参議院 厚生労働委員会、財政金融委員会連合審査会

○山本博司君 公明党の山本博司でございます。
 本日は、国民年金法の一部改正案に関連をして、関係大臣にお聞きを申し上げたいと思います。
 この改正案は、平成十六年の年金制度改革において残された課題として、基礎年金の国庫負担を二分の一へと引き上げ、世代を超えた相互扶助という年金の基本的な仕組みを維持するとともに、年金財政の長期的な安定を図るために重要な改正であると思います。
 また、財源につきましては、今回の法案においては、平成二十一年度及び平成二十二年度の二年度について、財政投融資特別会計財政融資資金勘定から一般会計への繰入れに関する特例措置を活用することによって引上げを行うこととしており、現在の厳しい財政状況の中においては、平成十六年改正当初に考えられていた平成二十一年度からの実現が図られることは大いに評価をしたいと思います。
 この財源の確保については、三月二十七日に成立しております財政運営に必要な財源の確保を図るための公債の発行及び財政投融資特別会計からの繰入れの特例に関する法律、いわゆる財源確保法において規定をされております。この財源確保法での基礎年金の国庫負担の追加について条文上どのように規定をされているのか、まずお示しをいただきたいと思います。
○政府参考人(真砂靖君) 今先生御指摘の法律の第一条でございますが、ちょっと読ませていただきますと、税制の抜本的な改革が実施されるまでの経済状況の好転を図る期間における臨時の措置として、平成二十一年度及び平成二十二年度において、基礎年金の国庫負担の追加に伴いこれらの年度において見込まれる歳出の増加に充てるため必要な財源を確保するため、財政投融資特別会計財政融資資金勘定からの一般会計への繰入れに関する特例措置を定めるものとするということで、基礎年金に関してはこのような規定になっているところでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この財源確保法は、平成二十一年度及び平成二十二年度における、一つは経済対策の財源に充てること、二つ目に減税財源に充てること、そして三つ目にこの基礎年金の三分の一から二分の一に引き上げるための財源に充てること、この三つの目的が挙げられております。
 そこで、確認させていただきたいのですけれども、こうした目的のためになぜ財政投融資特別会計の積立金から財源を確保しようと考えたのか、財政投融資特別会計以外の財源は考えられなかったのか、その理由に関しましてお示しをいただきたいと思います。
○政府参考人(真砂靖君) 先生御指摘の、財源といたしまして今回財投特会の金利変動準備金を活用したわけでございますが、その理由といたしましては、一つは、世界的に金融市場が混乱する中で多額の赤字国債を発行することは市場に更なる増発圧力が加わることになり、結果として国債市場に対する影響も懸念されるということで、この国債発行額をできる限り抑制する必要があるというふうに考えたのが一つでございます。
 また、財投特会の方の事情でございますが、金利変動準備金は将来の金利変動に伴う損失に備えて積み立てられているものでございますが、財投特会におきましては、当面は過去の比較的高い金利の貸付金残高から利益が生じるというような事情もございまして、これらの事情を総合的に勘案し、やむを得ないものとして判断したものでございます。
○山本博司君 平成十六年の改正では、基礎年金の国庫負担分は、附則において、税制抜本改革を行って安定した財源を確保する、こういうふうになっておりました。ところが今回、臨時的、特例的な財源確保法を作って財源の確保をすることになったわけでございます。新たな法的根拠を作ってでも、平成十六年の年金改革のときの課題である国庫負担の引上げを当初計画どおりの平成二十一年から何としてもやるんだという政府の強い意思の表れだと思いますけれども、このような特例的な措置を講じたことに対する与謝野財務大臣の見解、認識をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(与謝野馨君) 法律に書いてあることは、法律に書いてあるとおり実行しなければならないと思ったからでございます。
○山本博司君 ありがとうございます。明確なお答えでございます。
 さらに、今回の国民年金改正案では、その後、税制改正法の規定に従って行われる税制の抜本的な改革により所要の安定財源を確保した上で、基礎年金国庫負担割合二分の一を恒久化する。なお、それまでの間は上記と同様に臨時の法制上・財政上の措置を講ずるものとする。このようにあるわけでございます。つまり、平成二十三年度以降は消費税を含む税制の抜本的な改革で安定的な財源を確保していく、しかし、抜本改革が遅れた場合には臨時の措置で財源を確保する、こういうことであるわけでございます。
 年金制度の長期的な安定を図るためにはこの二分の一に関しましてしっかりと恒久化をしていかなくてはならないと思いますけれども、政府としてこの平成二十三年度以降の財源確保につきましてどのように考えているのか、舛添大臣にお聞きをしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 基本的には消費税を含む税制の抜本的改革で行うと。ただ、そういう状況になっているかどうかは経済的、社会的な状況を見ないといけません。極めて経済の回復が遅れているというようなときに、なかなかそこまで国民の御負担をお願いすることは難しかろうと。そういうときには、今回同様、臨時的な措置を行うと。しかしながら、二分の一の国庫負担を維持する、恒久的に維持すると、この点は変わらないということでございます。
○山本博司君 財源の安定的な確保、大変大事でございますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 この財源を確保するということでも、今後の財政運営、税制改革を進めていく上でも、経済の影響、大変大きいと思います。政府・与党は、これまでこの百年に一度とも言われる経済危機に対応するために様々な経済対策を講じてきたわけでございます。また、これからもしっかりとした景気の回復を目指し、努力をしていきたいと思います。
 三月の二十七日に成立をしました所得税法等の一部を改正する法律の附則の規定では、平成二十年度を含む三年以内の景気回復に向けた集中的な取組により経済状況を好転させることを前提として、遅滞なく、かつ、段階的に消費税を含む税制の抜本的な改革を行うために、平成二十三年度までに必要な法制上の措置を講ずると、こうあるわけでございます。税制の抜本改革を行うには経済状況の好転が前提となるわけでございます。
 そこで、まずその前提として我が国の経済の現状についてどのようにお考えなのか、大臣の認識をお伺いしたいと思います。
○国務大臣(与謝野馨君) 我が国の経済の現状については、一つ、経済活動が極めて低い水準にある中で雇用情勢が厳しい状況となっている一方、第二には、輸出や生産が下げ止まりつつあることなどから景気は厳しい状況にあるものの、このところ悪化のテンポが緩やかになっているものと認識をしており、恐らく最悪期は脱したと考えております。
 先行きについては、当面雇用情勢が悪化する中で厳しい状況が続くと見られるものの、一つは対外経済環境における改善の動きや、二つ目は在庫調整圧力の低下、三つ目は経済対策の効果が景気を下支えすることが期待されます。
 一方、雇用情勢の急速な悪化が下押し要因として懸念をされます。また、世界的な金融危機の影響や世界景気の下振れ懸念などのリスクにも留意をする必要があります。
○山本博司君 ありがとうございます。
 さらに、平成二十一年度の第一次補正予算、成立したばかりでございますけれども、関連法案も早期に成立させ、できるだけ早くその効果が現れることを期待をしているわけでございます。
 与謝野大臣は、先日の会見では、日本経済は一—三月期が底打ちの時期であったと、このように発言をされておりますけれども、この補正予算の重要性とこれまでに実施をしてきました経済対策の効果がいつごろ、どのように出てくるとお考えなのか、大臣の見解をお聞かせいただきたいと思います。
○国務大臣(与謝野馨君) 先般取りまとめました経済危機対策は、第一には、景気の底割れを防ぐため、雇用対策や資金繰り対策が組まれております。第二に、未来の成長力強化につなげるため、低炭素革命や健康長寿社会構築に向けた施策が組まれております。第三には、国民の安心と活力を実現するため、地域活性化や社会保障、介護、子育て支援策などを盛り込んでいるところでございます。現下の経済情勢の下、こうした時宜を得た様々な施策を講じることにより、景気の底割れリスクを回避するとともに、内需と輸出によってバランスよく成長する経済を実現していくために、本対策の速やかな実施が極めて重要でございます。
 また、経済危機対策の効果については、二十一年度の実質GDP比成長率を一・九%程度押し上げる効果があると見込んでおり、おおむね二十一年七—九月期から着実にその効果が表れると考えております。なお、二十二年度以降の発現分を含めますと、全体としてこの対策は二・九%程度の押し上げ効果を見込んでおります。
○山本博司君 ありがとうございます。
 この補正予算には、経済成長に資するものと医療とか少子化対策など安心に結び付くのもあります。成長と安心の両輪がうまく機能するよう、対応をお願いを申し上げたいと思います。
 次に、中期プログラムにつきましてお聞きをしたいと思います。
 昨年十二月二十四日に閣議決定されました中期プログラムは、今後の年金、医療、介護、少子化対策などの社会保障制度を持続可能なものとするために非常に大切な方針であると思っております。必要な給付を行うためには財源確保が不可欠でございます。この中期プログラムでは、安心強化の三原則として、原則一、中福祉中負担の社会を目指す、原則二、安心強化と財源確保の同時進行を行う、原則三、安心と責任のバランスの取れた安定財源の確保を図ると記されているわけでございますけれども、この中福祉中負担につきまして、どのようなイメージで、今と比べてどのように変化するとお考えなのか、与謝野大臣の御認識をお伺いをしたいと思います。
○国務大臣(与謝野馨君) 中福祉という概念は、別にそれ自体で定義があるわけではございません。日本の社会保障は、一つは、高福祉と言われる北欧諸国に比べ給付水準は高くない、第二、他方、全国民をカバーする医療制度を持たない米国などとは異なり、国民皆年金、皆保険、介護保険などを実現をしている。ちょうど北欧と米国の中ぐらいにいるというのが中福祉という概念でございます。
 一方、租税と社会保障負担を合わせた国民負担率について見ると、七割程度のスウェーデン、六割程度のフランス、五割程度のドイツ、イギリスに対し、我が国の国民負担率は約四割でありまして、アメリカほど低くないけれども、実際は国債によって足らざる負担を賄い、子や孫の世代にツケは送っているわけでございます。これを加えると国民負担率は五割となります。
 こうした状況を踏まえまして、日本は中福祉中負担であると考えておりますけれども、社会保障の現状を見ますと、医師不足、介護人材不足などほころびも目立ち始めており、必ずしも中福祉の社会保障レベルとは言い難い状況も散見されると考えております。
○山本博司君 ありがとうございます。
 増税による財源の確保というのは国民に負担増を強いることになるわけでございますので、国民の理解と協力を得るためにも明確なビジョン、考え方を示して議論を進めるべきと考えるわけでございます。
 この中期プログラムにつきましては、社会保障の安定財源確保として消費税を主要な財源として確保することが示されております。何度も先ほど議論がございました。税制改正の附則におきましても、消費税の改正の方向について、上げる場合には社会保障制度と少子化対策の目的税化に使うこと、そして、それ以外には一切使わせないということが書かれているわけでございます。このことについて先日の厚生労働委員会におきましても舛添厚労大臣にもお聞きをしたわけでございますけれども、国民の理解を得るためには進めるべき大変重要な点であると思います。
 そこで、この消費税の社会保障目的税化についての与謝野大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
○国務大臣(与謝野馨君) まず、社会保障制度に必要な財源、財源というよりは、だれがそれを支えていくのかという問題は、広くすべての国民がこれを支えるということが社会保障制度にとって大変望ましいことであると思っております。しかし、消費税を国民にお願いするときには、新たな消費税の負担はすべて国民にお戻しをすると、還元をするということを明確に申し上げなければならないと思っております。したがいまして、社会保障目的税、すなわち年金、医療、介護プラス少子化対策に全額を使いますと、なおかつ、これについてはきちんと帳面を別にして非常に透明性の高い区分経理をすると、そういうことによって国民に対しての説明責任を果たすというような仕組みが必要であると思っております。
 もう一つの前提は、先ほど先生も言われましたが、経済が回復するということが一つの大事な前提でございまして、その後に国会でこの問題を真剣に御議論をいただきたいと思っております。
○山本博司君 次に、年金の議論でもございました持続可能な制度を構築する前提として少子化対策が重要であるわけでございます。二〇〇八年の人口動態統計によりますと、合計特殊出生率は前年を〇・〇三%上回り一・三七%になったわけでございます。しかしながら、OECDの加盟国は平均してGDPの二%を子育て支援や家族関連に支出しているのに対しまして、我が国は〇・八%にとどまっております。
 最後に、舛添大臣に少子化対策の重要性につきまして決意をお願いしたいと思います。
○国務大臣(舛添要一君) 年金の財政について言うと、経済成長率と出生率、これが利いてきます。そういう意味で、少子化対策、きちんとやらないといけません。そして、そのために、先ほども議論はありましたけれども、やはり高齢者向けと子供向けだとどうしても子供向けは少なくなっている。そういう意味で、片一方では働き方の改革、ワーク・アンド・ライフ・バランスをやりながらもう一つは少子化対策をやるということで、様々なサービスを提供しております。例えば、妊婦健診の公費負担を増やすとか、安心こども基金、一千億円だったのを二千五百億円に増やすなどを行っておりますので、これは未来への投資という意味で年金財政にとっても非常に重要なポイントでありますので、今後とも少子化対策をしっかりやっていきたいと思っております。
○山本博司君 以上で質問を終わります。