情報を共有することを目的として平成八年度より運用しております。
 このシステムを導入している都道府県は、平成二十一年四月現在で三十九都道府県であります。システムを導入していない八県については、各県の災害医療担当部局が医療機関の稼働状況、被災状況を当該医療機関に代わって入力することとなっております。
 本年三月の全国医政関係主管課長会議において、システム未導入の県においては、災害時を想定した入力訓練を実施し、医療機関の稼働状況、被災状況等を確実に把握できるのかを検証するよう指導したところであります。
○山本博司君 災害の発生時にはこうした一刻も早い正確な情報必要でございますので、全国的な導入の促進をお願いを申し上げたいと思います。
 それでは、災害拠点病院についてお聞きをしたいと思います。
 二十四時間いつでも傷病者の受入れが可能であり、ヘリコプターの発着所や一定の医療設備や資機材を準備しているため、災害時に大きな役割を果たすのがこの災害拠点病院でございますけれども、この整備状況につきましてお聞きしたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 災害拠点病院については、都道府県が被災地の医療を確保するため、多発外傷等の重篤救急患者の救命医療を行う機能等を有する病院を指定するものであり、平成二十年七月現在で五百八十二の病院が指定されております。災害拠点病院として求められる施設の整備基準としては、備蓄倉庫の保有、自家発電及び受水槽の保有、ヘリポートの保有、診療に必要な施設が耐震構造であることが定められております。
 この整備状況については、平成十七年二月時点で備蓄倉庫を保有しているものが五九・六%、自家発電は一〇〇%、受水槽が九八・九%、ヘリポートを保有しているものは近接地に使用可能なヘリポートを含めまして九九・四%であります。災害拠点病院の耐震化については、平成二十年五月時点ですべての建物が新耐震基準となっているのが五八・六%、一部の建物が新耐震基準となっているものが三七%であります。
○山本博司君 この災害拠点病院の指定制度、一九九六年からスタートしておりますけれども、当初は各地域への設置を優先したために、要件を満たしていなくても指定したケース、これがあるわけでございます。しかし、それから十年以上が経過をして、量だけでなくて質も求められている中で、ヘリポートの確保とか災害時の増床用簡易ベッドの備蓄などの設備面の整備は大変重要となってきております。
 こうした、災害拠点病院として指定をしていながら現状において指定要件を満たしていない施設に対してどのような対応をされるのか、御説明をいただきたいと思います。
○政府参考人(外口崇君) 災害拠点病院の整備基準で求められる施設及び設備の整備については、国庫の補助を行っているところであります。特に、耐震補強工事に対する補助事業については、平成二十一年度予算において国の負担割合を三分の一から二分の一へ引き上げたところであります。
 また、整備基準を満たしていないにもかかわらず災害拠点病院の指定を受けている病院については、本年三月の関係主管課長会議におきましても、都道府県に対し整備基準を満たすようお願いしたところでございます。
○山本博司君 それでは、最後に大臣にお聞きしたいと思いますけれども、この指定要件の一つにもなっております、先ほどからも耐震化のお話がございました。この点に関しましてお聞きをしたいと思います。
 昨年五月から六月にかけまして行われました調査によりますと、国の耐震基準を満たしている病院、今御指摘ございました、全国で半数にすぎないということで、災害拠点病院でも六割にとどまることが明らかになっております。地震を始めとした災害発生時に、負傷者の治療などで多くの人が利用をするこの災害拠点病院が倒壊の可能性があるというのでは、安心して治療を受けることができないわけでございます。
 私も、四国の災害拠点病院、新居浜とか、また鳴門、そしてふるさとの八幡浜の病院にも行ってまいりましたけれども、ひび割れがあるとかという大変厳しいような状況もあるわけでございまして、こうしたほかの施設に比べても耐震化が不可欠な施設であると思います。今回の新しい経済危機対策におきましても、災害拠点病院の耐震化につきましては対策が講じられておりますけれども、こうしたことに関しましては一刻も早く実施をすべきと考えます。
 そこで、大臣に災害拠点病院の耐震化に向けた決意をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) この災害拠点病院の耐震化の目標ですけれども、昨年四月の中央防災会議で、自然災害の「犠牲者ゼロ」を目指すための総合プランというのを策定しまして、二十二年度までに災害拠点病院の耐震化率を七割としようと、これを目標にしております。
 それで、先ほど局長がお答えしましたように、まず二十一年度予算において、耐震補強工事に対する国の負担割合を三分の一から二分の一に引き上げました。さらに、今回、十日の日に政府・与党が経済危機対策をまとめましたけれども、この中にも災害拠点病院の耐震化ということが特記をされております。
 一つ学校と違って難しいのは、患者さんがおりますから、入院している患者さんを動かさないとできないんで、非常にその時期の設定が難しい。しかしながら、これは非常に大切な課題でありますんで、全力を挙げて耐震化の促進を図りたいと思っております。
○山本博司君 是非とも取組をお願いをしたいと思います。
 以上で質問を終わります。ありがとうございました。