「奇跡のワイン」として有名な栃木県足利市にある障害者支援施設「こころみ学園」「ココ・ファーム・ワイナリー」を視察しました。(8日)

「こころみ学園」の越智真智子施設長(ココファームワイナリー農場長)・社会福祉法人「こころみる会」池上知恵子理事長(ココ・ファーム・ワイナリー専務)の案内で障害者施設やワイン製造工程を案内いただきました。

平均傾斜度が38度という山の急斜面のブドウ畑にまず驚きました。5.5㌶の広さです。「こころみ学園」には130名の利用者がいます。そのうち92歳を筆頭にここに暮らす人たちの内半分は高齢の知的障がい者です。急斜面には車両や大型機械が入らない為、全て人間の手です。開墾以来一切除草剤を使わず、枝拾いや自然の堆肥を運び上げる作業、一房一房の摘房作業、そしてかごをかかえての収穫など等。現在葡萄以外にシイタケ栽培もおこなっています。

1950年代(昭和33年)、知的なハンディを背負った足利市特殊学級の中学生たちとその担任教師(川田昇)によって勾配38度という山の急斜面に葡萄畑が開墾されました。養護学校教員だった川田さんが私財を投じて山を買いました。学校を卒業しても働く場がない子ども達にならば「場を作ろう」というのが始まりでした。1969年(昭和44年)この葡萄畑の麓で、指定障害者支援施設こころみ学園(社会福祉法人こころみる会運営)がスタート。そしてココ・ファーム・ワイナリー誕生は1980年(昭和55年)。

山の麓に醸造所ができると、世界各地から専門家を招いて本格的なワインづくりに取り組みました。「かわいそうな子が作ったからと同情で買われるのは一回かぎり。味で買ってもらえるワインを作らねば」という考えに賛同した醸造家ブルースさん達は現在まで20年以上も学園のワインづくりを指導しています。

このワイナリーで醸造されるワインは、日本の気候と風土に合い、ワインのために育成された国産ブドウ100%使用しており、 2000年(平成12年)九州沖縄サミットの晩餐会では、ソムリエ田崎真也により世界の首脳たちに乾杯酒として「ココ・ファーム・ワイナリー」のスパークリング・ワインが選ばれました。また、2008年(平成20年)の洞爺湖サミットの晩餐会では「風のルージュ」が採用されました。あくまでも「本物」を追求し続けた結果が美しいワインへとつながっていきました。

『「知的障害を助ける」ではなく「一緒に生きる」という故川田園長の方針は今も変わりません。最高のぶどうを作り、本物のワインを造る。そこでは園生も職員も同列。「与える者」と「与えられる者」でなく全員が役割を果たす。それぞれが自分にできることに取組み、その道を突き詰める。草刈のプロ、瓶摘めのプロ、園生を支える家事のプロ。』「一人ひとりがプロになって本当の自立がある」との川田さんの言葉。

施設内には障がいのある女性が洗濯や食事・清掃など家事を嬉々として取り組んでいたのが印象的でした。小高い丘の上にあるカフェで目の前に広がるぶどう畑を見ながらの食事(ランチ)をいただきました。本当にお腹も心も満腹になる素晴らしい視察となりました。ありがとうございました。