参議院 厚生労働委員会 第3号

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、生活保護制度に関しましてお伺いをしたいと思います。
 長引く景気の低迷で、生活保護を受ける世帯、かつてないペースで増加をしております。六月現在で約百三十八万世帯、百九十万人とも言われておりますけれども、特に高齢者世帯や母子世帯だけではなくて、再就職が困難で生活苦に陥っている労働者の増加が背景にあるとも指摘をされております。そこで、現状について御報告をいただきたいと思います。
○政府参考人(清水美智夫君) 直近のデータでございます今年の七月現在でございますけれども、生活保護受給者は百九十二万人でございます。これは戦後最低でございました平成七年の受給者の二倍以上でございます。また、保護率一五・一パーミルでございますが、この水準は昭和四十年代前半と同程度でございます。先生御指摘のように、特にいわゆるその他世帯、高齢世帯でもない、母子世帯でもない、傷病・障害者世帯でもないその他世帯の伸びが大きいわけでございまして、その中でも単身の方の伸びが著しい状況でございます。
 具体的に二十年の九月と二十一年九月を比較したデータで申し上げますと、全保護世帯の保護開始は一万六千から二万五千と九千世帯増加してございますが、そのうち今申し上げたその他世帯の増が約六千世帯ということで三分の二を占めている状況でございます。また、その保護の開始の理由を見てみますと、失業でございますとか、その他働きによる収入の減少という理由の占める割合が多うございます。このことから、やはり厳しい経済雇用情勢の影響が色濃いと考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この生活保護、もう今百九十二万人ということでお話ございましたけれども、今この生活保護費は国が四分の三、地方自治体が四分の一を負担をしておりますために、そうした増加が続きますと地方自治体に大きな影響が出てくることが予想されます。もう既に財源不足が顕著となりまして、当初の予算だけでは足りないために補正予算を組んで対応する自治体も出ております。
 十月八日の閣議決定の緊急総合経済対策では、生活保護、医療保険について、平成二十二年度に必要となる追加財政措置を講じると、こうございます。また、現在審議されております今年度の補正予算でも、生活保護、医療保険による生活支援に二千二百八十二億円が措置されております。これだけで十分だと考えているのか、この保護世帯増加に対しまして万全の体制が取れていると考えているかどうか、大臣の見解を伺いたいと思います。
○大臣政務官(岡本充功君) 今委員御指摘のとおり、生活保護費の負担金についてはこれまでも過去の保護動向等に基づいて所要額を計上しているところでありまして、今般の補正予算におきましても、この保護動向を見る中で不足分が生じる可能性をかんがみ、生活保護費の追加財政措置として二千二百十一億円を計上したところでございます。トータルとして、国費ベースでありますが、二兆四千二百十七億円ということになっておりますけれども、これからまた生活保護にかかわる金額につきましては、こうした保護動向を見ながらその金額を決めていくということになろうかと思います。
○山本博司君 しっかりこの後の地方自治体、困らない形での対応をお願いをしたいと思います。
 それでは、制度の内容に関して、この生活保護受給世帯の支援を行うケースワーカーの人員の不足に関しまして伺いたいと思います。
 社会福祉法では、市部では生活保護世帯八十世帯に一人のケースワーカー、町村部では同六十五世帯につき一人のケースワーカーを配置すると、このように規定してございます。
 しかし、現状は、この保護世帯の増加に関しまして、ケースワーカーは大変厳しい状況でございます。例えば大阪市では、一人が担当する被保護世帯、もう二百世帯近くになっていると言われております。この現状をいろんなところでお聞きしますけれども、この保護世帯が増え続けて、通常の事務のみでこういう就労支援であるとかきめ細かな対応ができないということも言われているわけでございまして、単なる人員増だけでなくて、抜本的な体制の整備が求められております。
 この現状とそうした人員不足に対する厚生労働大臣としての見解をお聞かせいただきたいと思います。大臣。
○国務大臣(細川律夫君) このケースワーカーの確保ということにつきましては、これまで地方交付税を通じた財政支援によって総務省に働きかけて増員を図ってきたところでございます。
 一方、今委員が御指摘のように、このケースワーカーの皆さんが大変、仕事の量もその質も大変多くなって大変だということも理解をいたしております。
 そういう意味で、この負担をできるだけ軽減をするということで、生活保護の受給者についての就労の方のサポートをする就労支援員の配置、こういうのを数を増やしていくとか、あるいは、医療レセプトの点数等についての業務については外部委託をするとかというようなことを含めまして、できるだけケースワーカーの皆さんの負担の軽減をいろいろ図っているところでございます。
○山本博司君 現状、本当にこの現場は大変なわけでございますので、この拡充ということも含めて様々な対応を考えていただきたいと思います。
 続きまして、夏季加算に関しましてお聞きしたいと思います。
 今夏の記録的な猛暑によりまして、熱中症による死者が相次ぎました。そうした状況を受けまして、公明党は九月一日に猛暑対策ビジョン二〇一〇、これを発表いたしまして、その中に、この生活保護受給者に対しまして冷房費など夏場に掛かる光熱費を上乗せするような夏季加算制度の創設、これを提案をしてございます。
 現在、暖房費がかさむ冬に関しましては冬季加算が設けられておりまして、夏季につきましても、夏につきましても必要性を議論すべきではないかと、こう思いますけれども、いかがでしょうか。
○大臣政務官(岡本充功君) 御指摘の夏季加算につきましては、本年の七月から九月まで、夏季における電力消費の程度の実態把握のため、一般世帯におけるいわゆる電力消費量、そして生活保護受給世帯の夏季の電力消費の程度を比較をし検討しておるところでございます。年内をめどに検証をする予定でございます。これがまず一点目。それと同様に、生活保護受給世帯のクーラーの保有率についても、年内をめどに実態把握をしようと考えております。
 こういったこと等併せながら、現行の冬季加算の在り方を含めた生活保護基準全体の多角的な検証を行っていった上で慎重に検討をしていくということになろうかと思っております。
○山本博司君 是非とも、実態も含めまして、その調査をした上での対応をお願いをしたいと思う次第でございます。
 続きまして、自立支援に関しましてお聞きをしたいと思います。やはり生活保護の方々、この脱出戦略をどうしていくかということが大変大事でございます。生活保護の受給世帯の方が安定した生活を再建をして地域社会の一員として自立した生活を送るようにするためには、就労による経済的な自立のための支援のみならず、健康管理などの日常生活の自立支援、また社会的なつながりの回復などの社会生活における自立支援などを総合的に取り組むことが大変重要でございます。
 ちょうど私は、十月二十六日に北海道釧路市を訪れまして、釧路市が取り組んでおるこの自立支援プログラム、これを視察いたしました。ここでは、職業訓練の前に介護施設でのボランティア活動などを通して生活意欲の向上や社会参加に対する意識啓発を図るなど、受給者本人の意欲を引き出すプログラムが組まれていたわけでございます。
 釧路は大変産業等で厳しい状況がございまして、人口約十八万人ですけれども、今二十人に一人が生活保護と言われておりまして、大変厳しい状況でございました。そういう中で知恵を出し合いながら、障害者の作業所とか介護施設とか、若しくは動物園であるとか、また清掃であるとか、そういうボランティア活動、なかなか意欲の少ない中でそういったところに出て障害者の方々の取組を見る中で、やっぱり生きる意欲とかまた仕事に対して前向きに取り組もうと、こういうことで、約二百名ぐらいの方々が十三のメニューぐらいのそういうメニューで、プログラムといいますか、大変参考になったわけでございます。
 こうした自立支援のプログラムといいますのは、平成十七年より各自治体で策定されることになっておりますけれども、いまだに有効に機能していない自治体もあるというふうに指摘をされております。この釧路方式と呼ばれる大変先進的な取組が全国でも展開をされまして、大きな効果を発揮できるように充実を図るべきだと思いますけれども、大臣、いかがでしょうか、大臣。
○国務大臣(細川律夫君) 生活保護を受けている方の自立支援とかあるいは就労支援の推進と、こういうのは本当に重要な問題でございまして、これまでも平成十七年から導入をされておりました自立支援プログラムというものを通じまして、ハローワークや保健所等を活用した様々な取組が行われてきているところでございます。
 一方、今、山本委員が御指摘されたような釧路市のように、企業やNPOと福祉事務所が連携をいたしまして、いわゆる新しい公共ということによる生活保護を受けている方の社会的な居場所づくりに関する先進的な取組というのが自治体にも見られるということになってきているところでございます。
 厚生労働省といたしましては、このような先進的な取組、これを支援をするために、釧路市の方にも入っていただいて、行政やNPO関係者が集まっていただいて研究会をつくりまして、そこでいろいろと検討をしていただいて、今年七月に報告書とそれから取組の事例というのをまとめたところでございます。それを、全国の福祉事務所の方に対してこれらを周知いたしまして、この新しい公共による自立支援、就労支援、この取組を普及させていきたいと、その取組をいたしているところでございます。
○山本博司君 もう是非とも推進をお願いしたいわけでございます。
 ある調査では、生活保護世帯の二五%は自ら育った家庭も生活保護というふうに言われております。またさらに、生活保護世帯の世帯主の学歴は中学校卒業か高校中退が七三%という実態も聞いております。この貧困の連鎖、貧困連鎖を断ち切るというのをこれどうしたらいいかと。これは子供の教育支援が大変重要でございます。この被保護世帯の子供が自立、就労するために高校への就学が有効な手段となっておりまして、貧困の再生産を防止することが期待されております。
 私は、十月十二日に横浜市の保土ケ谷区のNPO法人のはばたき教室、これを視察したわけでございます。大学生がボランティアで、一対一でこの生活保護世帯の方の中学校三年生、中学校二年生等を教えていらっしゃる部分の取組でございまして、この二年間で、平成二十年は十名、二十一年は十四名、全員進学をしているそうでございます。ちょうどその中学校を卒業して高校の一年生の子が来ておりまして、こういった場がないと私は進学しなかったと、このようにも話がございました。
 また、釧路でも冬月荘というところで私はその現場のお話聞きましたけれども、子供たちは、触れ合う人が多くなったとか親に楽しさを話すようになった、コミュニケーションが取れるようになったというふうなことも参加者は言っておりましたし、またそのチューター、教える側の方々、これは生活保護者の方が教えていらっしゃいまして、その方も、うまく教えるにはどうしたらいいかということを絶えず頭の中で考えていると、こういったことが言われたわけでございますけれども、こうしたことを積極的に取り組む必要があると考えますけれども、この教育支援に対する取組をお聞きしたいと思います。
○大臣政務官(岡本充功君) 今委員御指摘の貧困の連鎖を断ち切るという取組、一つは教育面にあるという御指摘でありましたが、生活保護受給世帯の子供は特に教育等の面で不利な状況に置かれており、生活保護受給世帯の自立支援のため貧困の連鎖を防止することというのは大変重要だというふうに認識をしています。
 生活保護受給世帯の子供の学習支援につきましては、平成十七年度から導入しました自立支援プログラム、先ほどの大臣から御答弁いただいたものでありますが、この中での取組に加えまして、二十一年度からは子供の健全育成支援事業を導入し、子供の学習支援等の取組を推進しているところでございまして、現在、自立支援プログラムにおいて児童生徒に対する進学相談をしている自治体、二十一年度で百五十四自治体となっておりますし、また子供の健全育成支援事業、こちらにおきましては、二十二年度は、先ほどの釧路、横浜に併せて埼玉県などでも実施をされ、既に三十三自治体になっているというふうに承知をしております。さらに、こういった取組、新しい公共における生活保護受給世帯の子供に学習支援をしていくという取組が行われていく、広く普及をしていくように、全国会議等を通じて各自治体に働きかけを進めております。
 このほか、平成二十一年度からは教育扶助等に新たに学習支援費を追加して、二十二年度からは子ども手当に併せて児童養育加算を拡充する等の取組を行っておりまして、学習支援費につきましては、二十一年七月からでありますけれども、家庭内学習やクラブ活動のための費用として、小学生が二千五百六十円、中学生が四千三百三十円、高校生が五千百円、さらに児童養育加算につきましては、中学校修了前の児童につき一万三千円、これは平成二十二年度からでありますが、こういったものを組み合わせながら、貧困の連鎖の解消に向け、実効性のある形で取組を進めてまいりたいと考えております。
○山本博司君 今の釧路方式、埼玉方式、この自立支援プログラム、非常に大事な事業でございます。この事業というのはセーフティネット支援対策等事業補助金ということを活用されておりまして、大変、十分の十と、地方自治体に関しましても喜ばれている事業でございます。
 ところが、これは平成二十二年度は二百四十億円の予算が付いておりますけれども、平成二十三年の概算では二百億円と、四十億円、二割カットされているという、これが今の現状でございます。これはとんでもないことでございまして、これ、大臣、なぜですか。
○政府参考人(清水美智夫君) セーフティネット補助金の中には種々のメニューがございまして、生活保護の中の医療扶助に係ります電子レセ推進のための経費が今まで掛かってきたわけでございますが、今年度でおおむね概了するわけでございますので、その分の減額といった理由が減額の最大の理由でございます。
○山本博司君 このセーフティネット支援対策事業という内容の、先ほどの教育支援であるとかまた就労支援を含めた自立支援プログラム、大変大事でございますので、そういう部分の予算はしっかり確保しながら進めていただきたいと思う次第でございます。
 そして、時間がなくなりましたが、最後に大臣にお聞きをしたいと思います。
 生活保護、国民の最低限の生活を保障する制度ということで最後のセーフティーネットでございます。本当に必要な人のために安全網をしっかり整備する必要があると考えるわけでございますけれども、その前提はやはり雇用の拡大ということが大事でございます。政府として雇用ということに関しまして積極的に取り組む、この必要があると思いますけれども、大臣の最後に決意をお聞きをしたいと思います。大臣、最後に。
○大臣政務官(岡本充功君) 一つ訂正をさせてください。
 先ほど学習支援費について、高校生について五千百円と答えてしまったようですが、五千十円の誤りでしたので、訂正させていただきます。
○国務大臣(細川律夫君) 生活困窮者に対する支援と生活保護の制度については、これは憲法にも認められております最低限度の生活をしっかり国は保障しなければいけないということになっておりますので、これは国を挙げてしっかりやっていきたいというふうに思っております。
 そしてまた、そういう生活が困窮するというのは、病気の場合などもあるかと思いますけれども、しかし仕事がないということで、収入がないことによって生活が困窮する場合もこれもまたあるわけでございまして、したがって、雇用というのはこれもまた国がしっかりやっていかなければいけないというふうに思っております。
 とりわけ、最近の若い人たちの失業が多いということを憂いております。また、せっかく大学あるいは高等学校で勉強しても、社会に出ようとして就職しようとしても就職ができない、特に来年は内定率が良くないというようなことにもなっておりますので、この来年春卒業する学生についての就職については政府としてしっかりやっていきたいというふうに思っております。
○山本博司君 以上で終わります。